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「泥棒でもなんでも来やがれってんだ」
御庭番君弐号は日課である、午後九時の定例パトロールをしながら昨日の事を思い出して心の中で言いました。
今まで弐号はご主人様の命令に忠実に従い、ご主人様と奥様の住む屋敷を守っていました。
テニスコート三面ほどの敷地を雨の日も風の日も大切なご主人様の為に守ってきました。
思い返せばもう雇われて十三年。特に事件もなく平和にやってこれました。もともとこの地域は治安が良く、屋敷に侵入してくるのは野良猫や迷い犬くらいだったのです。しかし最近この街に凶悪な強盗が来ているとご主人様が奥様と話しているのをパトロール中に偶然聞いたのでした。
「弐号はよくやっているよ。犬や猫を追っ払ったりしてるじゃないか。今まで何か大きな問題が起きたかい?ちゃんと番ロボとして仕事をしてくれている。」
ご主人様はにこやかにのんきな調子で言いました。こうやって見えない所で評価されることは嬉しいことで、弐号は自分を褒めてくれていることに大喜びしました。
「でもあなた、今度は強盗なのよ?犬や猫じゃないのよ。弐号は攻撃したり捕縛したりなんていうシステムがないの知ってるでしょう?もっと新しいタイプの番ロボにするべきよ。」
奥様はとても現実的な考えを持つ人でした。悪い人ではないのですが、楽天的なご主人様を厳しく叱ることも多々ありました。もちろん弐号もカエルが窓に張り付いていたのを夜中に見つけ、侵入されてはいけないとドタバタ騒ぎ出したところ、「何時だと思ってるの!」と怒られたことがあります。
「大丈夫だよウチは。」
ご主人様は笑いながら奥様に言いました。
確かにご主人様が言うように強盗は、サッカー場くらいの敷地を持ち、塀や門の細部までデザイナーの腕が光る豪邸にばかり忍び込んでいるようで、築二十五年を迎えて元のベージュ色をした外壁がすっかり灰色に薄汚れてきた「ウチ」には侵入することなどないように思われます。
しかしこの街はこの国の中でも裕福な人たちが集まった地域で、その中に属しているウチが絶対に狙われないとも言えません。
「また適当な事言って!」
奥様は声を荒げました。
「どこにそんな根拠があるのよ。弐号じゃ強盗どころか街の不良さえやっつけられないわ。畑に立ってるカカシみたいなもんじゃない。少しはビックリさせれるけどそんなことで強盗が逃げ帰ってくれると思ってるの?何もできない見掛け倒しだってすぐにバレるわよ。変な同情はもう捨ててください。」
いつになく酷いことを言う奥様でした。
「・・・わかったよ。しかし・・・。」
黙り込んだご主人様に奥様は御庭番ロボットのカタログを渡して部屋を出ていきました。
弐号がこっそりとカーテンの隙間から部屋を覗くと、ご主人様はカタログに興味深そうに魅入っていました。
悲しくなり、弐号はパトロールをきりあげて自分の部屋に戻り倒れ込みました。そしてぼんやりと昔の事を思い出していました。
御庭番君弐号は日課である、午後九時の定例パトロールをしながら昨日の事を思い出して心の中で言いました。
今まで弐号はご主人様の命令に忠実に従い、ご主人様と奥様の住む屋敷を守っていました。
テニスコート三面ほどの敷地を雨の日も風の日も大切なご主人様の為に守ってきました。
思い返せばもう雇われて十三年。特に事件もなく平和にやってこれました。もともとこの地域は治安が良く、屋敷に侵入してくるのは野良猫や迷い犬くらいだったのです。しかし最近この街に凶悪な強盗が来ているとご主人様が奥様と話しているのをパトロール中に偶然聞いたのでした。
「弐号はよくやっているよ。犬や猫を追っ払ったりしてるじゃないか。今まで何か大きな問題が起きたかい?ちゃんと番ロボとして仕事をしてくれている。」
ご主人様はにこやかにのんきな調子で言いました。こうやって見えない所で評価されることは嬉しいことで、弐号は自分を褒めてくれていることに大喜びしました。
「でもあなた、今度は強盗なのよ?犬や猫じゃないのよ。弐号は攻撃したり捕縛したりなんていうシステムがないの知ってるでしょう?もっと新しいタイプの番ロボにするべきよ。」
奥様はとても現実的な考えを持つ人でした。悪い人ではないのですが、楽天的なご主人様を厳しく叱ることも多々ありました。もちろん弐号もカエルが窓に張り付いていたのを夜中に見つけ、侵入されてはいけないとドタバタ騒ぎ出したところ、「何時だと思ってるの!」と怒られたことがあります。
「大丈夫だよウチは。」
ご主人様は笑いながら奥様に言いました。
確かにご主人様が言うように強盗は、サッカー場くらいの敷地を持ち、塀や門の細部までデザイナーの腕が光る豪邸にばかり忍び込んでいるようで、築二十五年を迎えて元のベージュ色をした外壁がすっかり灰色に薄汚れてきた「ウチ」には侵入することなどないように思われます。
しかしこの街はこの国の中でも裕福な人たちが集まった地域で、その中に属しているウチが絶対に狙われないとも言えません。
「また適当な事言って!」
奥様は声を荒げました。
「どこにそんな根拠があるのよ。弐号じゃ強盗どころか街の不良さえやっつけられないわ。畑に立ってるカカシみたいなもんじゃない。少しはビックリさせれるけどそんなことで強盗が逃げ帰ってくれると思ってるの?何もできない見掛け倒しだってすぐにバレるわよ。変な同情はもう捨ててください。」
いつになく酷いことを言う奥様でした。
「・・・わかったよ。しかし・・・。」
黙り込んだご主人様に奥様は御庭番ロボットのカタログを渡して部屋を出ていきました。
弐号がこっそりとカーテンの隙間から部屋を覗くと、ご主人様はカタログに興味深そうに魅入っていました。
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