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1章
つかの間の休息
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食事の後片付けをする俺たち。すると土を踏む音が聞こえ、虎が匂いを嗅ぎながら現れた。
「帰ってきたのか、トラバサミ!」
俺は虎に近づき撫でる。
「さっきはありがとうな」
「それ本物の虎だぞ」
「先に言ってくれよ!」
虎と俺は目を合わせたまま固まった。俺は接近しすぎたために目を逸らしたら襲われる。視線を外さずに鞄を探り、ある調味料を取り出す。それの蓋を開けて、虎の鼻に向けて振った。
唐辛子の辛みの匂いと共に虎に当たり、虎は自らの鼻を擦って払い落とそうとしている。
これは一味唐辛子、辛みは痛みとなり浴びたら一溜りもない激痛に襲われる。敏感な動物には特に効く。
その隙に離れようとした俺に錯乱した虎の爪が当たった。腕から血が出て俺は痛みに立ち止まる。
「悠人!」
もう一撃、虎の爪が振り下ろされた時にダンジョンの奥から一匹の虎が現れて、俺の目の前の虎に体当たりをした。突き飛ばされた虎は逃げていった。
「危なかったな、少年!」
「トラバサミか、ありがとう」
凛音とリュセラが駆け寄ってきた。
引っ掻かれた腕が痛む。凛音がヘッドライトで傷を照らすと、先ほどの傷口から血が滲んでいた。
リュセラが俺の服を巻き上げて、杖を向けて魔法を唱える。杖から水が出て俺の腕を洗った。
「なにそれスゴーい、どうやるの?」
「水を出せと唱えただけだ、君ならできる」
「へい杖、水出して!」
「先に治療してくれ……」
その後、追加で凛音に水を掛けられてから、凛音が鞄から抗生物質クリームとガーゼ、包帯を取り出し処置をしてくれた。治療の手際は良かった、その前を除けば。後、余計に濡れた。
二人に治療してもらい、立ち上がった俺は立ちくらみを起こした。側にいたリュセラが支えてくれる。
「貧血だ、血を流しすぎた」
「トラバサミも合流したし、休憩しよっか」
「見張りは私とトラバサミがするから、安心なさい!」
鍋が胸を張り、トラバサミと共に周りを見に行った。
ダンジョンの一室であるここは、壊れた道具、鎧や盾や武器が散らばっている。そこを少し掻き分けて、凛音が簡易なテントを立ててくれた。
「はい、水」
凛音が鞄から出してくれたペットボトルの水を俺は飲んだ。
「仮眠をしろ。しかし、忘れるなよここはダンジョン。獣も居れば敵もいる」
「いつでも起きれるようにってこと!」
テントの中に寝袋と毛布を用意して、凛音は明かりを付けっぱなしにしてくれた。
俺はテントに入り横になると、意識が遠退いた。
次に目が覚めた時、目に入ったのは知らない女性だった。テントの中はランプで照らされている。
「凛音、知らない人が!」
俺は慌てて体を起こした。すると更に四人の知らない男女。
テントの入り口が開いて、凛音が顔を出した。
「何を言っているの、彼らはずっと一緒なのに」
「そんなわけ有るか! 凛音やリュセラ、道具たち以外なんて居るわけ……。もしかして」
「そう、私の道具たち!」
凛音は手を上げて全員を見た。
「総員点呼!」
「バーナー!」
最初に目に入った女性だ。穏やかそうな見た目に、耳にピアスを沢山付けている。
「クッカー!」
恰幅のいい男で、つり上がった細目だ。
「寝袋!」
女性だ、やたらに露出が高い服にモコモコのジャケットを羽織っている。
「テント2番!」
メガネを掛けた男の子で、カジュアルな服を着ている。
「あ、ええと杖!」
ローブで、スキンヘッドの男だった。
「ほら、これで分かったでしょ」
「分かるか!」
俺たちはテントから出た。すると入り口でリュセラが椅子に座って本を読んでいた。明かりも付いていない。
「そんなに暗くて見えるのか?」
「エルフは暗視できる。さっき入ってきた奴がいるのも知ってるぞ」
「見張り出来てないじゃん! どんな奴だった?」
「暗くて細かくは分からない、鞄を持っていたくらいか」
「ヤバい、人が増えたせいで判別出来ない。どうすれば」
「大丈夫、私に任せて」
凛音は杖を振って、自分の道具の一人に火を飛ばした。
「なぜ分かった! お前は杖を持っていたはずだ。しかも幾つも」
凛音、拾いすぎ!
「自己紹介ってね言いよどまない。少なくとも自分の名前とかはすぐに答えられる。それに私たちの世界では杖は持っていないことの方が多い」
「バレては仕方ない、悲劇教団助けたかっ隊隊員、アライがお前たちを倒す!」
味方の中に紛れ込んだアライの笑み。その真意は何か? 俺は怪我しているが凛音にリュセラ、鍋にトラバサミ、凛音の道具たちと有利な戦局だ。
緊張と喉の渇きを感じて、俺は鞄から水筒とシナモンを出そうとした。シナモンは俺の一番のお気に入り調味料だ。匂いを嗅ぐと安心する。
だが鞄がないことに気がついた。俺は何時間寝ていた? 奴にどれ程の時間を許したのか?
それはそうと、シナモンが無いことで不安になってきたのだが。
「帰ってきたのか、トラバサミ!」
俺は虎に近づき撫でる。
「さっきはありがとうな」
「それ本物の虎だぞ」
「先に言ってくれよ!」
虎と俺は目を合わせたまま固まった。俺は接近しすぎたために目を逸らしたら襲われる。視線を外さずに鞄を探り、ある調味料を取り出す。それの蓋を開けて、虎の鼻に向けて振った。
唐辛子の辛みの匂いと共に虎に当たり、虎は自らの鼻を擦って払い落とそうとしている。
これは一味唐辛子、辛みは痛みとなり浴びたら一溜りもない激痛に襲われる。敏感な動物には特に効く。
その隙に離れようとした俺に錯乱した虎の爪が当たった。腕から血が出て俺は痛みに立ち止まる。
「悠人!」
もう一撃、虎の爪が振り下ろされた時にダンジョンの奥から一匹の虎が現れて、俺の目の前の虎に体当たりをした。突き飛ばされた虎は逃げていった。
「危なかったな、少年!」
「トラバサミか、ありがとう」
凛音とリュセラが駆け寄ってきた。
引っ掻かれた腕が痛む。凛音がヘッドライトで傷を照らすと、先ほどの傷口から血が滲んでいた。
リュセラが俺の服を巻き上げて、杖を向けて魔法を唱える。杖から水が出て俺の腕を洗った。
「なにそれスゴーい、どうやるの?」
「水を出せと唱えただけだ、君ならできる」
「へい杖、水出して!」
「先に治療してくれ……」
その後、追加で凛音に水を掛けられてから、凛音が鞄から抗生物質クリームとガーゼ、包帯を取り出し処置をしてくれた。治療の手際は良かった、その前を除けば。後、余計に濡れた。
二人に治療してもらい、立ち上がった俺は立ちくらみを起こした。側にいたリュセラが支えてくれる。
「貧血だ、血を流しすぎた」
「トラバサミも合流したし、休憩しよっか」
「見張りは私とトラバサミがするから、安心なさい!」
鍋が胸を張り、トラバサミと共に周りを見に行った。
ダンジョンの一室であるここは、壊れた道具、鎧や盾や武器が散らばっている。そこを少し掻き分けて、凛音が簡易なテントを立ててくれた。
「はい、水」
凛音が鞄から出してくれたペットボトルの水を俺は飲んだ。
「仮眠をしろ。しかし、忘れるなよここはダンジョン。獣も居れば敵もいる」
「いつでも起きれるようにってこと!」
テントの中に寝袋と毛布を用意して、凛音は明かりを付けっぱなしにしてくれた。
俺はテントに入り横になると、意識が遠退いた。
次に目が覚めた時、目に入ったのは知らない女性だった。テントの中はランプで照らされている。
「凛音、知らない人が!」
俺は慌てて体を起こした。すると更に四人の知らない男女。
テントの入り口が開いて、凛音が顔を出した。
「何を言っているの、彼らはずっと一緒なのに」
「そんなわけ有るか! 凛音やリュセラ、道具たち以外なんて居るわけ……。もしかして」
「そう、私の道具たち!」
凛音は手を上げて全員を見た。
「総員点呼!」
「バーナー!」
最初に目に入った女性だ。穏やかそうな見た目に、耳にピアスを沢山付けている。
「クッカー!」
恰幅のいい男で、つり上がった細目だ。
「寝袋!」
女性だ、やたらに露出が高い服にモコモコのジャケットを羽織っている。
「テント2番!」
メガネを掛けた男の子で、カジュアルな服を着ている。
「あ、ええと杖!」
ローブで、スキンヘッドの男だった。
「ほら、これで分かったでしょ」
「分かるか!」
俺たちはテントから出た。すると入り口でリュセラが椅子に座って本を読んでいた。明かりも付いていない。
「そんなに暗くて見えるのか?」
「エルフは暗視できる。さっき入ってきた奴がいるのも知ってるぞ」
「見張り出来てないじゃん! どんな奴だった?」
「暗くて細かくは分からない、鞄を持っていたくらいか」
「ヤバい、人が増えたせいで判別出来ない。どうすれば」
「大丈夫、私に任せて」
凛音は杖を振って、自分の道具の一人に火を飛ばした。
「なぜ分かった! お前は杖を持っていたはずだ。しかも幾つも」
凛音、拾いすぎ!
「自己紹介ってね言いよどまない。少なくとも自分の名前とかはすぐに答えられる。それに私たちの世界では杖は持っていないことの方が多い」
「バレては仕方ない、悲劇教団助けたかっ隊隊員、アライがお前たちを倒す!」
味方の中に紛れ込んだアライの笑み。その真意は何か? 俺は怪我しているが凛音にリュセラ、鍋にトラバサミ、凛音の道具たちと有利な戦局だ。
緊張と喉の渇きを感じて、俺は鞄から水筒とシナモンを出そうとした。シナモンは俺の一番のお気に入り調味料だ。匂いを嗅ぐと安心する。
だが鞄がないことに気がついた。俺は何時間寝ていた? 奴にどれ程の時間を許したのか?
それはそうと、シナモンが無いことで不安になってきたのだが。
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