ヴァルキリーレイズ

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第一笑(オーディン編)

6 : 新たな仲間

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 翌日。
 目を覚ませば俺は、ベッドから転げ落ちたミカンの下敷きとなっていた。
 すぅすぅと寝息を立てて熟睡する伝説の神様。それをどかして立ち上がる。

「何でこいつ服着てないんだ……」

 昨晩はパンツ一枚で眠りについたようだ。枕元には青い服とスカートが畳んで置いてあった。
 部屋のドアがノックされる。「どうぞ」と言うと現れたのはシャミー。

「おはようシャミー」
「おはようなのにゃ。朝ごはんができてるから呼びに来たのにゃっ」
「ありがとう。すぐに行くよ」

 シャミーが部屋を後にすると、俺は早速、爆睡している幼女の肩を揺する。

「起きろミカン、朝だぞ」
「む。だまれ」

 薄らと開けた眠たげな目でありながらもハッキリとしたその口調に、苛立ちを覚える。

「早く起きないとお前に何するか分からないぞ?」
「してみろ。ぶっ殺してやるからな」

 言いつつも、目を擦りながらゆっくりと身を起こすミカン。立ち上がってバンザイする。

「何してるんだ?」
「着せれ」

 目を閉じたまま命令してくる幼女に従い、枕元に置いてある服を取って頭から被せる。

「ん……ふぅ」

 スポっと頭を出した金髪幼女は片足をひょいひょいと上げて今度はスカートを履かせろと。

「ご苦労」
「この借りは返せよ」
「借りた覚えはない。奢っておけ」

 こぉいつぅ……朝からイライラさせやがって。

「ま、まぁいいや。ほら、朝食を準備してくれてるみたいだから行くぞ」
「……うぃ」


 食事中、ネーシャが嬉しそうに話を切り出す。

「そういえば、今日は新しい仲間が加わるかもしれないの!」
「新しい仲間……? どんな人なんだ?」
「聞いて驚きなさい? プリーストよ!」

 プリースト……支援魔法を得意とする、アレか?
 パーティに支援魔法を使える者がいるとクエストも捗るだろうし、ネーシャが喜ぶのも納得が行く。

「プリーストね……。仲間になるかもしれないって言ってたけど、まだ決まった訳じゃないのか?」
「まずは面接ね。こちら側とあちら側、お互いに納得出来る条件の上で仲間になってもらうわ」

 俺の時とはエラく待遇が違うんだな。いやしかし現状に不満など多分ないのだが。

「そうか。どんな風の吹き回しで俺たちの仲間になりたいと思ったのかは知らないが、任せたぞネーシャ」
「何よその言い方。それだとまるで私たちがポンコツみたいじゃない。それと、面接にはコウタも参加してもらうからね」
「そういうつもりで言ったわけじゃないが……何だって? 俺も?」
「当たり前よ、サブリーダーなんだから」

 いつから俺がこのパーティのサブリーダーに? 不思議と全然誇らしく感じない。確かに人間枠だと俺とネーシャしかいないけど。


 昼過ぎ頃、食後にシャミーと遊んでいると玄関で鐘の音が鳴り響いた。

「来たわよ! 出迎えてちょうだい!」



 どんな人なのだろうか。プリーストであると聞いたが、それだけだと女の子というイメージが俺の中での自然だ。しかし中年のオジサンということも有り得るだろう。この扉の向こうで誰が立っているというのか。
 緊張した手で扉を開ける。

「いらっしゃい」
「こ、こんにちは。サラと申します……」

 現れたのはおっぱい……いやお姉さん。硬派な俺でさえも視線が胸に落ちてしまう巨乳の持ち主だが、性格は極めて控えめだと見た。前髪が長く、白いローブのフードを被って顔を隠している。
 持っている杖は身の丈程あり、先端では赤い玉が浮遊していた。

「俺はコウタ。よろしく。どうぞ入って」
「えっと……し、失礼します……」

 とある部屋の扉を開くと、面接長官がお出ましだ。

「よく来てくれたわね、サラ」

 既に見知った仲なのだろうか。ネーシャは彼女の名前を知っているようだ。ちゃんと打ち合わせしてたみたいでよかった。
 
「こ、こんにちは……ネーシャさん」

 それにしてもこの子、大丈夫だろうか。すごくオドオドしてるけど。二人は事前に会って話をしているんだよな?

「そこに座ってちょうだい」
「失礼します……」

 ローブをめくった彼女の顔は驚く程に端正であった。日光を寄せ付けないかのような白い肌は童貞の俺を恍惚とさせた。
 向かい合って座る二人を、ただじっと見つめる俺にネーシャが指を立てて何かを訴えている。

「ん?」
「……っ」

 くいっくいっと、人差し指を返している。

「何だよネーシャ。言いたいことがあるなら……」
「お・茶!」
「お、おう」

 何だよネーシャのやつ、カッコつけちゃって。
 テーブルに二つコップを置いて茶を注ぐ。

「ありがとうございます……コウタさん」
「どういたしまして」

 直後、「あちゅっ!」と身を強ばらせたサラに触れることはなく、俺はネーシャの隣の椅子に座った。
 そして面接は始まる。

「改めて紹介するわね。私はネーシャ。こちらはコウタ。二人ともシーカーよ」
「わ、私はプリーストのサラです」

 か細い声で自己紹介をするサラ。
 やはり随分と内気な人みたいだが、実力は如何程なものか。
 年齢的には俺やネーシャと同じか年上っぽいから、冒険者としてネーシャと同じくらいの経験はあるのかもしれない。

「まずは冒険者歴を聞いてもいいかしら?」
「十二年です」
「へぇ……! 長いことやってるのね!」

 十二年って……ベテランじゃないか!

「ちなみにネーシャは冒険者を始めてどれくらい経つんだ?」
「私は七年ね。本当はもっと前からモンスターと戦っていたのだけれど、十歳にならないと冒険者として認められないのよ」

 なるほど、ということはネーシャは十七歳で、サラは二十二歳か。
 サラは俺たちにとって冒険者としての先輩であり、人生の先輩でもあるということだ。

「じゃあサラは俺たちの先輩だな」
「そんな……わ、私は無駄に歳を重ねただけですので……」
「ウーン……」

 そこまで謙遜しなくても……。十二年も冒険者をやってるんだからそこら辺の若い冒険者よりは実力を備えていそうだが。

「次の質問よ。あなたが習得しているスキルを教えてちょうだい」
「ええと……じゃあ、これを……」

 サラがテーブルに置いたのは冒険免許証。ネーシャは手に取るとカードの一部を指で弾きだした。

「……?」

 覗くと、何かをスクロールしているのが分かる。つらつらと並んでいる文字はスキル名だろうか。それだとかなりの数が扱えるようだが。

「す、すごい……あなた、師範級のプリーストじゃない!」

 師範級……? 何それ強そう。

「支援魔法は網羅してあるし、攻撃魔法も習得してるのね……これなんて上級攻撃魔法じゃない! プリーストなのに大したものだわ!」

 先輩に向かって随分と上から目線だなコイツは。それに気になるのが、さっきから口調がわざとらしい。あたかもサラのことを知っているかのようだ。
 まぁ、仲間になるのならネーシャがリーダーだし、それなりの威厳というものがあるのは分かるが。

「で、でも、私は……」
「決定! あなたを私の仲間にするわ!」
「へぇえ!?」

 驚くサラの手を取って、即決するネーシャの肩に手を置く。

「おいネーシャ。まだスペック的なことしか聞いてないだろ? いいのか? お互い納得できる条件っていうのがあるんだろ?」
「そうね……じゃあサラ! クエストに行く時は呼ぶから、それ以外は基本自由でオッケーよ!」
「は、はぁ……」

 何がお互い納得出来る条件だ。かしこまった言い方しておいて、結局そんな事かよ。

「よろしくね! サラ!」
「待て待て、お前一人がよろしくしてもしょうがないだろう。サラの意見も聞かないと」

 ネーシャは威圧的な目で、サラを見つめる。

「ええと……」
「どうなのっ!」
「あぅ……その」
「どうっなのよ!」
「はぅぅ……」
「ど――」

 チョップ。

「ふぎゃっ! ……ちょっと! 師匠の頭をぶつなんてどういうつもり!?」
「サラが怯えてるだろ? 急かすなよ」
「うー。……で?」

 鋭い眼差しが、再びサラを捉える。

「はぅ! な、なりますなります! 私をあなた達の仲間に入れてくださいぃ!」
「んふっ。よろしくね、サラ」

 これで良かったのだろうか。
 サラとカウンセリングを行うようなことがなければいいが。
 こうして、俺たちのパーティに、新しい仲間が加わった。
 サラは熟練のプリーストであり、支援スキルは網羅、専門外である攻撃魔法でさえも上級のものを習得している。
 廃れたシーカー職しかいないこのパーティには勿体ない、というよりも、ネーシャはどうやってサラのような優秀なプリーストを捕まえてきたのかという疑問が勝っていた。
 でも、いいや。魔王であるオーディンを打倒するための道を、また進めた気がする。
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