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第3章「嘘でも、真実だと信じさせていて欲しかった」
3.3 無自覚
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(トウコの様子が変だ)
自室に篭もったまま出てこないトウコ。部屋の前の扉に立ち、声をかけ、ノックをするが返事はない。
顔ぶれは異なれど、これまで食事は毎食リュイ自身とは欠かさず摂っていたのに、それさえもなくなった。
「トウコ、聞こえてる?冷えても美味しい物持ってきたから置いておく。………明日は温かいご飯を一緒に食べませんか」
<素質なし>と見なされているトウコのことを一番見下していたのは、リュイたち男よりも、異世界から召喚された女たちのほうが酷く、あからさまだった。
最初は召喚されたばかりで戸惑う女たちは、仲間だと共感し、孤独な寂しさからトウコと仲良くなる。
そうして生活していくうちに自分自身の<素質>が発覚すると、男たちから求愛を受けることで世慣れしていく。その結果、トウコが<素質なし>であると理解すると、この世界の思考に染まった彼女たちは次第にトウコに対して素っ気なくなったり、馬鹿にしたり、召使いかなにかのように扱ったりし始める。
トウコが召喚されてからそういったことが何度も繰り返されると、トウコも学習して召喚陣のある塔だけでなく、女たちにも近づかなくなった。簡単に会釈だけをして、あとはただ黙っている。同年代の娘から母親と同じくらいの女性、さらに義務教育中らしい少女からも<素質なし>として不当に扱われればさもありなん。
リュイに良いとこを見せようとする彼女たちの性質を知るトウコは、リュイがトウコの近くにいる時だけ女性たちの前に姿を現す。リュイ自身の<素質>も相まって、彼女たちはリュイがそばにいればトウコのことは思考から消え去り、興味を失う。
(けど、トウコは彼女たちといるよりも、ぼくが他の女と話しているときのほうが酷い顔をしている)
気づいていながら、リュイはあえて放置した。
トウコの黒い瞳に宿る熱が、煩わしかった。リュイが自ら助けてしまえば、火にくべられた木炭のようにより激しい熱がトウコの瞳に灯るのではないかと思ったから。
かといって、トウコが自分自身の殻に閉じこもるような生活を送るのも見過ごせなかった。
ただ一言、助けてと言ってくれれば【管理者】としてトウコを助けざるを得ない。トウコが助けを口にするのを待っていたのに、トウコは何も言わなかった。
頼ってもらえないことが、リュイにはどうしてか歯がゆく感じた。
リュイは召喚されたばかりの女の世話を優先的に見ながらも、トウコの様子を気にかけ、なるべく他の女性たちが良い男性と子どもを作れるように斡旋して。 一日の終わりには、自室にトウコを招いて、彼女の話を聞いたり、その日あった出来事を面白おかしく話して気を紛らわせようとした。
あの頃と違って、今はリュイとトウコしかこの塔にいない。
トウコは誰に気兼ねする必要もないのに、レイシと会ってからリュイとの接触をほとんど断つようになってまった。
食事はトウコの毛玉が取りに来るし、リュイの部屋でお喋りでもしないかと誘えば断られるし、可能な限り部屋から出ようとしない。お風呂は毛玉に様子を偵察させているのか、リュイが完全に寝入ってからシャワーだけを浴びているようだった。
【管理者】として心配になってきたリュイは、自身の真白の毛玉に様子を窺わせれば、うわごとのようにレイシの名を呟いて物憂げな溜め息を吐いている。リュイには理解出来ない恋煩いのようなものかと思うが、どうにも放っておけず。マスターキーを使って強行突破でもしようかと悩んでいると、背後から肩を叩かれた。
「――――っ、タクト・サクライ=アインヘルツ。どうやってここに。ぼくは今日貴方の屋敷への入場を許可した覚えはありませんが」
殴りかかる勢いで振り向けば、見知った顔だったので寸前で踏みとどまる。
母親に似た甘い顔立ちの男が驚いたように目を丸くして、両手をあげて敵意をないことを示した。
「俺とリュイの仲じゃん。親父に引き続いて、俺とも同級生だっただろ?あと屋敷に入れたのはその親父のおかげ」
愛想笑いを浮かべてタクトが説明する。
親父。『前の記録』に思い当たる節があり、リュイは管理者として溜め息を吐いた。
「貴方とぼくは本当にただの同級生というのに。……にしても、貴方の父親の<素質>は本当に厄介だ」
「あんたも親父の恩恵を結構あずかってたって、本人から聞いてるけど?」
面白がるようにタクトが桜色の瞳を細める。
「『前の』ぼく、がね。それよりトウコが部屋からほとんど出て来なくなった。レイシ・マックスウェルとのデートから帰って来てから様子がおかしいんだ」
タクトの生家であるアインヘルツは顔が広い。
トウコの様子すら耳に入っていそうだとは思いながら、リュイはタクトに相談する。話しかけながら、タクトの侵入を受け、もっと屋敷の警備を強化する必要があるなと考えながら。少なくとも自分のような精神系の<素質>だけでは、悪意がないとはいえ<素質>による侵入が容易く行われてしまう。
なんとはなしにトウコの自室のドアを見つめる。
「それフリーの俺に相談していいわけ?つか」
タクトが女性の好みに偏りはあるし、リュイから見ても軽薄な男ではあるが、トウコがそれなりに心を開いているようだし、悪い人間ではない。
「何ですか」
「いや、レイシ・マックスウェルって……。あ、おいおい、そっちこそ何?まさかトーコがあんたの後ろを追っかけなくなったとかそういう話?」
心当たりがあるのか、半笑いでタクトに聞き返される。
「語弊がありそうだけど」
その通りだったので頷く。
後ろを追っかけるという表現に語弊を感じるが、この世界に召喚された女性はすべからく不安を抱えているので、生まれたての雛のように自分の後ろをついてくることはまあ珍しくない。
リュイからすると控えめな性格のトウコにつきまとわれるのは、積極的な女性に比べると別に苦痛でもなんでもない。トウコを置いて、他の女と話している時に、傷ついた顔をされることは煩わしいが。
「やー、それカンペキにそいつの<素質>のせいだろ。親父の卒アルにそいつの写真載ってるの見たことあるし、『前のあんた』との同級生で、トーコにわざわざ絡んできたっていうんなら―――大方、『前のあんた』絡みっしょ」
『前の自分』絡みと指摘され、リュイは腕を組んで考え込む。
『記録』を遡る。
「ああ」
同級生だからと安易にトウコに薦めてしまったが、失念していた。『前の自分』の愚かな所業を。
「言われて考えてみると、ぼくはレイシ・マックスウェルに、やらかしてるな。
ですが、その関係でトウコを?
―――トウコはレイシ・マックスウェルが期待するような存在ではないですよ」
『前の自分』が最後にレイシ・マックスウェルに投げかけられた言葉を思い出し、呆れてしまう。
「いや、そーゆーことだからだろ?
じゃなきゃ<素質なし>に興味持つ男とかそうそういねーし。……あ、日本人贔屓の俺以外はな!
大体、女嫌いのリュイが一年も同じ女をそばに置いてるっているのが貴重なんだ。そいつも勘違いするだろ。
まあ、トウコの話をするあんたの顔みてたら、そんな勘違いできないだろうけどなー。鏡後で見てみろよ。トウコの話をする時、あんた結構難しい顔してっから」
「見ない。トウコの世話が焼けるのは当然だから。
ああ、でも困ったな。本当にタクトの予想通りとしたら……【管理者】としてはどうするのが正解かな」
レイシ・マックスウェルの<素質>はこころにはたらくもの。
<認識を置換する素質>―――Aだと認識しているものを、Bと認識させる。この<素質>を活かして、尋問において自白の担当をしている。レイシ自身と話しているのではなく、尋問対象の仲間と認識させて供述を誘導させている。
ならば、トウコは。
「所詮、貴女もほかの女と一緒だったってことですか」
置換されたのはリュイへの恋心。
トウコの己への好意を理解し、溜め息が零れる。
『前の自分』の不始末で、トウコの心が踏みにじられているのは、【管理者】として見過ごせない。
それだけだ。
トウコの自分への対応が普段と違うことが面白くないなんてことはない。そう、ない。
<素質>が原因とわかってすっきりしたが、トウコに失望する自分もいる。
何故失望しているのか、分からない。思いがけない自分の感情に首を傾げ、結論を出す。
「なるほど、これが子離れできない親の気持ちか」
「いやいや、さすがにそれは違うだろー。トーコが不憫すぎるっしょ」
思い至った感情の名を告げれば、タクトに呆れたように肩を竦められた。
無視して、トウコをなんとかしなければと考える。<素質を無効化させる素質>の持ち主はリュイの知る限りまだ発見されていない。時間経過で解除されるか、レイシが飽きて解除するか。そのどちらかしかないことに思い当たり、自分自身の無力さに苛立つ。
気が進まないが、【トウコをもっと自分に好かせれば】と<素質>を意識するも。
「それは嫌だな」
無意識のうちに呟いていた。
「は?なにが」
「いえ、なにも」
脈絡のない言葉に、タクトに聞き返されるが、両断する。
リュイは首を横に振り、【管理者】としての判断を下すことにする。
「トウコに危害が加えられるまでは、静観する。
危害を確認次第、ぼくの権限でレイシ・マックスウェルに制裁を加える」
そう言ってリュイは己の白い毛玉を、トウコの扉の下の隙間から押し込むようにして監視のために送り込む。
「静観ねえ。ふうん?ま、イイんじゃね。そのほうが面白くなる気もするな」
「―――タクト。貴方を楽しませるためにぼくは静観するわけでは」
「はいはいはい。知ってる知ってる。乗りかかった船だし、俺のほうからもちょこっと注意しといてやるよ。
トーコが何か困ったことになってれば、手助けしてやる。な?名案っしょ」
「………そうだな。それくらいなら」
タクトの軽さに腑に落ちないものを感じながらも、不承不承リュイは頷いた。
どうかトウコが傷つく結果にならないようにと祈るような気持ちで、トウコの部屋の扉を見つめる。
そしてこの時の安請け合いのせいで、タクトの策略によりリュイはトウコのとんでもない行動に遭うことを知らない。
自室に篭もったまま出てこないトウコ。部屋の前の扉に立ち、声をかけ、ノックをするが返事はない。
顔ぶれは異なれど、これまで食事は毎食リュイ自身とは欠かさず摂っていたのに、それさえもなくなった。
「トウコ、聞こえてる?冷えても美味しい物持ってきたから置いておく。………明日は温かいご飯を一緒に食べませんか」
<素質なし>と見なされているトウコのことを一番見下していたのは、リュイたち男よりも、異世界から召喚された女たちのほうが酷く、あからさまだった。
最初は召喚されたばかりで戸惑う女たちは、仲間だと共感し、孤独な寂しさからトウコと仲良くなる。
そうして生活していくうちに自分自身の<素質>が発覚すると、男たちから求愛を受けることで世慣れしていく。その結果、トウコが<素質なし>であると理解すると、この世界の思考に染まった彼女たちは次第にトウコに対して素っ気なくなったり、馬鹿にしたり、召使いかなにかのように扱ったりし始める。
トウコが召喚されてからそういったことが何度も繰り返されると、トウコも学習して召喚陣のある塔だけでなく、女たちにも近づかなくなった。簡単に会釈だけをして、あとはただ黙っている。同年代の娘から母親と同じくらいの女性、さらに義務教育中らしい少女からも<素質なし>として不当に扱われればさもありなん。
リュイに良いとこを見せようとする彼女たちの性質を知るトウコは、リュイがトウコの近くにいる時だけ女性たちの前に姿を現す。リュイ自身の<素質>も相まって、彼女たちはリュイがそばにいればトウコのことは思考から消え去り、興味を失う。
(けど、トウコは彼女たちといるよりも、ぼくが他の女と話しているときのほうが酷い顔をしている)
気づいていながら、リュイはあえて放置した。
トウコの黒い瞳に宿る熱が、煩わしかった。リュイが自ら助けてしまえば、火にくべられた木炭のようにより激しい熱がトウコの瞳に灯るのではないかと思ったから。
かといって、トウコが自分自身の殻に閉じこもるような生活を送るのも見過ごせなかった。
ただ一言、助けてと言ってくれれば【管理者】としてトウコを助けざるを得ない。トウコが助けを口にするのを待っていたのに、トウコは何も言わなかった。
頼ってもらえないことが、リュイにはどうしてか歯がゆく感じた。
リュイは召喚されたばかりの女の世話を優先的に見ながらも、トウコの様子を気にかけ、なるべく他の女性たちが良い男性と子どもを作れるように斡旋して。 一日の終わりには、自室にトウコを招いて、彼女の話を聞いたり、その日あった出来事を面白おかしく話して気を紛らわせようとした。
あの頃と違って、今はリュイとトウコしかこの塔にいない。
トウコは誰に気兼ねする必要もないのに、レイシと会ってからリュイとの接触をほとんど断つようになってまった。
食事はトウコの毛玉が取りに来るし、リュイの部屋でお喋りでもしないかと誘えば断られるし、可能な限り部屋から出ようとしない。お風呂は毛玉に様子を偵察させているのか、リュイが完全に寝入ってからシャワーだけを浴びているようだった。
【管理者】として心配になってきたリュイは、自身の真白の毛玉に様子を窺わせれば、うわごとのようにレイシの名を呟いて物憂げな溜め息を吐いている。リュイには理解出来ない恋煩いのようなものかと思うが、どうにも放っておけず。マスターキーを使って強行突破でもしようかと悩んでいると、背後から肩を叩かれた。
「――――っ、タクト・サクライ=アインヘルツ。どうやってここに。ぼくは今日貴方の屋敷への入場を許可した覚えはありませんが」
殴りかかる勢いで振り向けば、見知った顔だったので寸前で踏みとどまる。
母親に似た甘い顔立ちの男が驚いたように目を丸くして、両手をあげて敵意をないことを示した。
「俺とリュイの仲じゃん。親父に引き続いて、俺とも同級生だっただろ?あと屋敷に入れたのはその親父のおかげ」
愛想笑いを浮かべてタクトが説明する。
親父。『前の記録』に思い当たる節があり、リュイは管理者として溜め息を吐いた。
「貴方とぼくは本当にただの同級生というのに。……にしても、貴方の父親の<素質>は本当に厄介だ」
「あんたも親父の恩恵を結構あずかってたって、本人から聞いてるけど?」
面白がるようにタクトが桜色の瞳を細める。
「『前の』ぼく、がね。それよりトウコが部屋からほとんど出て来なくなった。レイシ・マックスウェルとのデートから帰って来てから様子がおかしいんだ」
タクトの生家であるアインヘルツは顔が広い。
トウコの様子すら耳に入っていそうだとは思いながら、リュイはタクトに相談する。話しかけながら、タクトの侵入を受け、もっと屋敷の警備を強化する必要があるなと考えながら。少なくとも自分のような精神系の<素質>だけでは、悪意がないとはいえ<素質>による侵入が容易く行われてしまう。
なんとはなしにトウコの自室のドアを見つめる。
「それフリーの俺に相談していいわけ?つか」
タクトが女性の好みに偏りはあるし、リュイから見ても軽薄な男ではあるが、トウコがそれなりに心を開いているようだし、悪い人間ではない。
「何ですか」
「いや、レイシ・マックスウェルって……。あ、おいおい、そっちこそ何?まさかトーコがあんたの後ろを追っかけなくなったとかそういう話?」
心当たりがあるのか、半笑いでタクトに聞き返される。
「語弊がありそうだけど」
その通りだったので頷く。
後ろを追っかけるという表現に語弊を感じるが、この世界に召喚された女性はすべからく不安を抱えているので、生まれたての雛のように自分の後ろをついてくることはまあ珍しくない。
リュイからすると控えめな性格のトウコにつきまとわれるのは、積極的な女性に比べると別に苦痛でもなんでもない。トウコを置いて、他の女と話している時に、傷ついた顔をされることは煩わしいが。
「やー、それカンペキにそいつの<素質>のせいだろ。親父の卒アルにそいつの写真載ってるの見たことあるし、『前のあんた』との同級生で、トーコにわざわざ絡んできたっていうんなら―――大方、『前のあんた』絡みっしょ」
『前の自分』絡みと指摘され、リュイは腕を組んで考え込む。
『記録』を遡る。
「ああ」
同級生だからと安易にトウコに薦めてしまったが、失念していた。『前の自分』の愚かな所業を。
「言われて考えてみると、ぼくはレイシ・マックスウェルに、やらかしてるな。
ですが、その関係でトウコを?
―――トウコはレイシ・マックスウェルが期待するような存在ではないですよ」
『前の自分』が最後にレイシ・マックスウェルに投げかけられた言葉を思い出し、呆れてしまう。
「いや、そーゆーことだからだろ?
じゃなきゃ<素質なし>に興味持つ男とかそうそういねーし。……あ、日本人贔屓の俺以外はな!
大体、女嫌いのリュイが一年も同じ女をそばに置いてるっているのが貴重なんだ。そいつも勘違いするだろ。
まあ、トウコの話をするあんたの顔みてたら、そんな勘違いできないだろうけどなー。鏡後で見てみろよ。トウコの話をする時、あんた結構難しい顔してっから」
「見ない。トウコの世話が焼けるのは当然だから。
ああ、でも困ったな。本当にタクトの予想通りとしたら……【管理者】としてはどうするのが正解かな」
レイシ・マックスウェルの<素質>はこころにはたらくもの。
<認識を置換する素質>―――Aだと認識しているものを、Bと認識させる。この<素質>を活かして、尋問において自白の担当をしている。レイシ自身と話しているのではなく、尋問対象の仲間と認識させて供述を誘導させている。
ならば、トウコは。
「所詮、貴女もほかの女と一緒だったってことですか」
置換されたのはリュイへの恋心。
トウコの己への好意を理解し、溜め息が零れる。
『前の自分』の不始末で、トウコの心が踏みにじられているのは、【管理者】として見過ごせない。
それだけだ。
トウコの自分への対応が普段と違うことが面白くないなんてことはない。そう、ない。
<素質>が原因とわかってすっきりしたが、トウコに失望する自分もいる。
何故失望しているのか、分からない。思いがけない自分の感情に首を傾げ、結論を出す。
「なるほど、これが子離れできない親の気持ちか」
「いやいや、さすがにそれは違うだろー。トーコが不憫すぎるっしょ」
思い至った感情の名を告げれば、タクトに呆れたように肩を竦められた。
無視して、トウコをなんとかしなければと考える。<素質を無効化させる素質>の持ち主はリュイの知る限りまだ発見されていない。時間経過で解除されるか、レイシが飽きて解除するか。そのどちらかしかないことに思い当たり、自分自身の無力さに苛立つ。
気が進まないが、【トウコをもっと自分に好かせれば】と<素質>を意識するも。
「それは嫌だな」
無意識のうちに呟いていた。
「は?なにが」
「いえ、なにも」
脈絡のない言葉に、タクトに聞き返されるが、両断する。
リュイは首を横に振り、【管理者】としての判断を下すことにする。
「トウコに危害が加えられるまでは、静観する。
危害を確認次第、ぼくの権限でレイシ・マックスウェルに制裁を加える」
そう言ってリュイは己の白い毛玉を、トウコの扉の下の隙間から押し込むようにして監視のために送り込む。
「静観ねえ。ふうん?ま、イイんじゃね。そのほうが面白くなる気もするな」
「―――タクト。貴方を楽しませるためにぼくは静観するわけでは」
「はいはいはい。知ってる知ってる。乗りかかった船だし、俺のほうからもちょこっと注意しといてやるよ。
トーコが何か困ったことになってれば、手助けしてやる。な?名案っしょ」
「………そうだな。それくらいなら」
タクトの軽さに腑に落ちないものを感じながらも、不承不承リュイは頷いた。
どうかトウコが傷つく結果にならないようにと祈るような気持ちで、トウコの部屋の扉を見つめる。
そしてこの時の安請け合いのせいで、タクトの策略によりリュイはトウコのとんでもない行動に遭うことを知らない。
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