思いオソレリ

夜行回

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1、一章

1、5取り憑かれたもの

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 街からやや離れた静かな境内には、まばらに人が歩く。腰が曲がり祈るように頭を下げている老人たち、子供達もおみくじの結果をヒソヒソと報告して笑う。

 ベンチに座った俺は下へと手を差し伸べて、手のひらから狐にエサをやる。

 今日のことを思い出して、俺の頬を涙が伝った。

「俺の料理、誰にも食べてもらえないのかな……」

 小さな頃にじいちゃんに語った夢。食べさせてあげると約束したのに、じいちゃんは死んでしまった。

 火が怖い俺に誰かに振る舞う料理なんて……。

 そんな俺の膝に足が置かれた、エサを食べていた狐が俺に顔を近づける。その舌が頬に触れそうな瞬間。

 バチン! 

 俺のそばで何かが弾けた。見ればシャボン玉が浮いている。音を警戒してか狐が威嚇をする。狐はそのまま走り去っていってしまった。

 子供達の仕業だろう。シャボン玉で遊ぶなんて誰だってする。
 
「行っちゃった。でもエサは、食い切ってんのな」

 最後までちゃっかりしてる狐だった。また今度触らせてもらうかも知れない。

 狐の温かで柔らかな毛並みに今日で1番安心できた。住民憩いの場らしい雰囲気も気に入った。この神社はまた来ると思う。

 そうして俺は立ち上がった、視界の端に何かがヒラヒラと落ちるのが見えた。凝視すると見えてきたのはあの鱗だった。

 慌てて後退りする。地面の砂利で紛れて見えにくかったが確かにあの鱗だ。白い、魚のような!

「俺とり憑かれてんのか!」

 立ち上がった俺は神社の拝殿に駆け寄った。ちょうど人はおらず、すぐに本殿まで行けた。財布にあったお札を取ろうと手を動かすが、震えからか手間取ってしまう。

 なんとか取り出したクシャクシャのお札を賽銭箱に入れてお参りした。 

 拝殿に一礼し鳥居のところでもさらに一礼。念を込めてひたすらお祈りをした。あの怪物から守ってくださいと。

 とにかく家に帰ろう。眠れば終わるかも知れない。この悪夢のような現実。ただでさえ気落ちしているのに恐ろしい事まであったんだ。疲れのせいとかにしたいけど、背中の冷たさがそれを許さない。

 濡れた体をしっかり洗えば取れるかも知れない。この寒気も、気分の陰鬱さも。今日食べられなかったカレーとか食べてから休めばきっと……。
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