コレは私が騎士になる話で有る

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ギルバート衛兵長

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「オイ、てめぇーら。……何してやがる。」
聞き覚えのある声。慌てて上を向けば、私を抱えて武器庫の屋根にギルバートはいた。
「ぎ、ギルバート。」
夢のように思えて、思わず名前を呼べば頭をクシャリと撫でられた。
優しく撫でてくれるその手に安心をすれば、私を地面におろした。
「動くんじゃねーぞ。」

そのまま、ムーランジュの方に走っていき短剣で応戦し始めた。
「なぜ、忌み子を守る?ソレは、こちら側の者だ。お前が出てくる?」
話し始めるムーランジュが、私の方を見て鼻で笑ってきた。
「黒髪である闇属性を持つ、忌み子が……。なぜ人に守られる。」

鋭い刃となってその言葉は、私のもとに刺さってしまった。
忌み子と呼ばれる、私。それは、闇属性を待っているからだ。
決して物理的に周りの人間に迷惑をかける訳ではないけれど、昔から災いをもたらすと言われる。

「そースッよ!……こっちに来るッス。いや、来ないといけないッスよね。」
私の前に歩いてきた、サンドニアはいい笑顔で言ってくる。
「自分達は、"闇鷹"って言う組織の一人ッス。首領があんたを望んでるんッス。」
先程の恐怖がやってきて、体が震える。

「【払い給え、清め給え、大切な人を守る結界となれ】」
ギルバートによって、私の周りに結界がはられてサンドニアが私に危害を加えることはできなくなった。
「ちょっと……、あんたはコッチ。」
しかし、ムーランジュに一発蹴りを入れられてドサリと地面に倒れる。

「ギルバート!……っ!」
バキン、とサンドニアが結界を壊した。
慌ててその場を離れて、ギルバートの方へ行く。
「【風よ、何時の思うとおりに動き、他のものの場所を変え給え、嵐】」

二人に向かって私の使える風、土、闇の中で最も攻撃力のあるものを使う。
土は基本防御系統の魔法が多く、闇は何が起こるのか分からない。

そのため、今まで最も練習してきたのは風属性だ。
____ドゴンッ
大きく地面を揺らして、私の魔法によって煙が上がったところを見る。そばには、ギルバートだっている。

体中がボロボロで、気を失っている状態。
「いやいや、その歳でもうここまで出来るんッスか……。首領が欲しがるのも頷けるッス!」
しかし、私の魔法は全くと言っていいほど聞かなかったよう。
マント一つ汚れていない状態でニコニコと笑いながら、サンドニアとムーランジュは出てきた。

「オイ、サンドニア。……コイツの両腕を斬ろう。」
しかし怒っていないかと言われると、そうでもない。ムーランジュからは、明らかなる怒気が見えてくる。
もしかしたら、余計な事をしてしまったのかもしれない。
「い…、いや。こ、こ来ないでっ!」
ガタガタと体が震えて、ヘタリと地面に座り込む。立つことさえも出来ない、圧倒的な強さ。
「んー……、ムーランジュ!ちょっと待つッス。」
私の方に駆け出そうとしたムーランジュを、サンドニアが抑えた。
どうかしたのか……な?

警戒しながら二人の出方を伺う。その空きにギルバートの持っていた短剣を手探りで握る。
手に当たった柄の部分をしっかりと握る。大丈夫、大丈夫。
恐怖で心から黒い何とも言えないモノが出てきているように思えてくる。
「首領からは、あんまり忌み子は傷つけるなと言われてるッス。……だから、こうするッス!」



一瞬、サンドニアが見えなくなったかと思えばブワリ、と風が舞う。
次に来たのは、生温かい液体だった。
____ザシュッ
「この衛兵長の腕をもらうッス。」
先程と何ら変わらない笑みを浮かべて、いい笑顔で言ってくる。本当に何も変わらない。

しかし実際には、サンドニアの手にギルバートのものだった、左腕が持たれている。
ソレは、ギルバートとはもうつながっていない。
ドロドロと真っ赤な水が私と未だに気絶しているギルバートの周りを汚す。

「う、ぁ、あ……。」
慌ててギルバートの腕の血を止めようと近付けば初めと同じように髪を掴まれる。
「逃げるから、こうなるッスよ?……力が無いから、こうなるッスよ?」


ニタリ、と私に笑いかける。











弱いから、こうなるの?
______力がほしいの?


誰かを助けられないの?
______ボクは力を君に与えられるよ?


力があれば、こいつらを追い払える?
______簡単なことさ。









欲しい!力が!

______プツリ
私の意識は、なくなった。
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