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⑤
しおりを挟む家に帰りノルマ通り自分の顔を十回叩いている最中、キッチンからリビングに入ってきた妹が食べていたアイスを放り出して俺の手を掴んできた。
「アイス溶けるぞ」
「今はアイスとかどうでもいいから!何してんの!?!?」
アイスが好きなのは血筋である。
ちなみに俺はバニラ派、妹はチョコレート派だ。
「戒め」
「なんの!?」
「ポンコツ頭に痛みで学習させてる」
「そんなことしてもお兄ちゃんはポンコツだからやめて!」
「酷い妹だな」
兄をポンコツ呼ばわりとは全くもって酷い妹である。
「全く…何したのよ」
「いや…俺後輩と付き合ってたことを知らなかったから」
「なんで?」
なんでと問われても告白に気が付かなかったとしか言えない。
「本人に俺たち付き合ってた?って聞いちゃって」
「…………はぁ……お兄ちゃんすぎる。ていうかなんでよ…」
「告白に俺も好きだよって返したっぽくて」
「だからなんで!?」
なんでと言われても告白に気が付かなかったとしか言えない。
「アイス食べてたから…」
「…ばか………」
染み入る罵倒に頷きながら両手ビンタを続けようとした俺に妹は盛大に一発ビンタをしてきた。
痛い。
「なんでビンタされたの?俺」
「これでおしまい!明日腫れ上がったらどうすんの。取り柄がなくなっちゃうでしょ」
「……確かに…。俺からよく見ればイケメンの顔をとったら足の速さしか残らない…」
愕然としながら自分の足元を見ると鍛え上げられたふくらはぎに少しだけ自信を取り戻した。
俺は足がとても速い。
それだけで価値がある。
「……まぁ、そんなことはないけどさ。でもしょうがないでしょ付き合っちゃったんだから。誤解してごめんねって断ってきな?」
「やだ」
「…やだ?」
「だって可愛いし。このままでいい」
「……だってじゃないでしょうよ……あんた…失礼すぎ…顔で選んでんの?全くお兄ちゃんったら…現実を生きてるのか不安になるくらいゴーイングマイウェイすぎる」
顔かと問われるとよく分からないけど明るいクセ毛も可愛いし眠そうなタレ目も可愛い。
まぁ顔と言われたらそうな気がする。
頑張り屋な所とか、なんでか自分に懐いてくるとことか、今日初めて知ったけど少し怒りっぽい所も可愛い。
でも顔が多分好みっぽいのは事実なので妹の言葉を否定できない。
「……はぁ、まぁお兄ちゃんならそんな悪さしないと思ってるけど…お兄ちゃんポンコツだからなぁ……相手の子が傷つかないか心配だよ」
「大丈夫」
「何を根拠に」
「だってミヤだから、大丈夫」
「ミヤ?ミヤって…陸部の後輩の子だよね?えっと宮野岳久くん……え?お兄ちゃん?ちょっと…男の子と付き合ってるの?ちょっと!どこ行くの」
「風呂」
「いま?!話終わってないんだけど」
「妹よ。お兄ちゃんは汗だくで気持ち悪いから風呂に行く。これは決定事項だ」
その場でシャツを脱ぐと妹は青筋を立てて目にも止まらぬ速さで俺の頭をテーブルに置いてあったハエたたきですっぱ抜いた。
痛い。
「いたい」
「私の前で脱ぐなって言ってんでしょうが!気持ち悪いな!」
「ひどい」
「もういい。風呂入ってきなよ」
うちの妹は強キャラすぎて逆らえる気がしない。
ミヤよりも小さい体でよく暴力に訴えてくるものだ。
言っておくが妹よ。こんなに鍛え抜かれた身体見られることなんてそうそうないんだからな。
見なきゃ損だぞ。
あとすぐ手が出るの良くないぞ妹よ。
嫁の貰い手無くなるんだからな妹よ。
「なんか言った?」
何も言っていないのに心を読まれた。
恐ろしい妹だ。
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