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第6話 真夜中の訪問者、あなたが犯人だったのですか?
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状況を考えればガストンを殺した犯人の第一候補は少年です。でも少年は右腕に大怪我をしており、何より私が少年を信じたい気持ちだったのです。私は宿の主人にそれなりの金銭を握らせて後処理を頼み、少年も連れて先に進む事にしました。
あぜ道を走る馬車。御者台では宿場町で雇った御者が手綱を握り、車内は鎮まり返っていました。
「残りは三人、誰が狼か多数決でも取りますか?」
ランスロットは少年を狼が化けた姿だと確信しているようです。
「やめてくださいランスロット様、犯人は外から侵入者かも知れないではないですか」
私は期待を込めて言いました。
「使用人とは言えガストンは武道のたしなみもある。不意打ちでも無ければ簡単にやられたりしませんよ」
皆、そのまま押し黙ってしまい、会話の無いままその日が過ぎていきました。
* * * * *
宿場町に着き宿を取った私達は、黙々と食事を取ると、早々に別々の部屋に籠りました。
ランスロットに傍にいて欲しい思いもありましたが、少年の件で仲違いした気まずさがそれを許しませんでした。それでもランスロットはこの部屋の外で私を守ってくれている、そんな確信がありました。
「貴様、どうしてここに!」
真夜中、まだ眠れずにいた私はランスロットの大声を聞き、部屋を飛び出しました。
そこには剣を構えたランスロットと、銃を構えたあの時の猟師が対峙していたのです。
「犯人はあなただったのね…人殺し!」
私は猟師に向かって叫びました。
「違う…話を聞いてくれ」
猟師は銃を降ろしてポケットに手を入れました。
「問答無用!」
ランスロットが剣で切りかかります。猟師は銃身で剣を受けると後方に飛びずさり、
「赤ずきん、信じるな、全てを疑え」
そう言い残して走り去りました。
「待て、逃がしはしないぞ!」
追いかけようとするランスロットを私は止めました。
「追わなくていいわ!それよりも少年を…」
言いかけた時、少年が部屋から顔を出ました。
「何かあったの?」
「ああ良かった。無事だったのね」
私は安堵のため息をつきました。
それにしても、あの猟師は何を言おうとしたのでしょうか…私は混乱していました。
* * * * *
予定より到着は大きく遅れていました。早くお婆様に薬を届けなくては、それが今の最優先事項です。私は御者台のランスロットに頼み、ギリギリまで馬車を急がせました。
夕暮れの頃、馬車は湖畔の村に通じる森に差し掛かりました。
「何とか今日中に着けそうね」
私がそう言うと、ランスロットが意義を唱えました。
「姫様、夜の森を抜けるのは危険すぎます。見通しのきく場所に馬車を停め、そこで夜を過ごすのが懸命でしょう」
「僕もそう思います。森の中は逃げ場がない」
少年にまでこう言われては従うしかありません。草原に馬車を停めると、一晩そこで野営する事にしました。
あぜ道を走る馬車。御者台では宿場町で雇った御者が手綱を握り、車内は鎮まり返っていました。
「残りは三人、誰が狼か多数決でも取りますか?」
ランスロットは少年を狼が化けた姿だと確信しているようです。
「やめてくださいランスロット様、犯人は外から侵入者かも知れないではないですか」
私は期待を込めて言いました。
「使用人とは言えガストンは武道のたしなみもある。不意打ちでも無ければ簡単にやられたりしませんよ」
皆、そのまま押し黙ってしまい、会話の無いままその日が過ぎていきました。
* * * * *
宿場町に着き宿を取った私達は、黙々と食事を取ると、早々に別々の部屋に籠りました。
ランスロットに傍にいて欲しい思いもありましたが、少年の件で仲違いした気まずさがそれを許しませんでした。それでもランスロットはこの部屋の外で私を守ってくれている、そんな確信がありました。
「貴様、どうしてここに!」
真夜中、まだ眠れずにいた私はランスロットの大声を聞き、部屋を飛び出しました。
そこには剣を構えたランスロットと、銃を構えたあの時の猟師が対峙していたのです。
「犯人はあなただったのね…人殺し!」
私は猟師に向かって叫びました。
「違う…話を聞いてくれ」
猟師は銃を降ろしてポケットに手を入れました。
「問答無用!」
ランスロットが剣で切りかかります。猟師は銃身で剣を受けると後方に飛びずさり、
「赤ずきん、信じるな、全てを疑え」
そう言い残して走り去りました。
「待て、逃がしはしないぞ!」
追いかけようとするランスロットを私は止めました。
「追わなくていいわ!それよりも少年を…」
言いかけた時、少年が部屋から顔を出ました。
「何かあったの?」
「ああ良かった。無事だったのね」
私は安堵のため息をつきました。
それにしても、あの猟師は何を言おうとしたのでしょうか…私は混乱していました。
* * * * *
予定より到着は大きく遅れていました。早くお婆様に薬を届けなくては、それが今の最優先事項です。私は御者台のランスロットに頼み、ギリギリまで馬車を急がせました。
夕暮れの頃、馬車は湖畔の村に通じる森に差し掛かりました。
「何とか今日中に着けそうね」
私がそう言うと、ランスロットが意義を唱えました。
「姫様、夜の森を抜けるのは危険すぎます。見通しのきく場所に馬車を停め、そこで夜を過ごすのが懸命でしょう」
「僕もそう思います。森の中は逃げ場がない」
少年にまでこう言われては従うしかありません。草原に馬車を停めると、一晩そこで野営する事にしました。
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