【完結】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299

文字の大きさ
53 / 60
二章 復讐のその後

53 彼だけが気付く事

しおりを挟む
 その場にいた女子たち全員が息を呑む様相でさりあちゃんに注目していたと思う。そんな中……。

「ぴーぴゅる~」

 室内に気の抜けた音が鳴った。さりあちゃんが部屋の奥へ視線を向けている。私も音のした方を見た。口笛を吹いていたのは……。

「ぴゅーぅ」

「犯人は姫莉ね」

「何で分かったのっ?」

 姫莉ちゃんが目を剥いてさりあちゃんに尋ねた。さりあちゃんは渋い顔で聞き返した。

「逆に何で今、口笛を吹いたの?」

「漫画に描いてあったもん。誤魔化す時の定番でしょ?」

 さりあちゃんが額を押さえ口の端をピクピクさせている。姫莉ちゃんがニコッと笑った。

「ごめんね皆。姫莉どうしても聡に見せたかったの! トナカイになった姫莉の、この可愛さを!」

 彼女は芝居がかった身振り手振りで動機を自白した。

「それならこの場に呼ばなくても、後から二人だけで会えばよかったでしょ?」

 頭の痛そうな仕草だったさりあちゃんが言い及んだ。姫莉ちゃんは少し口を開けた表情でさりあちゃんを見つめた後、言った。

「そっか。そうだね!」

 明るく笑っている姫莉ちゃんに釣られて笑った。一時はどうなる事かと思ったけど、秘密が漏れるのも無きにしも非ずだと思っていたし咎める程の事でもない気がする。

 ほかの子たちもホッとしたように笑っている。

「皆、うちの姫莉がごめんね」

 さりあちゃんがよろよろと肩を落としながら言った。

「大丈夫だよ! ちょっと恥ずかしいけど、そんな怒るような事でもないし」

 佳耶さんが顔を横に向けてフォローした。このメンバーの中で一番うろたえている様子なのが彼女だった。今も出入り口近くに立つ理お兄さんの視線から必死に逃げようとしているように見える。

「う、うん大丈夫……大丈夫。ははは。それよりそろそろ退室の時刻じゃない? 彼氏いる人は羨ましいな。お迎えに来てもらえたって事でしょ?」

 ありすちゃんがぎこちなく教えてくれる。彼女も恥ずかしそうに苦笑いしていた。

「じゃあ、今日はこの辺でお開きだね。皆ありがとう! すっごく楽しかったよ!」

 晴菜ちゃんが明るい笑顔でクリスマスパーティーを締めくくった。皆も今日の楽しかった事を口々に振り返る。

「歌合戦笑ったね!」

「佳耶さん強過ぎ!」

「ほとりちゃん可愛い衣装を作ってくれてありがとう!」

「皆凄く似合ってたよ~!」

 それぞれ帰り支度を始めた。


「聡、見て見て~! 姫莉トナカイ~! 可愛いでしょ?」

 姫莉ちゃんが岸谷君の方へ近付きクルッと回って笑った。

「あ、ああそうだな」

「えへへ~」

 岸谷君は姫莉ちゃんが手に持っていたコートを彼女へ着せ掛けた。そして彼女の頭を撫でた。優しい眼差しで。

「行こう」

「うんっ!」

 二人が帰った後、ほかのメンバーも続々と部屋を出て行った。

「お先~!」

「またね~!」

「佳耶。何で俺に黙ってたの?」

「だって……恥ずかしいし」

「ほとり、ありす。私たちは二次会よ!」

「待ってました! これからが本番だよぉ~!」

「えっ? 私もいいの?」



 最後に残った。ドアの前に立ったままの春夜君から視線を送られている。見つめ返していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...