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ゆにゆに

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わたしが白滝を嫌いになった理由

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 雨が降っている。強くもなく弱くもなく、まだしばらくは止みそうもない。そんな雨だ。

「遊びに行きたいなーっ」

 家の中で出来る遊びはつまらなくて、わたしは姉にねだった。けれど、雨だから遊びに行く事は出来ない。それくらいはわたしにも分かる。隣の部屋から聞こえてくる大人しくしてなさい、と言う姉の声にこっそりとため息を返す。仕方なく、わたしは窓の外を眺める作業に戻った。

 窓の外で、何かが動いたような気がした。

「お姉ちゃん!女の子!」
「雨が降っているのに、外に出ようとする女の子なんてあなたくらいよ」
「そうだけど!ってそうじゃなくて、女の子が倒れてる!」

 ようやく窓の外に女の子の姿を確認した姉とわたしは、慌てて女の子の元へと走ったのだった。



 女の子は道中、魔獣けものにでも襲われたのか。着ていた服も、この辺りでは見たことのない白滝のように透けるような銀色の髪も、泥に汚れていた。雨にも濡れているし、このままでは風邪をひいてしまう。姉は女の子をお風呂へと案内した。

 お風呂から出てきた女の子には、大小様々な傷があった。姉が回復魔法リバリカを唱えると、優しい小さな光がいくつも浮かび、女の子の傷を癒していく。

「なにも、おぼえてないの」

 ぽつりぽつりと不安そうに、そして何処か遠くを見ながら女の子は言った。わたしと姉は顔を合わせ、ここの所続いている隣国アウナワとの小競り合いに巻き込まれたのかなと想像した。



 女の子が村に来てから、数ヶ月が経った。まだ何も思い出せないみたいで、姉は女の子をイリニと呼び始めた。最初は戸惑っていたイリニだけれど、今となっては随分と馴染んでいる。

 お向かいのおじいちゃんが作っているお野菜が美味しいとか、今度お隣に赤ん坊が産まれるとか、明後日には行商人が来て色々なモノを買えるだとか。そんな事を話しながら、わたしの仕事であるお洗濯をイリニと2人で手分けして行う。

「ニィナはこの村が大好きなのね」

 そう問いかけたイリニが、何故だか一瞬、とても哀しそうに見えた。あれ、と思った時にはふんわりした笑顔を浮かべていたから、気の所為だったのかなと思った。



 だけれどそれは、気の所為ではなかった。



 行商人が来る日。いつまで経っても行商人のおじさんは来なくて、村の大人達はおかしい、何かあったのか、と口々に言い合っていた。結局、その日の内に行商人が村に来ることはなかった。

 ある日の夜、ふと目が覚めると隣で眠っているはずのイリニの姿がなかった。わたしはベッドから出ると、姉の部屋へ向かった。
 ドアをノックする寸前、きぃんと鋭い音が鳴ったかと思うと、空気が重くなった。すぐ元に戻ったけれど、姉の部屋からガラスの割れる音が聞こえた。わたしは慌ててドアを開いた。

 どうやらガラスを割ったのは姉のようだった。姉はイリニを追いかけて走っている。嫌な予感がして、わたしも後を追った。



 村中の家は炎に包まれ、村人達の気配はない。世界にわたしと姉、そしてイリニの3人しかいないような感覚。
 いったい何があったと言うのだろう。いつも白いイリニは、今は真紅に染まっていた。これではまるで、この惨状をイリニが作り出したみたいではないか。

「逃げなさい!」

 今までに聞いたことのない、鋭い声で姉が叫ぶ。
 逃げなきゃ。そう思うのに身体が上手く動かない。イリニから目を離せない。そんなわたしを見て、姉はわたしに防御魔法ドルシーをかけるとイリニと対峙する。

 攻撃魔法クアッタを練りながら突撃する姉を見て、イリニは口元に笑みを浮かべた。それは一緒に遊んでいた時と全く変わらない、あの優しい笑みだった。

「カレナさん、ごめんなさい」

 終わりは一瞬だった。イリニが片手を上げたかと思うと、姉はもう動かなかった。あまりにも呆気なくて、声も出なかった。呆然としていたわたしは、イリニがいつ立ち去ったのか、気付かなかった。



 村の生き残りはわたしだけだった。わたしはイリニを探す事にした。どうすれば生きていられるのか、分からなくなってしまったから。

 イリニに会って、姉の仇を討つ。

 もし上手く出来たら、姉は褒めてくれるだろうか。わたしのたった1人の家族。だいすきな姉。
 わたしから姉を奪ったイリニを、許す事は出来ない。
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