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ここはゲームの世界らしい。
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前世。
誰しも一度は考えたことがあるだろうそれを身を持って経験することになろうとは‥‥。
俺の名前はコルシャ・ネルニスト。
一人称が先ほどと違うのにはそれなりの理由がある。
‥‥‥の前に勘違いしないように言っておくが、俺がブツブツ言ってんのは厨二病でもなんでもなく、心の中を整理するためだ。他に理由なんてない。
先程俺は信じられない出来事に遭遇した。というのが、前世の記憶を思い出したこと。
突拍子もない話だが記憶によれば。俺は、赤星透という名で日本で生活をしていたらしい。
両親は一般人。
当然、一般人から生まれた俺は、何処にでもあるような普通の高校に通うこれといった特徴のない男子高校生だった。別にコミュ障というわけでもなく、そこそこ友達は多かったが、どいつもこいつも変わったやつが多かった。
まぁそんなことはどうだっていいだろう。
問題は、あるゲームについてのことだ。
先ほど俺は友達が多かったと言ったが、その友達の中には女生徒も含まれている。
俺には仲の良かったとある女の子の友達がいた。その子とは、小学校からの長い付き合いがあり、世間一般からすれば幼馴染と評される間柄だった。
そんな彼女、俺から見れば一見変わった趣味を持つ少女だった。
それというのもゲームづくり。それもボーイズラブという特殊な男性同士の恋愛模様を描くゲームを作るのが彼女にとっての趣味だった。
高校生になって間もない思春期真っ只中の人間にとって、そういったものを見聞きすることだけでも敏感なやつは多いだろう。
だがしかし、だからといって俺が彼女の趣味を嫌厭し、彼女の側から離れるということはなかった。
なぜなら俺の周りは変人が多かったからだ。
ゲーム作れるなんて凄い。
たった一言。
その時はそれで終わりだった。
彼女の一風変わった趣味なんてものに触れる機会はなかったし、俺にとっては他の個性に埋もれてしまう程度のものだったからだ。
これが後の彼女の布教行為に火をつけてしまうことになるとは、あの頃の俺は思いもしなかっただろう。
それから日が経って、クラス替えも近づいてきたある日のことだ。
彼女は言った。
「ねぇ、透くん。私の作ったゲームをやってみる気はない?」
「‥‥‥ゲーム?」
なんだ、突然。
そう思ったのだが、そういえば彼女、自分でゲームを作れるんだったかと思い出した。
その事を忘れていた俺は一瞬驚いたものの、彼女の作ったゲームには少し興味があった。
しかし、生憎ゲームが苦手分野の俺は数年間のブランクもあったし、そういったものを好き好んでやる人間でもない。勿体ないが断わろうとした。
「悪いけど、俺、ゲームは」
「ちょっと待って。透くん。一度私のゲームをやってみるってのはどうかな?結論というのは急ぎすぎもいいことにはならないんだよ?約束する。後悔はさせないよー?「やらない。」‥‥‥早いってば。」
早急なのは彼女の方ではないだろうか。
この年齢で一人でゲームを作り上げた彼女にはとても素晴らしい才能があることは認めるが、俺がそれをやるのとは話が別だ。とてもじゃないが俺には不向きだと思う。
「感想が欲しいの!こんなこと頼めるの君ぐらいだけだから!ね?!お試しでいいから!」
だが、彼女は必死だった。
それもゲーム嫌いの俺にここまで必死に頼み込んでくるのは彼女ぐらいなもんだったから、そんな彼女に考えるぐらいはしてもいいかなんて考えが頭を過ったのは仕方がないことだった。
「そんなにいうなら「ほんと?!じゃあ今日中にはお願いね!」‥‥‥‥‥‥。」
考えるぐらいはしてみてもいい、そう言おうと思っていたら、彼女から強引にゲームを押し付けられていた。
……もし、次があれば確実にはっきりとお断りしていたことだろう。
それから、家に帰り彼女から渡されたゲームを見てみると、やはりというか、期待を裏切らないBLゲームだった。
ゲーム自体やるのは久しぶりだし、この年まで恋愛をしたこともない俺からしたら、そのジャンルに偏見はないものの、なかなか腰が上がらないのも仕方がないことであった。
だが、強引でも受け取ったものをやらずに返すという失礼な真似はできないし、アクションゲームよりはまだ俺にできるのではないかという気持ちからようやくUSBを挿すまでに至った。
ピロピロリーン、と、何処か間の抜けた音が流れるとゲームのBGMらしきものがかかり始めた。
「キーボードで操作か。始めてだな、こんなの。」
カチカチと操作しながらゲームをスタートするとそれぞれのキャラのステータス画面が右横に表示され、恋愛ゲージというものが目に入った。それぞれ0%と表記されている。
試しに一番上にいる男のキャラに話しかけてみた。
メーターが1%になった。
「お、なるほど。こうやって好感度を上げていけばいいのか?」
それからは要領をつかんで俺にしては珍しくスムーズに物語が進んでいった。彼女の作ったゲームが初心者にも優しい設計だったこと、ところどころ入るミニゲームで飽きを感じさせなかったこと、単純に物語が面白かったこと、それらの理由から俺はそのゲームにのめり込み1日で一人目の攻略へと漕ぎ着けたのだ。
「え?!もうレオ様攻略しちゃったの?」
彼女は俺の攻略ペースに驚き目を見開いた。ゲーム嫌いだと公言していた俺だ。たった1日でそこまで進むとは思ってもいなかったんだろう。
「あぁ。レオ殿下って始めから側にいたし、結構好感度上げやすかったから。」
「あれー?そうだったかな?にしても早すぎるよ。」
「まぁ、夜通しでやったってのもあるし、ふあぁ~~っ。眠っ。」
お気づきかもしれないが、このときの俺の睡眠時間は0分。
つまりは徹夜ってことだ。
このペースで行けば、‥‥1週間で全キャラ攻略ってとこかと俺にしては舐めた考えを持っていたなと思う。
「そんなんじゃ体壊すよ?」
「へーき。2週間睡眠時間1時間しかとんない生活してたことあるし。」
「…………。」
不意に彼女が笑った。
「‥‥‥ハハッ、でも嬉しい。」
「ん?」
「だってゲーム好きじゃない透くんが、夢中になっちゃうぐらい面白いって思ってくれたってことでしょ?このゲーム。また感想聞かせてよ。ね?」
もともとそういう話で引き受けた……んだから断るつもりもなかった。
それに、ゲームも結構面白かったし。
それから俺はひたすらそのゲームをやり込んだ。
「これで10周目?にしてもシビアだなー。」
毎日毎日ひたすらゲーム画面を開いて好感度を上げるところからスタートするが、このゲーム。意外に選択肢が多く、時にバッドエンドルートに進むことも珍しくなかった。
一応一キャラずつクリアは目指していたつもりだったが、攻略対象のレオ殿下以外に攻略できたのは4周目と9周目にクリアした二人だけだった。その他はレオ殿下ルートに進むか、バッドエンドルートを辿るかの二択しかなく、しかも、そのバッドエンドルートの中で一番多いのが…………。
『もう俺はお前を逃さない』
闇堕ちしたレオ殿下に囚われ監禁されるルートだ。もちろん10週目のエンドはこれにあたる。
「流石にレオ殿下の主張が激しくないか?」
さっそく制作者であるの彼女に報告すると、彼女はおかしいなと首を傾げるのだった。
「ほんとに違うキャラのルートで進んでるの?それ。」
「当たり前だ。じゃなきゃ相談しない。」
俺は真っ当な質問をしたつもりだが、彼女にとっては違うらしい。
「うーん。」
「おい。制作者。悩むほどのことなのか?」
「……だって、そのエンド、レオ殿下の好感度をほとんどマックスに上げた状態で、他キャラのルートに入ろうとしないとならないエンドだもん。」
「なにそれ。初耳だが。」
じゃあなんだ?俺は今までレオ殿下の好感度を無意識に上げ続けてたということか?…………全くレオ殿下に干渉したつもりはなかったが。
「ま、いいや。それで推しキャラはレオ殿下なの?」
「……よくはない。推しキャラはレオ殿下ではないよ。キャラはいいと思うんだけど、主張激しいし、監禁ルートのイメージが強すぎて好きになれない。それと、もともといる婚約者?に冷たくないか、アイツ。」
「あー、ははっ。あの子は悪役令息ってやつだから。何度か攻略邪魔されたりしなかった?」
「まぁ……気にはならなかった。」
レオ殿下の婚約者で、彼のルートではひたすらに主人公の邪魔をする人物として登場するコルシャ・ネルニスト。後に俺がそのキャラに成り代わることになるとは露知らず、俺的にはただの一途な不憫キャラって印象だった。
「それで推しは誰なの?」
改めて聞かれると悩んだが、俺の頭には一人の攻略対象が浮かんでいた。
ルドヴィック・ハイラー。
王国に仕える騎士団団長の息子であり、その体躯は素晴らしいものだ。学園ではもちろん、騎士団に所属する隊員達と比べても、剣の腕で彼に叶うものはごく少数と言われている。おまけに誠実で顔面までも男前と言う、いろいろ完成されすぎているキャラクターだ。
「え、意外。ルドなんだ。」
「あの顔は反則。特に笑った顔とかカッコいい上に可愛さも兼ね備えてる。」
「あはは、ガチ推しじゃん。」
「でも全然攻略できないからの悔しさでってこともある。まだ完璧に推しとまでは。」
「なるほど?」
しかし、俺は即日からルドヴィックに沼っていた。
「聞いてくれ!昨日ようやくルドが攻略できたんだ!なんだあの神ストーリーは!!」
「お、おう。なんか君キャラ変わってるね?でも、おめでとう。どう?推しキャラ、のストーリーをクリアした感想は」
「最ッッッ高だった!!」
俺は冷めぬ興奮を口から吐き出す。
「彼は真面目な男で今まで恋愛なんてしてきたことがなかったんだ。それが主人公と交流していくうちに少しずつ、心を開いてくれて、彼は強く、優しいだけじゃなく、時には怒るし、劣等感やら、嫉妬心やら人間らしい一面もしっかり持ってるんだなってもうそれが良かった!!」
「うんうん。ありがと。そんなに好きになってくれて。私も嬉しいよ。」
「もうほんとに!彼が主人公のことを好きになる瞬間なんて……!昇天しそうになった!それに筋肉が、なんかこう……エッチすぎん?」
「……すごい。これが推しに対する愛ってやつ?」
「そんなんじゃない!ビックラブだ!」
「ビックラブ。」
「筋肉最強!「筋肉最高」ルドヴィック最高!「ルドヴィック最高」帰ったらルドの全シナリオ攻略してやる!!」
「おぉ。」
俺は萌えに萌えていた。
「…………うーん、透くんがオタクなのは知ってたけど、類は友を呼ぶと言うかなんというか、私が言えたことではないけど、透君も大概変人だよね。」
それから俺はまた徹夜コースでゲームをし続け、朝になった。
「ふぁ~~っ、ようやく、バッドエンドも回収。朝の支度しなきゃ……ん?」
────ドンッ
そして、愚かにも階段から足を踏み外した俺が聞いた最後の音はそれだった。
「うん。てことで俺は死んだってことだろうな。夢にしちゃあ出来過ぎだし。」
けど、なんというか。前世の俺の死に方アホ過ぎじゃないか?ゲームのし過ぎから寝不足で階段を踏み外すって……。こんなんなら睡眠時間はちゃんと確保しとけば良かった。
だがしかし現状を理解した今は何の問題もないと言ってもいいだろう。
なぜなら。
───俺は、推しの居る世界に転生したから。
ここは、俺が夢見たゲームの世界なのだ!
誰しも一度は考えたことがあるだろうそれを身を持って経験することになろうとは‥‥。
俺の名前はコルシャ・ネルニスト。
一人称が先ほどと違うのにはそれなりの理由がある。
‥‥‥の前に勘違いしないように言っておくが、俺がブツブツ言ってんのは厨二病でもなんでもなく、心の中を整理するためだ。他に理由なんてない。
先程俺は信じられない出来事に遭遇した。というのが、前世の記憶を思い出したこと。
突拍子もない話だが記憶によれば。俺は、赤星透という名で日本で生活をしていたらしい。
両親は一般人。
当然、一般人から生まれた俺は、何処にでもあるような普通の高校に通うこれといった特徴のない男子高校生だった。別にコミュ障というわけでもなく、そこそこ友達は多かったが、どいつもこいつも変わったやつが多かった。
まぁそんなことはどうだっていいだろう。
問題は、あるゲームについてのことだ。
先ほど俺は友達が多かったと言ったが、その友達の中には女生徒も含まれている。
俺には仲の良かったとある女の子の友達がいた。その子とは、小学校からの長い付き合いがあり、世間一般からすれば幼馴染と評される間柄だった。
そんな彼女、俺から見れば一見変わった趣味を持つ少女だった。
それというのもゲームづくり。それもボーイズラブという特殊な男性同士の恋愛模様を描くゲームを作るのが彼女にとっての趣味だった。
高校生になって間もない思春期真っ只中の人間にとって、そういったものを見聞きすることだけでも敏感なやつは多いだろう。
だがしかし、だからといって俺が彼女の趣味を嫌厭し、彼女の側から離れるということはなかった。
なぜなら俺の周りは変人が多かったからだ。
ゲーム作れるなんて凄い。
たった一言。
その時はそれで終わりだった。
彼女の一風変わった趣味なんてものに触れる機会はなかったし、俺にとっては他の個性に埋もれてしまう程度のものだったからだ。
これが後の彼女の布教行為に火をつけてしまうことになるとは、あの頃の俺は思いもしなかっただろう。
それから日が経って、クラス替えも近づいてきたある日のことだ。
彼女は言った。
「ねぇ、透くん。私の作ったゲームをやってみる気はない?」
「‥‥‥ゲーム?」
なんだ、突然。
そう思ったのだが、そういえば彼女、自分でゲームを作れるんだったかと思い出した。
その事を忘れていた俺は一瞬驚いたものの、彼女の作ったゲームには少し興味があった。
しかし、生憎ゲームが苦手分野の俺は数年間のブランクもあったし、そういったものを好き好んでやる人間でもない。勿体ないが断わろうとした。
「悪いけど、俺、ゲームは」
「ちょっと待って。透くん。一度私のゲームをやってみるってのはどうかな?結論というのは急ぎすぎもいいことにはならないんだよ?約束する。後悔はさせないよー?「やらない。」‥‥‥早いってば。」
早急なのは彼女の方ではないだろうか。
この年齢で一人でゲームを作り上げた彼女にはとても素晴らしい才能があることは認めるが、俺がそれをやるのとは話が別だ。とてもじゃないが俺には不向きだと思う。
「感想が欲しいの!こんなこと頼めるの君ぐらいだけだから!ね?!お試しでいいから!」
だが、彼女は必死だった。
それもゲーム嫌いの俺にここまで必死に頼み込んでくるのは彼女ぐらいなもんだったから、そんな彼女に考えるぐらいはしてもいいかなんて考えが頭を過ったのは仕方がないことだった。
「そんなにいうなら「ほんと?!じゃあ今日中にはお願いね!」‥‥‥‥‥‥。」
考えるぐらいはしてみてもいい、そう言おうと思っていたら、彼女から強引にゲームを押し付けられていた。
……もし、次があれば確実にはっきりとお断りしていたことだろう。
それから、家に帰り彼女から渡されたゲームを見てみると、やはりというか、期待を裏切らないBLゲームだった。
ゲーム自体やるのは久しぶりだし、この年まで恋愛をしたこともない俺からしたら、そのジャンルに偏見はないものの、なかなか腰が上がらないのも仕方がないことであった。
だが、強引でも受け取ったものをやらずに返すという失礼な真似はできないし、アクションゲームよりはまだ俺にできるのではないかという気持ちからようやくUSBを挿すまでに至った。
ピロピロリーン、と、何処か間の抜けた音が流れるとゲームのBGMらしきものがかかり始めた。
「キーボードで操作か。始めてだな、こんなの。」
カチカチと操作しながらゲームをスタートするとそれぞれのキャラのステータス画面が右横に表示され、恋愛ゲージというものが目に入った。それぞれ0%と表記されている。
試しに一番上にいる男のキャラに話しかけてみた。
メーターが1%になった。
「お、なるほど。こうやって好感度を上げていけばいいのか?」
それからは要領をつかんで俺にしては珍しくスムーズに物語が進んでいった。彼女の作ったゲームが初心者にも優しい設計だったこと、ところどころ入るミニゲームで飽きを感じさせなかったこと、単純に物語が面白かったこと、それらの理由から俺はそのゲームにのめり込み1日で一人目の攻略へと漕ぎ着けたのだ。
「え?!もうレオ様攻略しちゃったの?」
彼女は俺の攻略ペースに驚き目を見開いた。ゲーム嫌いだと公言していた俺だ。たった1日でそこまで進むとは思ってもいなかったんだろう。
「あぁ。レオ殿下って始めから側にいたし、結構好感度上げやすかったから。」
「あれー?そうだったかな?にしても早すぎるよ。」
「まぁ、夜通しでやったってのもあるし、ふあぁ~~っ。眠っ。」
お気づきかもしれないが、このときの俺の睡眠時間は0分。
つまりは徹夜ってことだ。
このペースで行けば、‥‥1週間で全キャラ攻略ってとこかと俺にしては舐めた考えを持っていたなと思う。
「そんなんじゃ体壊すよ?」
「へーき。2週間睡眠時間1時間しかとんない生活してたことあるし。」
「…………。」
不意に彼女が笑った。
「‥‥‥ハハッ、でも嬉しい。」
「ん?」
「だってゲーム好きじゃない透くんが、夢中になっちゃうぐらい面白いって思ってくれたってことでしょ?このゲーム。また感想聞かせてよ。ね?」
もともとそういう話で引き受けた……んだから断るつもりもなかった。
それに、ゲームも結構面白かったし。
それから俺はひたすらそのゲームをやり込んだ。
「これで10周目?にしてもシビアだなー。」
毎日毎日ひたすらゲーム画面を開いて好感度を上げるところからスタートするが、このゲーム。意外に選択肢が多く、時にバッドエンドルートに進むことも珍しくなかった。
一応一キャラずつクリアは目指していたつもりだったが、攻略対象のレオ殿下以外に攻略できたのは4周目と9周目にクリアした二人だけだった。その他はレオ殿下ルートに進むか、バッドエンドルートを辿るかの二択しかなく、しかも、そのバッドエンドルートの中で一番多いのが…………。
『もう俺はお前を逃さない』
闇堕ちしたレオ殿下に囚われ監禁されるルートだ。もちろん10週目のエンドはこれにあたる。
「流石にレオ殿下の主張が激しくないか?」
さっそく制作者であるの彼女に報告すると、彼女はおかしいなと首を傾げるのだった。
「ほんとに違うキャラのルートで進んでるの?それ。」
「当たり前だ。じゃなきゃ相談しない。」
俺は真っ当な質問をしたつもりだが、彼女にとっては違うらしい。
「うーん。」
「おい。制作者。悩むほどのことなのか?」
「……だって、そのエンド、レオ殿下の好感度をほとんどマックスに上げた状態で、他キャラのルートに入ろうとしないとならないエンドだもん。」
「なにそれ。初耳だが。」
じゃあなんだ?俺は今までレオ殿下の好感度を無意識に上げ続けてたということか?…………全くレオ殿下に干渉したつもりはなかったが。
「ま、いいや。それで推しキャラはレオ殿下なの?」
「……よくはない。推しキャラはレオ殿下ではないよ。キャラはいいと思うんだけど、主張激しいし、監禁ルートのイメージが強すぎて好きになれない。それと、もともといる婚約者?に冷たくないか、アイツ。」
「あー、ははっ。あの子は悪役令息ってやつだから。何度か攻略邪魔されたりしなかった?」
「まぁ……気にはならなかった。」
レオ殿下の婚約者で、彼のルートではひたすらに主人公の邪魔をする人物として登場するコルシャ・ネルニスト。後に俺がそのキャラに成り代わることになるとは露知らず、俺的にはただの一途な不憫キャラって印象だった。
「それで推しは誰なの?」
改めて聞かれると悩んだが、俺の頭には一人の攻略対象が浮かんでいた。
ルドヴィック・ハイラー。
王国に仕える騎士団団長の息子であり、その体躯は素晴らしいものだ。学園ではもちろん、騎士団に所属する隊員達と比べても、剣の腕で彼に叶うものはごく少数と言われている。おまけに誠実で顔面までも男前と言う、いろいろ完成されすぎているキャラクターだ。
「え、意外。ルドなんだ。」
「あの顔は反則。特に笑った顔とかカッコいい上に可愛さも兼ね備えてる。」
「あはは、ガチ推しじゃん。」
「でも全然攻略できないからの悔しさでってこともある。まだ完璧に推しとまでは。」
「なるほど?」
しかし、俺は即日からルドヴィックに沼っていた。
「聞いてくれ!昨日ようやくルドが攻略できたんだ!なんだあの神ストーリーは!!」
「お、おう。なんか君キャラ変わってるね?でも、おめでとう。どう?推しキャラ、のストーリーをクリアした感想は」
「最ッッッ高だった!!」
俺は冷めぬ興奮を口から吐き出す。
「彼は真面目な男で今まで恋愛なんてしてきたことがなかったんだ。それが主人公と交流していくうちに少しずつ、心を開いてくれて、彼は強く、優しいだけじゃなく、時には怒るし、劣等感やら、嫉妬心やら人間らしい一面もしっかり持ってるんだなってもうそれが良かった!!」
「うんうん。ありがと。そんなに好きになってくれて。私も嬉しいよ。」
「もうほんとに!彼が主人公のことを好きになる瞬間なんて……!昇天しそうになった!それに筋肉が、なんかこう……エッチすぎん?」
「……すごい。これが推しに対する愛ってやつ?」
「そんなんじゃない!ビックラブだ!」
「ビックラブ。」
「筋肉最強!「筋肉最高」ルドヴィック最高!「ルドヴィック最高」帰ったらルドの全シナリオ攻略してやる!!」
「おぉ。」
俺は萌えに萌えていた。
「…………うーん、透くんがオタクなのは知ってたけど、類は友を呼ぶと言うかなんというか、私が言えたことではないけど、透君も大概変人だよね。」
それから俺はまた徹夜コースでゲームをし続け、朝になった。
「ふぁ~~っ、ようやく、バッドエンドも回収。朝の支度しなきゃ……ん?」
────ドンッ
そして、愚かにも階段から足を踏み外した俺が聞いた最後の音はそれだった。
「うん。てことで俺は死んだってことだろうな。夢にしちゃあ出来過ぎだし。」
けど、なんというか。前世の俺の死に方アホ過ぎじゃないか?ゲームのし過ぎから寝不足で階段を踏み外すって……。こんなんなら睡眠時間はちゃんと確保しとけば良かった。
だがしかし現状を理解した今は何の問題もないと言ってもいいだろう。
なぜなら。
───俺は、推しの居る世界に転生したから。
ここは、俺が夢見たゲームの世界なのだ!
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