【完結】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299

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二章 復讐のその後

54 望みと同意

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 春夜君に手を引かれて大通りを歩いている。街のあちらこちらがイルミネーションで彩られてクリスマスムードだ。

 私たちは駅に併設されているショッピングモールを目指していた。隣接している広場に毎年巨大なツリーのモニュメントが飾られるから二人で見に行く流れになった。

 バスに乗って向かった方が早いし楽だけど春夜君に「歩いて行きませんか?」と提案された。その際「話したい事もあるし」とも言われた。何の話だろうとドキドキした。最近会っていなかったから「別れ話だったらどうしよう」と不安に思った。だけど私も言いたい事があったので頷いた。

「少し遠回りしていいですか?」

 春夜君がこちらを窺うように聞いてきた。

「うん」

 返事をして気付いた。吐いた息が白い。カラオケ店の中が暖かかった分外は寒く感じるな。

 春夜君に見られていた。呆れているような細めた目付きで言及される。

「その格好寒くないですか?」

「あっ、と……。寒いかも」

「ちゃんと上着のボタンを留めてください」

 そう言って私のコートのボタンを留めてくれる。

「あ、ありがとう……」

 お礼を口にしてハッとする。コートは膝くらいまでの長さがある。春夜君が閉めてくれるまでボタンも留めず羽織っていただけだった。つまり中に着ている赤色のサンタコスチュームが前方からだと見えたままだった。スカートも、いつも自分が好んで穿くものより短かった。タイツを穿いているとは言え、見苦しいと思われたかもしれない。

「変……だよね。やっぱり。私にはこの服、可愛過ぎて似合ってないよね」

 春夜君は下のボタンから留め、最後に一番上のボタンに手を付けていたところだった。上目遣いな彼と目が合う。

「何言ってるんですか?」

 少しむっとした表情で言い聞かせてくる。

「そろそろ自覚してくださいよ。こんな格好で無防備に街中を歩かないでください。スカートも短いです。見せるならオレだけに見せてください」

「は、はい」

 春夜君の剣幕に戸惑いながら首を縦に振った。お母さんみたいな事を言ってくるなぁ。

 髪を撫でられた。真剣な瞳で告げられた。

「明は可愛いです」

 彼はしていたマフラーを外し私の首に巻いてくれた。温かい。少しだけ春夜君の匂いがする。

 再び歩き出した。しっかりと繋いでいる手が心地いい。幸せってきっとこんな一瞬一瞬の事を言うんだと、掴み所のない思いがふっと意識に浮かび流れた。




 大通りから逸れた海側の歩道を進んでいた。左手に建つビルよりも先へ行くと視界が開けた。

 歩道のすぐ側から海が広がっていて対岸の山や近くに架かる大きな橋も見渡せた。水面に無数の彩りが反射しキラキラ輝いている。宝石箱をひっくり返して散りばめたような夜景に圧倒された。

 春夜君が立ち止まった。道の途中で振り向いた彼は何か言いたそうに口を開いた。だけどためらっているような、どこかつらそうな表情で見つめてくる。

 少し笑った。もしかしたら振られるのかもしれないと薄く察した。だめだよ春夜君。絶対に手放してあげないから。


「ねぇ春夜君。先に私から言ってもいいかな?」

 手に持っていた紙袋の中をゴソゴソと探った。彼は何も言わず眼差しだけ向けてくる。大した事じゃない風を装い明るく提案する。

「前、罰ゲームするって言ってたよね。今からしようか」

「今からですか?」

 彼は都合が悪いと言いたげな渋い顔をした。そんな嫌そうにしなくても。「ははっ」と小さく笑って紙袋から取り出したマフラーを目の前にいる大好きな人の首に回した。

 色々とプレゼントを迷って昨日やっと買った。紺のチェック柄でふわふわした手触りのものにした。見た時、何となく春夜君っぽいイメージが過ったのが決め手だった。

 マフラーを巻いている間、彼が背を屈めてくれる。

「私の要求全部に同意して」

 罰ゲームの主旨を伝えた頃、巻き終わった。


「目も」

 彼の肩に手を置いたまま瞼にキスした。

「口も」

 唇へキスする。

「声も」

 喉に指を這わせ胸の中央に触れた。

「心も」



「春夜君の全部は私のものだから」



 本音を聞かせる。



「ほかの子を見ないで。私だけを見ていて。……一生」



 見開かれていた彼の目がゆっくりと伏せられた。次に視線が合った時、余裕がありそうなニヤリとした表情で言われた。


「いいんですか? 明も誓わないといけなくなりますよ? 一生オレに束縛されて……後悔しますよ」


 とびきり微笑んで答える。

「望むところだよ」





「オレたちこれから色々あると思うんです。進路もそうだし、まだ思い描けていないだけで何らかの問題に直面する事もあるだろうし……」

 彼は言葉を紡ぎながらポケットに手を入れた。

「オレはそういうの、明と乗り越えたい」

 左手に何かされた。見ると薬指に綺麗な石の付いた指輪が光っていた。

「いい時も悪い時も明と一緒に経験したい。いいですか?」

 胸が苦しくて涙が零れた。繋がれた両手をぎゅっと結んだ。

「はい。私も同じ気持ちです」
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