思いオソレリ

夜行回

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1、一章

1、6力の発現

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 家に着いた俺は玄関で靴を脱ぎ捨てて、慌てて靴の位置を整えてから、手洗いなどをやって急ぎ階段前まで来て引き返す。

 居間の戸を開けると母さんがお茶を飲んでいる。おみやげにもらったまんじゅうの箱が空いていて、こっそり食っていたのだろう。俺と父さんの分も残してくれている、それが美味しすぎない限りは。

「ただいま」

「おかえり。今日は早いのね。料理の部活やるって言ってなかった?」

「やっぱりキツそうだったから、それより今日の夕飯は俺が作ってもいい?」

「そう。いいけど」

「玉ねぎとかイモとかある?」

「カレーの具材はあるわよ。部活は気長にやりましょ。電気コンロ持っていっていいかとか、聞くだけ聞くのもありなんだから」

「ありがとう。それと風呂入ってもいい?」

「いいけど、珍しい」

「そんじゃ!」

 俺は階段を上がり、自分の部屋に駆け込んだ。カバンはなかった。着替えだけ持って、風呂場へと向かう。衣服を脱ぐ時、えり首から出てきた鱗にビビり風呂のガラス戸に肘を打つ。慌ててティッシュで拾いゴミ箱に捨てた。

 体を洗い、湯船に浸かると安心した。俺の目の前をぷかぷか浮かんでいる鱗を見つけるまでは。桶ですくって排水溝に流す。

 そして足早に湯船から上がり、体をシャワーで流す時もまた鱗が落ちてきた。

「なんなんだよこれ! 頭も洗ったんだぞ!」

 急ぎ風呂を出て着替えると、自室に戻った。俺の部屋は日当たりが良い部屋で、買ってもらった大型の2段ベッドと一体型の机に本棚が一つ。昼間の日差しが温めてくれた部屋は暖かい。

 部屋に入って机から古びたマッチの箱を取り出すとそれを持ってハシゴを伝い上のベッドに横たわった。

 寒気は消えていた。濡れていた服を脱いで、家に戻った事に安心したからだ。マッチの箱をゆすってみる。中身がない事は知っているがどうしても確認しないと安心できない。

 火が怖いから。でも、火のことを好きだった時があった。じいちゃんにもらった最初で最後の贈り物を持っていると、ウトウトとしてきた。

 箱を枕の横に置き、少し眠ろう。目を閉じたら、今日の疲れからかすぐに眠れた。

 でも目が開いた。暗い場所に俺は立っている。辺りは寒くて足を踏みだすと木々が割れる音がする。山の夢なのだろうか?

 ガサガサ、どこかから音がする。大きな生き物が草が外で動く音だ。じいちゃんに習った。

 でも明かりがない、逃げる方向もわからない。やがて足音が近づいてくる。怯える俺の耳に声が聞こえた。

「願ってごらん、火よ灯れって」

 じいちゃんの声だ。でもじいちゃんは亡くなっている。足音はじいちゃんのものなのか? 

「グルルッ!」

 唸り声が聞こえた。じいちゃんではない。逃げたい、でも。

 手が温かくなった。何かを持っている。それは箱だ、小さく側面がざらざらしている。マッチの箱なのだ。

 何かがいる怖い。でも、じいちゃんの声もした。どっちを信じるかって言ったら。

「じいちゃんを信じる!」

 俺は見えない箱をスライドさせて一本のマッチを取った。そして勢いよく擦る。

 明かりが灯った。目の前に現れたのはじいちゃんだ。

「じいちゃん。俺、ずっと謝りたかったんだ」

 でも、答えてはくれず。消える。最後の瞬間だけじいちゃんは微笑んだ。

 灯が完全に消えた時、二つの光が現れた。それは目だ。赤く燃え光る火のような瞳。牙が見え、口が開き赤い炎を吐き出しながら迫ってきた。
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