【完結】【応募版】背徳トライアングル

猫都299

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♦4 秘密【想い人】

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♦♦♦ 4 秘密【想い人】 ♦♦♦


 相手のキスに応じようと精一杯だった。余裕がなかった。千鶴君の舌が私の舌を舐めるから胸の辺りがゾクゾクして、仰向けに寝かされている間も彼のシャツの袖を掴んだままだった。

 身体を見られた。

「思ったより大きい」

 彼が感想を口にする。膝立ちで私を見下ろしたまま、暫く目を瞠っていた。腕で隠そうとすると手首を掴まれる。頂を吸われて体がビクンと反応する。

「ゃあ、ぁあ……っ」

 我慢できず、声が出てしまう。もう片方の胸も揉まれる。凄い。自分でするのと全然違う。触ってもらうのって、こんなに気持ちいいんだ。

 息が上がってしまう。

 誰にも見せた事のなかった場所を、指でなぞられる。思わず脚を閉じようとした。

「ダメだよ」

 千鶴君は許してくれなかった。言い聞かせるように囁いた唇で、その場所に口付けてくる。

「やっ……っあ……っ、は……んっ……ぁう……っ」

 舌がっ……、千鶴君の舌が私の中で……っ!

 こんなの我慢できないよ。涙目で見つめる。彼は私の視線に気付いてくれた。

「触って」

 千鶴君の要望を叶えたい。恐る恐る手を伸ばす。どんな形をしているのかも知らなかった。初めて触れたそれは、思っていたよりもグロテスクだった。

 千鶴君に言われた通りに手で摩ってみる。暫くして、彼の呼吸が浅くなっているのに気付いた。もしかして……気持ちいいのかな?

 もっと気持ちよくなってほしくて、念入りに手を動かす。

「待って」

 途中で止められた。

「痛いかもしれないけど、許してな」

 彼の言った通り、痛かった。さっき摩っていたグロテスクなアレが、まさか私の中に差し込まれるものだったとは。「エッチ」が股間と股間を接触させる行為だというのは分かっていたけど。どんな風に繋がるのかとか、しかも繋がって終わりじゃなくて内部での往復運動があるって聞いてなかった。

 一回目は私が痛がったので中断した。

 二回目は全部入ったところまで進んだ。その時は、すぐに終わった。

 三回目は……痛みがなくて二回目よりも長く繋がっていた。

 四回目の頃にはカーテンの隙間から朝の光が零れていた。お母さんには「千鶴君とゲームしていて寝落ちしていた」って言い訳しよう。小さい頃からの仲だから、咎められないと思う。

 ベッド上で側の壁に背を預け、千鶴君と合わせた局部を見ている。出し入れされる度に甘い疼きがあって切ない。感覚の中でも凄くいいところがあって、自らの腰を浮かして拾おうとした。

 千鶴君が呻いた。

「それいい」

 教えてくれた彼の息遣いは荒く、陶酔しているように瞼が伏せられている。お互いの秘所を夢中で擦り合わせた後は、彼の動きに任せた。多分大分慣れたんだと思う。部屋に鳴る音が水っぽい。

「あー、すげー……気持ちいい」

 私も。

 指を絡めて両手を繋ぐ。少しだけ。ほんの少しだけ、早水君の顔を思い浮かべた。千鶴君が身を屈めてくる。

 とても不純なキスをした。下半身を咎められるペースが速くなる。

「あっあっあっあ……!」

 圧倒的な感覚の波に呑まれる。もう、達する事しか考えられない。彼に奥まで満たされていると感じた時、震える。

「うっ」

「ッあ……っ」

 一瞬、目の前が白く霞んで力が抜ける。千鶴君が少しぐったりした様子で、体を預けてくる。まるで、抱きしめられているみたい。「本当は、千鶴君に想われているのは私かもしれない」という思考が過る。自分勝手な想像に小さく微笑む。彼の重みを体に受け止めて、天井を眺める。

 早水君に会いたい気がした。



 休みが明け、次の一週間が始まる。

 平日の放課後、千鶴君と会える日は千鶴君と過ごした。五日の内、二日程…………早水君と過ごす日もあった。


 自室のベッドに仰向けになって、早水君に鎖骨近くを舐められている。『定期的に汗を舐めさせる日』だった。

「うっ……ん……っ、はぁ」

 胸がドキドキしている。緊張する。千鶴君と、もっと凄い事を経験したのに。まだ慣れない。


「ねぇ」

 鎖骨の中間辺りを舐めていた早水君が話し掛けてくる。

「千鶴君と、どこまでしたの?」

 息を呑んで早水君を見る。動揺して「えっ」と、口を滑らせてしまう。窺うような眼差しが、ニッと細められる。

「ちゃんと報告しないと、ダメだよ」

 柔らかい口調で言われた。まさか……見抜かれている?

 『ごめんね、本当は……』と言い掛けて、寸前で踏み留まる。

 つい報告してしまいそうになったけど。本当にバレているのかな?
 早水君は鎌をかけているだけかもしれない。

 でも。何と答えればいいんだろう。千鶴君に言われていた。早水君に秘密にするようにと。

 きっと千鶴君は……私と早水君が付き合っているから、そう言ったんだと思う。私と千鶴君は、してはいけない事をしている。早水君への裏切りだ。千鶴君は詳しい事情を知らないけど。

 私と早水君が付き合ったのは、そもそも千鶴君を振り向かせる為に必要な過程だったのだ。今、千鶴君との関係が進展しているから……そうだと確信している。千鶴君の心が真由ちゃんへ向いているとしても。私を必要としてくれた。


「えっと……」

 言い淀んで、視線を下へ逸らす。

「言いにくいのは、分かるけどさぁ」

 早水君の声の調子から、少しイライラしているような気配を感じ取る。

「千鶴君の付けたキスマークが、不自然なんだよね」

 指摘されてドキッとする。

「鎖骨の下、左胸の上の……やや中央寄りに一箇所ある。新しいのが。どういう事?」

「どういう事って?」

 聞き返した声が、僅かに上擦ってしまう。早水君の目が不快そうに歪む。

 千鶴君が最後に付けたキスマークは……早水君に怪しまれないように、わざと残した囮だ。

 最初に付けられたキスマークより胸寄りで、私たちの関係が少しだけ進展している……そう匂わせている。本当は凄く進んでいたけど。全然、何もないのは不自然に思われるだろうからという千鶴君の思惑が裏目に出てしまった?

 緊張で顔が強張っている自覚がある。早水君を見つめる。強い眼差しに責められている心地になる。鋭く言い切られる。

「千鶴君、確か『次はもっとするから』って言ってたよね? 何で一個しか付いてないんだろうね?」

 ハッとする。そう言えば……そうだ。早水君が疑問に考えるのも頷ける。

 以前……千鶴君へ早水君と付き合うと報告して、キスマークを付けられた。その会話の一部始終を録音していたボイスレコーダーを、早水君へ渡した。早水君の言及通りだ。脳裏に千鶴君の発言を振り返り、唇を噛む。頭を抱えたくなる。

「まるで……キスマークの比ではない程に先へ進んだから、敢えてする必要がないと言われてるみたいだ」

 早水君の呟きが鋭過ぎて、内心ビクビクしている。千鶴君は秘密を隠す為の「囮」と言っていたけど、逆に怪しまれている気がする。

 だがしかし。キスマークが全く付いてないよりはよかった。そっちの場合……言い訳を考えるのが、より大変そうだから。

「ほら。正直に言っていいよ?」

 早水君は面白がっているようにも見える。にこやかに促された。

 言いたいけど言えないよ。千鶴君に秘密にするよう頼まれているし。

「早水君。汗を舐めさせてあげる代わりに、言う事を聞いてくれるんだったよね?」

 言及して微笑む。相手を窺う。綺麗な顔が、私の言動のせいでしかめられている。

「今日の分」

 求めると、汚い物を見た時のような嫌そうな表情をされた。

「また、僕の首を舐める気?」

 前回の感触を思い出したのか、身震いしている様子が面白くて少し笑う。

「それもいいね。でも今日は聞きたい事があって。えっと……」

 詳しく尋ねる前に躊躇する。秘密に触れそうな話題を変えようとして切り出したけど、内容が恥ずかしい気がしてきた。それでも意を決して口にする。

「あのね。前に教えるって言ってくれたよね? 私の知りたい事を……」

「……ああ。うん」

 早水君が思い至った様子で返答をくれたので、若干安堵する。

「教えてくれる? どうすればいい? もっと……何と言うか…………メロメロにさせたいの」

 必死にお願いした。早水君の目が見開かれている。

「はぁ。僕が喜ぶ事を、千鶴君も喜ぶとは限らないよ。千鶴君に聞いてみたら?」

 皮肉の籠もった言い方をされた。

「早水君は? 早水君の嬉しい事はどんなの? 気になる」

 深追いした。

「逆に結ちゃんは? 千鶴君と、どういう事したいの?」

 切り返され「うっ」と言葉に詰まる。もう、してしまったと自白する訳にはいかない。

「あ……汗を舐めたい」

 咄嗟に口から出たのは、もしかしたら心の奥底に眠る真の願望なのかもしれない。よく分からないけど。

 心音がドクドクと速い。こんな場面で……ふざけた事を言ってしまったし、考えてしまった。

 呼吸を潜めて相手の反応を窺っていた。真顔だった彼の表情が緩む。フッと笑われた。

「そうなんだ。まだ舐めてなかったんだ」

 そんなに愉快な話題だった? お腹を押さえて笑う早水君を眺める。やっぱり。笑っている早水君が凄く――。

「うん。だから舐めさせて」

 無意識の内に要求を紡いでいた。早水君の顔から笑みが消える。

「ダメだよ」

 真剣な瞳で見返してくる。窘められたのだと思った。

「次に舐めようとしたら、口にするって言ったよね? 覚えてる?」

 幼子に言い聞かせる如き口調で確認される。早水君からしたら、私なんて恋愛初心者もいいところなのは分かっている。

 眼差しを逸らさずに頷き、望みを打ち明ける。

「キスしたい」

 早水君が軋んだ。凍り付いたように動きを止めた彼の、大きく瞠られた目が……僅かな間違いも見逃さないと言いたげに視線を注いでくる。

「僕より千鶴君が好きな癖に」

「うん」

 認めて薄く笑う。千鶴君が私にしたような酷い事を、早水君にしようとしている。涙で視界が滲む。

 雫が溢れる。流れ落ちている一時に、早水君の顔が近付いていた。逡巡している風な間が置かれた後で触れてくる。私も目を閉じる。程なくして……優しい温もりが重なりを解く。ゆっくりと瞼を上げる。彼を見た。

 早水君は、ぎこちなく微笑んで告げる。

「いいよ。僕は結ちゃんが好きだから」
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