赤ずきん姫、愛する騎士に守られてお婆様のお見舞いに行く。今夜もまた一人犠牲者に、人狼は誰?

NoBorder

文字の大きさ
6 / 10

第6話 真夜中の訪問者、あなたが犯人だったのですか?

しおりを挟む
状況を考えればガストンを殺した犯人の第一候補は少年です。でも少年は右腕に大怪我をしており、何より私が少年を信じたい気持ちだったのです。私は宿の主人にそれなりの金銭を握らせて後処理を頼み、少年も連れて先に進む事にしました。


あぜ道を走る馬車。御者台では宿場町で雇った御者が手綱を握り、車内は鎮まり返っていました。

「残りは三人、誰が狼か多数決でも取りますか?」

ランスロットは少年を狼が化けた姿だと確信しているようです。

「やめてくださいランスロット様、犯人は外から侵入者かも知れないではないですか」

私は期待を込めて言いました。

「使用人とは言えガストンは武道のたしなみもある。不意打ちでも無ければ簡単にやられたりしませんよ」

皆、そのまま押し黙ってしまい、会話の無いままその日が過ぎていきました。

 * * * * *

宿場町に着き宿を取った私達は、黙々と食事を取ると、早々に別々の部屋に籠りました。

ランスロットに傍にいて欲しい思いもありましたが、少年の件で仲違いした気まずさがそれを許しませんでした。それでもランスロットはこの部屋の外で私を守ってくれている、そんな確信がありました。

「貴様、どうしてここに!」

真夜中、まだ眠れずにいた私はランスロットの大声を聞き、部屋を飛び出しました。

そこには剣を構えたランスロットと、銃を構えたあの時の猟師が対峙していたのです。

「犯人はあなただったのね…人殺し!」

私は猟師に向かって叫びました。

「違う…話を聞いてくれ」

猟師は銃を降ろしてポケットに手を入れました。

「問答無用!」

ランスロットが剣で切りかかります。猟師は銃身で剣を受けると後方に飛びずさり、

「赤ずきん、信じるな、全てを疑え」

そう言い残して走り去りました。

「待て、逃がしはしないぞ!」

追いかけようとするランスロットを私は止めました。

「追わなくていいわ!それよりも少年を…」

言いかけた時、少年が部屋から顔を出ました。

「何かあったの?」

「ああ良かった。無事だったのね」

私は安堵のため息をつきました。

それにしても、あの猟師は何を言おうとしたのでしょうか…私は混乱していました。

 * * * * *

予定より到着は大きく遅れていました。早くお婆様に薬を届けなくては、それが今の最優先事項です。私は御者台のランスロットに頼み、ギリギリまで馬車を急がせました。

夕暮れの頃、馬車は湖畔の村に通じる森に差し掛かりました。

「何とか今日中に着けそうね」

私がそう言うと、ランスロットが意義を唱えました。

「姫様、夜の森を抜けるのは危険すぎます。見通しのきく場所に馬車を停め、そこで夜を過ごすのが懸命でしょう」

「僕もそう思います。森の中は逃げ場がない」

少年にまでこう言われては従うしかありません。草原に馬車を停めると、一晩そこで野営する事にしました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が

和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」 エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。 けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。 「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」 「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」 ──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...