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一章 本編

19 放課後の予定

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 今日の放課後、私の家で秘密の女子会が開かれる事になった。


 女子会と言っても、メンバーは私と咲月ちゃんの二人だけ。

 「女子会」という言葉、この頃まだ浸透してなかったけど咲月ちゃんはすぐにそのニュアンスを理解してくれた。

 今まで何度か家に遊びに来てくれた事がある咲月ちゃん。よく二人でイラストを描き合ったりしていた。「すごいよ、由利花ちゃん! 漫画家になれるよ!」と、よく彼女は褒めてくれた。実際、漫画家には到底なれないだろうけどちょっと嬉しかった。自分では……私の中身が三十七歳プラス二度目の人生の年齢なので普通の小学生よりは達者かな、くらいのレベルだろうと思ってるんだけど……咲月ちゃんは褒め過ぎなのだ。



 それにしても。彼女に何て説明すればいいの?

 以前も同じような事で悩んでいたなぁ。もういっそ人生二度目だと打ち明けようか? そうしたらこうやって悩まずに……楽になれるかな?

 ……いや、待て待て。もしこの事が漏れてまた噂にでもなったら困る。





 授業中、先生の話もそっちのけで頭を押さえてうんうん考え続けていたけど突然、今まで色々あって記憶の隅に追いやっていた案件の存在を思い出す。


 …………そういえば。

 龍君は何で私が志崎君を好きだった事や、夫の事を知っていたんだろう?

 もしかして、私が二度目の人生を送っているって事も知っているのかな?





 こっそり後ろを見てみれば、彼は頬杖をついて廊下側の壁を見つめていた。視線だけ動かした彼と目が合ってしまい、へらっと誤魔化し笑いをして姿勢を前向きに戻した。

 その時、授業時間の終わりを告げるチャイムが鳴った。



「笹木さん、何?」


 授業と授業の間にある短い休み時間。龍君にさっきの事を尋ねられた。

「やぁちょっと聞きたい事があって……。ここでは話せない事なんだけどね……」

 私はそんな歯切れの悪い口調で答えた。こんな皆がいる中で「何で夫の存在を知ってるの?」とか聞ける訳がない。


「じゃあ……」

 私に向けられていた龍君の目が細まった。


「今日の放課後、またうちに遊びにおいでよ。知りたい事、何でも教えてあげる」


 そう続けられた彼の言葉。一瞬、周囲の空気がピリッとした。……気のせい?


 ガタンと突然音がして、少し驚いてそちらを向くと隣の席の志崎君が立ち上がった音のようだった。机に手をついて俯き、目を見開いていた彼はこちらを……龍君を見て不快そうに顔をしかめた。


 あれ……何この雰囲気。


「鈴谷、ダメだよ。由利花ちゃんは今日、私と約束してるんだから。ね? 由利花ちゃん」

「あ……、うん」


 咲月ちゃんが話に加わってくれたのにホッとする。本当に……何この空気。
 教室が静まり返って皆、私たちに注目しているのが分かる。




 次の授業の為、先生が教室に入ったので静止してこちらを見ていたクラスメイトたちは各々の席へ戻って行った。

 いつもと違い恐ろしく静かな生徒たちを、先生は二度見した。

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