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舞踏会会場にて

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シンデレラの住む町の二つ隣の町、この国では首都にあたる町に王家の城がある。
城に到着するまでに一時間程かかったから、十一時には城を出ないとな、と冷静に計算していた。
馬車を降りて、会場に指定されている中央ホールへと向かう。
楽しげな音楽が聞こえてきた。
入り口の閉ざされた扉の横に立っていた燕尾服の男がシンデレラに気付くと、少しばかり頬を染めて固まってしまった。
かと思ったら、我に帰ったのか、急ぎ扉を開けて、
「ようこそ、舞踏会へ。」
とシンデレラを簡単に中に通した。

ーガン見されたから、てっきり警戒されたのかと思った…。
招待状を確認するのかと思っていたけど、良かったのかしらね。
…まあ、お義母さんたちに招待状渡しちゃってたから、確認されなくて良かったけれど。

ホールに入ったシンデレラは辺りを見渡した。
まさに、貴族、といった雰囲気が滲み出ている人たちばかりだった。

ーそのうち、お義母さんたちと合流できるよね。
なんかお腹すいてきちゃった。
一先ず、ごはんごはん。

ホールの一角に料理が置いてある長机があった。
たくさんの料理に、シンデレラは目を輝かせた。
皿をもらい、どの料理からいただこうか悩んでいると、周りがザワついていることに気付いた。
しかも何人かはシンデレラに視線を向けている。

ー何かしら。
庶民ってバレちゃったかな。
ま、別に隠してないけど。
招待状にも、身分は問わない、って書いてあったじゃない。
こんな視線になんて負けないわよ。
美味しいごはんを食べて帰るんだからっ…。

シンデレラは構わず、堂々と料理を選んでいた。
…とそこへ、一人の青年がシンデレラに声をかけてきた。
「私と一緒に一曲いかがでしょうか。」
そう言って、手をさしのべる。
踊りを申し込まれるとは思っていなかったシンデレラは少し驚いた表情をしてしまった。
「ええと、私、踊ったことないので…。」
「大丈夫。私がリードいたします。」
にこっ、と微笑む青年に、シンデレラはたじろぐ。
しかし、この誘いを断って、料理だけを食べて帰ったならば、
「さすが庶民だわ。」
「食い意地は立派でいらっしゃるのね。」
と、馬鹿にされかねない。
『舞踏会』なのだから、やはり一曲くらいは踊るべきだろう、という結論に至ったシンデレラは、青年がさしだした手に、自分の手を乗せた。
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