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トコトコレース!最後の坂、勝者は誰だ?
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「さあ、皆さん!いよいよ今年の目玉レースが始まります!」
司会者の声が広場に響き渡り、観客から期待に満ちた歓声が上がる。
「コースは全長100メートル!最後の坂が勝負のカギになるか、それとも予想外の展開が待っているのか!」
司会:「トコトコたち、準備はいいかなー?」
スタートラインに並んだ魔物たちは、走る気のない4番や張り切りすぎた3番など、
すでに個性が全開だ。
司会:「……まあ、やる気がある子も、ない子もいますが、皆さん、応援よろしくお願いします!」
3人はそれぞれの推しに声をかける。
僕「頑張れ、2番!絶対勝てよー!」
姉さん「3番!全力で行きなさい!」
カトリーヌ「5番!お前が一番だ、見せてやれ!」
観客たちの声も続く。
「負けるなー!」「走れ走れー!」「全力出せよー!」
次第に声援が弱まり、場の空気が静まり返る。鐘を鳴らす瞬間を誰もが息を止めて待っていた。
「5! 4! 3! 2! 1!」
カァン!!
高らかに響く鐘の音。
それと同時に、トコトコたちが――
……ん? 走らない!?
2番、のそのそ歩き。
4番、もぐもぐ草タイム継続中。
観客の歓声が響き渡る。
熱気は十分、なのにトコトコたちはマイペース。
(いや、もう動いてるけど……レースってこういうものなのか?)
司会:「スタート! 3番がダッシュ!ぶっちぎりで飛び出した!」
「1番はマイペース!安定感抜群!」
「そして2番……あれ、止まってる!?……おおっと、急にスイッチ入ったー!!」
「さらに4番……いやいや、違う違う!コースじゃなくて草を食べてます!!」
「のんびり屋すぎるぞ4番!観客、大爆笑!」
「さあ、最後は5番!堂々と後方から進む!」
「……おっと、周囲が避けた!? 5番、進むたびに隊列が乱れる!」
僕は司会の声を聞きながら、ふと首をかしげた。
(あれ?実況してるの司会じゃん……?)
そう思いつつも、再び視線をコースに戻す。トコトコたちの動きに歓声が高まっていく。
司会:「先頭は現在、張り切りすぎの3番!!」
「ぶっちぎりだが……おいおい、そのペース、大丈夫か!?」
「その後ろ、安定の1番!そして……おっと!?急にスイッチが入った2番が加速!!」
「今、一気に1番に並んだ!いや、抜くのか!?抜けるのか!?」
「4番は……依然としてマイペース!草、むしゃむしゃ!満喫中!」
「そして5番!!その圧倒的存在感に後続がビビった!?ジワジワ距離が開いていく!!」
姉さんが声を張り上げる。
「3番!そのまま走り抜けなさい!いいわ、その調子よ!」
カトリーヌも負けじと拳を突き上げた。
「そうだ!それでいい!5番、お前は貫禄を見せつけてやれ!」
僕は思わず目を丸くした。
「え!?まさかの伏兵だった!?こんなの予想外だよ!」
司会:「さあ、最初の坂に突入!!」
「先頭3番、息が上がってきた!ヤバい、張り切りすぎたか!?」
「ペースがガクッと落ちている!!」
「何やってんのよ!! 後でたたっ斬るわよ!!」
姉さんの怒号が響いた。
(こっわ……。)
思わず背筋がピシッと伸びる。
司会:「おっと!? 2番が突如スパート!!」
「一気に加速!! ええっ!? 坂を駆け上がる!!」
「どうした2番!? ついに本気か!? 観客、大どよめき!!」
僕は小さな声で呟く。
「さすが僕に似てるね……。」
すかさずカトリーヌが突っ込んだ。
「似てねえよ!」
司会:「1番は安定したペース!順調に坂を越えていく!やはり安定感が強みか!」
「4番は……ああっと、また草ァ!!!」
「坂の途中で立ち止まり、もぐもぐ……まるでピクニック!!」
「しかし!! 他の魔物が横を通ると……」
「おっと!? 4番、慌ててダッシュ!! 急に仕事モード!!」
カトリーヌ:「おい!5番はどこいったんだ!」
苛立った声が響く。
その視線の先――
5番、堂々とコース中央を闊歩。まるで王様気取り。
カトリーヌ:「ったく、余裕たっぷりで歩いてんじゃねえよ!!!」
――ピタッ。
5番、急停止。
観客「!?」「えっ、なんで止まった!?」「指示聞いてんのか!?」
騒然とする会場の中、5番は静かに振り向く。
そこには――カトリーヌ。
目が合った瞬間、彼女の瞳がギラリと光る。
「動けよ……食っちまうぞ!!」
(……もう、やだ……)
5番の顔が引きつり、観客たちは一瞬の静寂の後――
「ギャハハハ!!」「本気の目だぞ!」「やだ、食べられちゃうわ!!」
会場、大爆笑。
5番の足は、もう二度と勝手に止まることはなかった……。
司会:「さあ、レースは中盤の平坦コースへ突入! 最初の坂でトコトコたちが次々と失速する中――1番、ブレない!堂々のリード!」
「おっと……⁉ 5番、後方から猛追!! その圧巻の走りに、観客も思わず息をのむ……!!」
「そして2番……っ⁉ うわぁぁ、ガクッとペースダウン!! だが…… 止まらない!のんびり歩き出したァ!!
「……結局、ちょっとしか頑張ってないじゃん……やる気あるのか!?ないのか!?どっちなんだよ!! 」
僕は思わずぼやき、ため息をついた。
司会:「さあ、観客の声援がますますヒートアップ!! どのトコトコがこの平坦コースで抜け出すのか!? もう目が離せません!!」
「ここで実況のエリオットさんに聞いてみましょう!実況のエリオットさーーん!!」
エリオット:「2番!!その走りじゃ、お前をバラして毛皮にしちまうぞ!! もっと走れ!!俺の全財産がかかってんだァァ!!!」
(えぇぇ……物騒すぎるってば……!!)
僕は思わず頭を抱えた。
「おっと!!実況も白熱してまいりました!! どうやら毛皮になる覚悟が求められているようです!!」
「皆さん、賭けは節度を守って楽しみましょう!!」
観客席は笑いの渦!まるで祭りそのものが弾けるように、歓声が響き渡る。
「はぁ……どうしてこの村って、こういう人ばっかりなのかしら……」
姉さんが呆れたようにぼやくと、隣のカトリーヌが肩をすくめてニッと笑う。
「変でも面白けりゃいいだろ?祭りってのはそういうもんさ!」
司会:「現在、1番がトップをキープ!安定したペースで逃げていますが、5番が後方からじわじわと追い上げています!」
「一方、3番は失速、2番はのんびりモードに戻り、4番は草を食べながらも意外と健闘中!波乱の展開に目が離せません!」
僕は腕を組みながら小さくため息をついた。
「やっぱり……安定した1番に賭けておくべきだったかな。」
カトリーヌ、即座に鼻で笑う。
「そんなの面白くねえだろ!!」
「賭けってのは――こういう予測不能な展開を楽しむもんだ!!」
勢いよく語るカトリーヌ。
だが、姉さんが手をひらひらと振る。
「あー、はいはい、わかったわかった。」
「それより、ほら見て。5番がトップに出そうよ。」
「マジか!?」
姉さんの指さす先――5番、堂々と疾走!!
カトリーヌ、ガタッと立ち上がる!
「ほら見ろ!! やっぱりアタシの見る目は正しかった!!」
「強いやつが勝つに決まってんだろ!!」
僕、思わず大声で叫ぶ。
「おい、2番!! そこで止まるな!! 本気出せよ!!」
司会:「さあ、王者の風格!! 5番が堂々トップ独走!!」
「その歩みに迷いなし!! まるで戦場を駆ける覇王!!」
観客:「5番!! お前が最強だあああ!!!」
「行け行け行けえええ!!」
「……2番は、のんびりしてる場合じゃないだろ……。」
会場は完全にヒートアップ!!
カトリーヌ、拳を振り上げ、姉さんは前のめり!!
司会:「さあ!! これが最後の坂だああ!!」
「運命の瞬間が、今、訪れる!!!」
「この激戦、制するのは――誰だ!!?」
司会:「トップは5番!!堂々と駆ける!?いや、歩くだ!!」
「この貫禄!! 他の追随を許さない!!」
「いいぞ、5番!お前がナンバーワンだ!」
カトリーヌが声を張り上げる。
司会:「1番、安定したペース……だが!!」
「坂の傾斜がジワジワ効いてきた!! スピードが落ち始める!!」
司会:「おっとぉ!! ここで2番が――突然の爆速!!!」
「さっきまでやる気ゼロだった2番、まさかの覚醒!!」
「いきなりエンジン全開!! ここでまさかの逆襲か!!?」
「よっしゃー!やれるじゃないか、行けーっ!」
僕は思わず身を乗り出して叫んだ。
司会:「おっとぉ!? 3番、大失速!!」
「張り切りすぎたツケが回ったか!? 足が止まる!いや、止まるどころか下がってる!!!」
「これは……もはや後退モード突入か!!?」
「まだ終わってないわ!! 諦めないで!!!」
――ガタァン!!
姉さん、突如として立ち上がる!!
「えっ!? 姉さん!?」
(何その全力応援!? まるで親みたいなテンション!!)
「うわっ!? ちょ、なんだよ急に!!?」
「マジでどうした!? なんか降りてきたのか!?」
カトリーヌ、怪訝そうに眉をひそめ、半歩後ずさる。
(さすがにこれは引くわ……って顔してる!!)
司会:「そして4番……おおっと、また草ァァァ!!!」
「坂の途中で、まるで休憩モード!!!」
「しかし! 他の魔物が横を駆け抜けると……」
「うわっ!? 4番、慌ててダッシュ!! 何事もなかったかのように再スタート!!!」
司会:「さぁ、5番!! ゆっくりながらも……他の魔物をジワジワ引き離す!!!」
「この堂々たる姿!! まるで王の凱旋!! 観客、大歓声!!」
カトリーヌ:「そうだ!! それでいい!!! 他の奴らを黙らせてやれぇぇ!!!」
司会:「坂の傾斜が魔物たちの体力を削る!!」
「果たしてこの死闘を制するのは――誰だああああ!!?」
姉さん、突然コース横へ猛ダッシュ!!
その目は本気……いや、もはや命がけ!!
「ミレイヌ!! 私を見なさい!!」
「ここで頑張らないでどうするのよ!!!」
司会:「ええっ!? ちょ、待ってください!!」
「観客席から……謎の叫び声!! しかも、名前までつけてるぞ!??」
司会:「まさか、ここまで本気の応援が飛び出すとは!! 観客も困惑!!」
しかし姉さん、さらにヒートアップ!!
「走れえええ!! もっと気合を入れなさい!!!」
司会:「熱すぎる声援!! これ、魔物に届くのか!? いや、届かないだろ!!」
そして――姉さん、突然ジュースを掴んだ。
観客:「あっ、それ…俺のジュース……」
一瞬の静寂。
「水分補給よおおおお!!!!」
――ブンッ!!!
司会:「いや投げたああああああ!!!」
「投げられたのは……ただのジュース!!」
「観客、呆然!!!おじさん困惑!!!」
観客 「……え、ジュース?」
「いやいや、それで立つかよ!!」
「……でも、応援の熱意は感じるな……」
姉さん、ついに涙!!
「立って!!! 立つのよおおおお!! ミレイヌゥゥゥゥ!!!!!」
司会:「まるでドラマのような展開!!」
「これはもう応援じゃない! 執念だああああ!!!」
僕、全力ダッシュ!!
「姉さんやめてえええ!!! 恥ずかしいってば!!!」
カトリーヌも爆笑しながら追いかける!
「おいおい、それはさすがにやりすぎだろぉぉぉ!!!」
僕たち、全力で姉さんを確保!! 強制送還!!!
司会:「ソフィー様、退場!!!!!」
「いや違う!!! 家族に連行されるぅぅぅ!!!!!」
周囲の観客がざわつく。
観客:「ソフィー様、何やってんだ!?」
「熱すぎる……でも、なんか応援したくなるな!」
「わかる……私も少し涙ぐんじゃったよ。」
「いや、泣くとこかよ!」
司会:「観客席もドラマチックに盛り上がっています!!」
「……さて、実況のエリオットさん……えーっと……」
「あ、完全に賭けに夢中ですね!!」
「実況する気ゼロなので、皆さん! ここからは私が続けます!!!」
(ちょっ、それ言っちゃう!? エリオットさん、バッサリ切り捨てられてるじゃん!!)
エリオット、頭を掻きながらコイン袋を握りしめる。
観客「ぷっ……」「ガチすぎだろ……」
場の空気がふっと緩み、観客席にクスクスと笑いが広がった。
司会:「さああああ!! 驚きの展開だ!!」
「なんと!! 2番、3番、5番が……並んだぁぁぁぁ!!!」
「まさかの横一線!! 勝負の行方が、一気に読めなくなった!!!」
観客「うおおおおおお!!!」「どっちが抜ける!?」
観客席の熱気が一気に爆発する。
「えっ、ちょっ、これ……どういうこと!? いつの間にこんな接戦に!?」
僕は思わず立ち上がる!!
胸が高鳴る!!
視線は、猛スピードで競り合う魔物たちに釘付け!!
「よっしゃあ!! ここからが本当の勝負だぁぁ!!!」
カトリーヌが叫ぶ。
バシィィィィ!!!
「ぐっ!!??」
僕が呻く。
肩に衝撃!! カトリーヌの拳が炸裂!!
カトリーヌ、興奮した目をギラつかせながら叫ぶ!!
「いいぞぉぉ!! やれぇぇぇ!!!」
司会:「これは大波乱の展開!! さあ、勝つのは誰だぁぁぁ!!?」
「ミレイヌ……やっとここまで来たのね……!!」
「あと少し! 頑張りなさい!!!」
姉さん、前のめり!! 息を詰め、拳を握りしめる!!
コース上――
3匹のトコトコが並ぶ!!!
土埃が舞う!!!
観客「踏ん張れええええ!!!」
「スピード上げろぉぉぉ!!!」
「勝つのはお前だああああ!!!」
熱気MAX!! 興奮の渦!!
コース周辺は爆発寸前!!
司会:「さああああ!!! ついに最後の直線!!!」
「ここが……勝負の決めどころだああああ!!!!!」
会場の視線が一点に集中する――
その瞬間……
2番、急加速!!!
司会:「おおおおっと!? 2番が一気に伸びる!!!?」
「これは……なんだこのスピード!!?」
「今までののんびりペースは何だったんだあああ!!?」
観客「えっ!?」「ウソだろ!?」「マジで!?」
僕:「……えっ?」
目の前の光景が、信じられなかった。
――ほんの数秒前まで。
2番は、のんびり歩いていたはずなのに。
「なんだよ、あのスピード!!?」
隣でカトリーヌが身を乗り出す!!
焦りと興奮が入り混じる表情!!
「うそ……まさか、本気を出したの!?」
観客「いけえええええ!!!」「これはヤバい!!!」「マジで勝つぞ!!?」
会場の熱気、爆発寸前!!
僕、思わず立ち上がる!!
目の前の光景に、釘付け!!
「ミレイヌは!? ミレイヌォォォ!!?」
――絶叫!!!
その声が、さらに会場のボルテージを引き上げる!!
司会:「後ろから5番も追い上げる!! しかし!!!」
「2番!! 圧倒的なスピード!!! 差が開く!!! 開くゥゥゥ!!!!」
実況の声が最高潮に達する!!
「やばい!! なんとかしてくれよ!!!」
僕は必死に叫んだ。
その瞬間――
バンッ!!!
カトリーヌ、席を蹴るように立ち上がる!!!!
「キャッ!?」
姉さんが驚いて声を上げる!!
――しかし、カトリーヌは迷わない!!!
ダッッッ!!!!
猛ダッシュ!!!!
コースへ向かって一直線!!!!
「今度は何する気だよおおお!!?」
僕は半ば呆れつつ、思わず叫んだ。
観客「えっ!?」「おいおい、マジか!!?」
カトリーヌ、ゴール地点の後ろに立つ!!!
司会:「なんと……!?」
――空気が、一瞬で止まった。
会場が凍りつく。
まるで時間が止まったかのような静寂。
観客の視線が、一斉にゴール後ろへ向かう。
司会:「これは……!?」
ざわめきが広がる。
しかし、誰もが言葉を失っている。
司会:「――仁王立ち。」
「仁王立ちです!!!!」
「ゴール後ろに……カトリーヌさんが……仁王立ちをしています!!!!!」
会場、「…………え?」
その姿は、圧倒的だった。
ただ立つだけで、場の空気を完全に塗り替える。
威圧感。支配感。絶対的な存在感。
司会:「まるで……炎の化身!!!」
「いや、もはや“災厄”!! その存在感、すべてを飲み込む!!!」
実況の興奮が会場に響く!!!
観客、ざわめく!!!
司会:「完全に支配されている!!! 圧倒的なオーラ!!! 魔物たちが……止まったぁぁぁ!!!!」
観客:「おい、どけぇぇぇ!!!」
「ゴールが見えねぇぇぇ!!!」
「何してんだよ!!! レースだぞ!!!?」
「……いや、女神が降臨したぞ!!!」
怒号!! 笑い!! カオス!!!
会場は混乱の渦に叩き込まれた!!!!
しかし――カトリーヌ、微動だにせず。
仁王立ち。その目には、揺るぎない決意。
司会:「史上初!!! ゴール後ろで仁王立ちする女神!!!(?)」
「魔物たち、完全に停止!!! これは前代未聞だぁぁぁ!!!!」
魔物たち、動かない。完全に硬直。
――いや、息すらしてない。(ように見える)
「……」
(ちょっ、おい……)
僕は頭を抱え、心の中で絶叫した。
(何やってんだよあそこで!!!)
(僕の賭けた2番、完全に硬直してるじゃないかぁぁぁ!!!)
――ドンッ!!
姉さん、席を吹っ飛ばす勢いで立ち上がる!!
そして、絶叫!!!!
「ふざけないで!! ミレイヌを見なさい!!!」
「あんなひどい顔になってるじゃないの!!!」
「……いや、元からそんな顔だけど。」
(って、今それ考えてる場合じゃない!!!)
視線を彷徨わせると、魔物たちが硬直していた。
(仕方ない……使うしかないか。)
(バレたらヤバいけど、今はこれしか方法がない!!)
心臓がドクドクと鳴る。
手汗がじっとり滲む。
(もう後がない……これしかないんだ!!)
僕は魔力を静かに手元に集める。
周囲に気づかれないよう、ゴールへと意識を集中――
――無属性魔法、テレキネシス、発動。
観客「……ん?」
「おい、ゴール……なんか動いてね?」
「いや、待て……動いてるぞ!!!??」
司会:「な、な、なんとぉぉぉぉ!?!?!?」
「ゴールが……ゴールが女神から逃げているぅぅぅぅぅ!!!!!」
その言葉に、カトリーヌ、目を見開く!!!
「アーサー!! てめえ、やりやがったな!!!」
ゴール、じわじわと後退開始!!!!
カトリーヌ、即反応!!!!
「待ちやがれゴール!!!!!」
「止まりやがれゴオオオオオオル!!!!!」
――ダッッッッ!!!!
司会:「カ、カトリーヌ選手!! ゴールを全力で追いかけ始めましたぁぁぁ!!!!!」
「もう何のレースかわかりません!!!!!」
会場、一瞬の静寂。
…………
観客:「……は?」
「いや、何やってんだよ!!!!!」
「おい、追え追えぇぇぇ!!!!!」
「もう笑うしかねえだろこれぇぇぇ!!!!!」
――爆笑!!!!!!!
会場、大爆発!!!!
――ゴールを追うカトリーヌ。
それに向かう魔物たち。
――レース、再開!!!!
司会:「2番がトップスピード!! 5番も負けじと追う!!!」
「そしてカトリーヌ選手も、ゴールに向かって猛追中です!!!!!」
観客「なんだこれぇぇぇ!!!」
「もう何でもいい!! 面白すぎる!!!」
「最後まで見届けるしかないな!!!」
僕、額に汗を浮かべながら心の中でつぶやく。
(まずい……やりすぎたか!? でも、このままじゃ……!!)
――ズバァァァン!!!!
ゴールが2番の目の前に迫る!!!
司会:「ゴール目前!!! 2番、ラストスパートだあああああ!!!!!」
――バンッ!!!!
司会:「2番がトップでゴール!!!!」
「これぞ大逆転劇だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
――ドサッ。
カトリーヌ、ゴール前で膝をつく。
肩を落とし、荒い息をつきながら呟く。
「くそ……ゴールのほうが速えなんて……!!!」
――観客、大爆笑!!!!
爆笑と拍手が巻き起こる!!!!
姉さん、感極まって席に戻りながら叫ぶ。
「ミレイヌ!!! よく頑張ったわ!!! あなたは最高よぉぉぉぉ!!!!!」
――ドッ!!!!(観客、大拍手!!!!)
司会:「こんなレース、見たことありません!!!!」
「最後はゴールも、カトリーヌ選手も、魔物たちも……
全員が駆け抜けた!!! 最高の展開でしたぁぁぁぁ!!!!!」
僕、小さくため息をつく。
冷や汗を拭きながら、最後に一言――
「いや、僕が一番駆け抜けた気がするよ……。」
司会者の声が広場に響き渡り、観客から期待に満ちた歓声が上がる。
「コースは全長100メートル!最後の坂が勝負のカギになるか、それとも予想外の展開が待っているのか!」
司会:「トコトコたち、準備はいいかなー?」
スタートラインに並んだ魔物たちは、走る気のない4番や張り切りすぎた3番など、
すでに個性が全開だ。
司会:「……まあ、やる気がある子も、ない子もいますが、皆さん、応援よろしくお願いします!」
3人はそれぞれの推しに声をかける。
僕「頑張れ、2番!絶対勝てよー!」
姉さん「3番!全力で行きなさい!」
カトリーヌ「5番!お前が一番だ、見せてやれ!」
観客たちの声も続く。
「負けるなー!」「走れ走れー!」「全力出せよー!」
次第に声援が弱まり、場の空気が静まり返る。鐘を鳴らす瞬間を誰もが息を止めて待っていた。
「5! 4! 3! 2! 1!」
カァン!!
高らかに響く鐘の音。
それと同時に、トコトコたちが――
……ん? 走らない!?
2番、のそのそ歩き。
4番、もぐもぐ草タイム継続中。
観客の歓声が響き渡る。
熱気は十分、なのにトコトコたちはマイペース。
(いや、もう動いてるけど……レースってこういうものなのか?)
司会:「スタート! 3番がダッシュ!ぶっちぎりで飛び出した!」
「1番はマイペース!安定感抜群!」
「そして2番……あれ、止まってる!?……おおっと、急にスイッチ入ったー!!」
「さらに4番……いやいや、違う違う!コースじゃなくて草を食べてます!!」
「のんびり屋すぎるぞ4番!観客、大爆笑!」
「さあ、最後は5番!堂々と後方から進む!」
「……おっと、周囲が避けた!? 5番、進むたびに隊列が乱れる!」
僕は司会の声を聞きながら、ふと首をかしげた。
(あれ?実況してるの司会じゃん……?)
そう思いつつも、再び視線をコースに戻す。トコトコたちの動きに歓声が高まっていく。
司会:「先頭は現在、張り切りすぎの3番!!」
「ぶっちぎりだが……おいおい、そのペース、大丈夫か!?」
「その後ろ、安定の1番!そして……おっと!?急にスイッチが入った2番が加速!!」
「今、一気に1番に並んだ!いや、抜くのか!?抜けるのか!?」
「4番は……依然としてマイペース!草、むしゃむしゃ!満喫中!」
「そして5番!!その圧倒的存在感に後続がビビった!?ジワジワ距離が開いていく!!」
姉さんが声を張り上げる。
「3番!そのまま走り抜けなさい!いいわ、その調子よ!」
カトリーヌも負けじと拳を突き上げた。
「そうだ!それでいい!5番、お前は貫禄を見せつけてやれ!」
僕は思わず目を丸くした。
「え!?まさかの伏兵だった!?こんなの予想外だよ!」
司会:「さあ、最初の坂に突入!!」
「先頭3番、息が上がってきた!ヤバい、張り切りすぎたか!?」
「ペースがガクッと落ちている!!」
「何やってんのよ!! 後でたたっ斬るわよ!!」
姉さんの怒号が響いた。
(こっわ……。)
思わず背筋がピシッと伸びる。
司会:「おっと!? 2番が突如スパート!!」
「一気に加速!! ええっ!? 坂を駆け上がる!!」
「どうした2番!? ついに本気か!? 観客、大どよめき!!」
僕は小さな声で呟く。
「さすが僕に似てるね……。」
すかさずカトリーヌが突っ込んだ。
「似てねえよ!」
司会:「1番は安定したペース!順調に坂を越えていく!やはり安定感が強みか!」
「4番は……ああっと、また草ァ!!!」
「坂の途中で立ち止まり、もぐもぐ……まるでピクニック!!」
「しかし!! 他の魔物が横を通ると……」
「おっと!? 4番、慌ててダッシュ!! 急に仕事モード!!」
カトリーヌ:「おい!5番はどこいったんだ!」
苛立った声が響く。
その視線の先――
5番、堂々とコース中央を闊歩。まるで王様気取り。
カトリーヌ:「ったく、余裕たっぷりで歩いてんじゃねえよ!!!」
――ピタッ。
5番、急停止。
観客「!?」「えっ、なんで止まった!?」「指示聞いてんのか!?」
騒然とする会場の中、5番は静かに振り向く。
そこには――カトリーヌ。
目が合った瞬間、彼女の瞳がギラリと光る。
「動けよ……食っちまうぞ!!」
(……もう、やだ……)
5番の顔が引きつり、観客たちは一瞬の静寂の後――
「ギャハハハ!!」「本気の目だぞ!」「やだ、食べられちゃうわ!!」
会場、大爆笑。
5番の足は、もう二度と勝手に止まることはなかった……。
司会:「さあ、レースは中盤の平坦コースへ突入! 最初の坂でトコトコたちが次々と失速する中――1番、ブレない!堂々のリード!」
「おっと……⁉ 5番、後方から猛追!! その圧巻の走りに、観客も思わず息をのむ……!!」
「そして2番……っ⁉ うわぁぁ、ガクッとペースダウン!! だが…… 止まらない!のんびり歩き出したァ!!
「……結局、ちょっとしか頑張ってないじゃん……やる気あるのか!?ないのか!?どっちなんだよ!! 」
僕は思わずぼやき、ため息をついた。
司会:「さあ、観客の声援がますますヒートアップ!! どのトコトコがこの平坦コースで抜け出すのか!? もう目が離せません!!」
「ここで実況のエリオットさんに聞いてみましょう!実況のエリオットさーーん!!」
エリオット:「2番!!その走りじゃ、お前をバラして毛皮にしちまうぞ!! もっと走れ!!俺の全財産がかかってんだァァ!!!」
(えぇぇ……物騒すぎるってば……!!)
僕は思わず頭を抱えた。
「おっと!!実況も白熱してまいりました!! どうやら毛皮になる覚悟が求められているようです!!」
「皆さん、賭けは節度を守って楽しみましょう!!」
観客席は笑いの渦!まるで祭りそのものが弾けるように、歓声が響き渡る。
「はぁ……どうしてこの村って、こういう人ばっかりなのかしら……」
姉さんが呆れたようにぼやくと、隣のカトリーヌが肩をすくめてニッと笑う。
「変でも面白けりゃいいだろ?祭りってのはそういうもんさ!」
司会:「現在、1番がトップをキープ!安定したペースで逃げていますが、5番が後方からじわじわと追い上げています!」
「一方、3番は失速、2番はのんびりモードに戻り、4番は草を食べながらも意外と健闘中!波乱の展開に目が離せません!」
僕は腕を組みながら小さくため息をついた。
「やっぱり……安定した1番に賭けておくべきだったかな。」
カトリーヌ、即座に鼻で笑う。
「そんなの面白くねえだろ!!」
「賭けってのは――こういう予測不能な展開を楽しむもんだ!!」
勢いよく語るカトリーヌ。
だが、姉さんが手をひらひらと振る。
「あー、はいはい、わかったわかった。」
「それより、ほら見て。5番がトップに出そうよ。」
「マジか!?」
姉さんの指さす先――5番、堂々と疾走!!
カトリーヌ、ガタッと立ち上がる!
「ほら見ろ!! やっぱりアタシの見る目は正しかった!!」
「強いやつが勝つに決まってんだろ!!」
僕、思わず大声で叫ぶ。
「おい、2番!! そこで止まるな!! 本気出せよ!!」
司会:「さあ、王者の風格!! 5番が堂々トップ独走!!」
「その歩みに迷いなし!! まるで戦場を駆ける覇王!!」
観客:「5番!! お前が最強だあああ!!!」
「行け行け行けえええ!!」
「……2番は、のんびりしてる場合じゃないだろ……。」
会場は完全にヒートアップ!!
カトリーヌ、拳を振り上げ、姉さんは前のめり!!
司会:「さあ!! これが最後の坂だああ!!」
「運命の瞬間が、今、訪れる!!!」
「この激戦、制するのは――誰だ!!?」
司会:「トップは5番!!堂々と駆ける!?いや、歩くだ!!」
「この貫禄!! 他の追随を許さない!!」
「いいぞ、5番!お前がナンバーワンだ!」
カトリーヌが声を張り上げる。
司会:「1番、安定したペース……だが!!」
「坂の傾斜がジワジワ効いてきた!! スピードが落ち始める!!」
司会:「おっとぉ!! ここで2番が――突然の爆速!!!」
「さっきまでやる気ゼロだった2番、まさかの覚醒!!」
「いきなりエンジン全開!! ここでまさかの逆襲か!!?」
「よっしゃー!やれるじゃないか、行けーっ!」
僕は思わず身を乗り出して叫んだ。
司会:「おっとぉ!? 3番、大失速!!」
「張り切りすぎたツケが回ったか!? 足が止まる!いや、止まるどころか下がってる!!!」
「これは……もはや後退モード突入か!!?」
「まだ終わってないわ!! 諦めないで!!!」
――ガタァン!!
姉さん、突如として立ち上がる!!
「えっ!? 姉さん!?」
(何その全力応援!? まるで親みたいなテンション!!)
「うわっ!? ちょ、なんだよ急に!!?」
「マジでどうした!? なんか降りてきたのか!?」
カトリーヌ、怪訝そうに眉をひそめ、半歩後ずさる。
(さすがにこれは引くわ……って顔してる!!)
司会:「そして4番……おおっと、また草ァァァ!!!」
「坂の途中で、まるで休憩モード!!!」
「しかし! 他の魔物が横を駆け抜けると……」
「うわっ!? 4番、慌ててダッシュ!! 何事もなかったかのように再スタート!!!」
司会:「さぁ、5番!! ゆっくりながらも……他の魔物をジワジワ引き離す!!!」
「この堂々たる姿!! まるで王の凱旋!! 観客、大歓声!!」
カトリーヌ:「そうだ!! それでいい!!! 他の奴らを黙らせてやれぇぇ!!!」
司会:「坂の傾斜が魔物たちの体力を削る!!」
「果たしてこの死闘を制するのは――誰だああああ!!?」
姉さん、突然コース横へ猛ダッシュ!!
その目は本気……いや、もはや命がけ!!
「ミレイヌ!! 私を見なさい!!」
「ここで頑張らないでどうするのよ!!!」
司会:「ええっ!? ちょ、待ってください!!」
「観客席から……謎の叫び声!! しかも、名前までつけてるぞ!??」
司会:「まさか、ここまで本気の応援が飛び出すとは!! 観客も困惑!!」
しかし姉さん、さらにヒートアップ!!
「走れえええ!! もっと気合を入れなさい!!!」
司会:「熱すぎる声援!! これ、魔物に届くのか!? いや、届かないだろ!!」
そして――姉さん、突然ジュースを掴んだ。
観客:「あっ、それ…俺のジュース……」
一瞬の静寂。
「水分補給よおおおお!!!!」
――ブンッ!!!
司会:「いや投げたああああああ!!!」
「投げられたのは……ただのジュース!!」
「観客、呆然!!!おじさん困惑!!!」
観客 「……え、ジュース?」
「いやいや、それで立つかよ!!」
「……でも、応援の熱意は感じるな……」
姉さん、ついに涙!!
「立って!!! 立つのよおおおお!! ミレイヌゥゥゥゥ!!!!!」
司会:「まるでドラマのような展開!!」
「これはもう応援じゃない! 執念だああああ!!!」
僕、全力ダッシュ!!
「姉さんやめてえええ!!! 恥ずかしいってば!!!」
カトリーヌも爆笑しながら追いかける!
「おいおい、それはさすがにやりすぎだろぉぉぉ!!!」
僕たち、全力で姉さんを確保!! 強制送還!!!
司会:「ソフィー様、退場!!!!!」
「いや違う!!! 家族に連行されるぅぅぅ!!!!!」
周囲の観客がざわつく。
観客:「ソフィー様、何やってんだ!?」
「熱すぎる……でも、なんか応援したくなるな!」
「わかる……私も少し涙ぐんじゃったよ。」
「いや、泣くとこかよ!」
司会:「観客席もドラマチックに盛り上がっています!!」
「……さて、実況のエリオットさん……えーっと……」
「あ、完全に賭けに夢中ですね!!」
「実況する気ゼロなので、皆さん! ここからは私が続けます!!!」
(ちょっ、それ言っちゃう!? エリオットさん、バッサリ切り捨てられてるじゃん!!)
エリオット、頭を掻きながらコイン袋を握りしめる。
観客「ぷっ……」「ガチすぎだろ……」
場の空気がふっと緩み、観客席にクスクスと笑いが広がった。
司会:「さああああ!! 驚きの展開だ!!」
「なんと!! 2番、3番、5番が……並んだぁぁぁぁ!!!」
「まさかの横一線!! 勝負の行方が、一気に読めなくなった!!!」
観客「うおおおおおお!!!」「どっちが抜ける!?」
観客席の熱気が一気に爆発する。
「えっ、ちょっ、これ……どういうこと!? いつの間にこんな接戦に!?」
僕は思わず立ち上がる!!
胸が高鳴る!!
視線は、猛スピードで競り合う魔物たちに釘付け!!
「よっしゃあ!! ここからが本当の勝負だぁぁ!!!」
カトリーヌが叫ぶ。
バシィィィィ!!!
「ぐっ!!??」
僕が呻く。
肩に衝撃!! カトリーヌの拳が炸裂!!
カトリーヌ、興奮した目をギラつかせながら叫ぶ!!
「いいぞぉぉ!! やれぇぇぇ!!!」
司会:「これは大波乱の展開!! さあ、勝つのは誰だぁぁぁ!!?」
「ミレイヌ……やっとここまで来たのね……!!」
「あと少し! 頑張りなさい!!!」
姉さん、前のめり!! 息を詰め、拳を握りしめる!!
コース上――
3匹のトコトコが並ぶ!!!
土埃が舞う!!!
観客「踏ん張れええええ!!!」
「スピード上げろぉぉぉ!!!」
「勝つのはお前だああああ!!!」
熱気MAX!! 興奮の渦!!
コース周辺は爆発寸前!!
司会:「さああああ!!! ついに最後の直線!!!」
「ここが……勝負の決めどころだああああ!!!!!」
会場の視線が一点に集中する――
その瞬間……
2番、急加速!!!
司会:「おおおおっと!? 2番が一気に伸びる!!!?」
「これは……なんだこのスピード!!?」
「今までののんびりペースは何だったんだあああ!!?」
観客「えっ!?」「ウソだろ!?」「マジで!?」
僕:「……えっ?」
目の前の光景が、信じられなかった。
――ほんの数秒前まで。
2番は、のんびり歩いていたはずなのに。
「なんだよ、あのスピード!!?」
隣でカトリーヌが身を乗り出す!!
焦りと興奮が入り混じる表情!!
「うそ……まさか、本気を出したの!?」
観客「いけえええええ!!!」「これはヤバい!!!」「マジで勝つぞ!!?」
会場の熱気、爆発寸前!!
僕、思わず立ち上がる!!
目の前の光景に、釘付け!!
「ミレイヌは!? ミレイヌォォォ!!?」
――絶叫!!!
その声が、さらに会場のボルテージを引き上げる!!
司会:「後ろから5番も追い上げる!! しかし!!!」
「2番!! 圧倒的なスピード!!! 差が開く!!! 開くゥゥゥ!!!!」
実況の声が最高潮に達する!!
「やばい!! なんとかしてくれよ!!!」
僕は必死に叫んだ。
その瞬間――
バンッ!!!
カトリーヌ、席を蹴るように立ち上がる!!!!
「キャッ!?」
姉さんが驚いて声を上げる!!
――しかし、カトリーヌは迷わない!!!
ダッッッ!!!!
猛ダッシュ!!!!
コースへ向かって一直線!!!!
「今度は何する気だよおおお!!?」
僕は半ば呆れつつ、思わず叫んだ。
観客「えっ!?」「おいおい、マジか!!?」
カトリーヌ、ゴール地点の後ろに立つ!!!
司会:「なんと……!?」
――空気が、一瞬で止まった。
会場が凍りつく。
まるで時間が止まったかのような静寂。
観客の視線が、一斉にゴール後ろへ向かう。
司会:「これは……!?」
ざわめきが広がる。
しかし、誰もが言葉を失っている。
司会:「――仁王立ち。」
「仁王立ちです!!!!」
「ゴール後ろに……カトリーヌさんが……仁王立ちをしています!!!!!」
会場、「…………え?」
その姿は、圧倒的だった。
ただ立つだけで、場の空気を完全に塗り替える。
威圧感。支配感。絶対的な存在感。
司会:「まるで……炎の化身!!!」
「いや、もはや“災厄”!! その存在感、すべてを飲み込む!!!」
実況の興奮が会場に響く!!!
観客、ざわめく!!!
司会:「完全に支配されている!!! 圧倒的なオーラ!!! 魔物たちが……止まったぁぁぁ!!!!」
観客:「おい、どけぇぇぇ!!!」
「ゴールが見えねぇぇぇ!!!」
「何してんだよ!!! レースだぞ!!!?」
「……いや、女神が降臨したぞ!!!」
怒号!! 笑い!! カオス!!!
会場は混乱の渦に叩き込まれた!!!!
しかし――カトリーヌ、微動だにせず。
仁王立ち。その目には、揺るぎない決意。
司会:「史上初!!! ゴール後ろで仁王立ちする女神!!!(?)」
「魔物たち、完全に停止!!! これは前代未聞だぁぁぁ!!!!」
魔物たち、動かない。完全に硬直。
――いや、息すらしてない。(ように見える)
「……」
(ちょっ、おい……)
僕は頭を抱え、心の中で絶叫した。
(何やってんだよあそこで!!!)
(僕の賭けた2番、完全に硬直してるじゃないかぁぁぁ!!!)
――ドンッ!!
姉さん、席を吹っ飛ばす勢いで立ち上がる!!
そして、絶叫!!!!
「ふざけないで!! ミレイヌを見なさい!!!」
「あんなひどい顔になってるじゃないの!!!」
「……いや、元からそんな顔だけど。」
(って、今それ考えてる場合じゃない!!!)
視線を彷徨わせると、魔物たちが硬直していた。
(仕方ない……使うしかないか。)
(バレたらヤバいけど、今はこれしか方法がない!!)
心臓がドクドクと鳴る。
手汗がじっとり滲む。
(もう後がない……これしかないんだ!!)
僕は魔力を静かに手元に集める。
周囲に気づかれないよう、ゴールへと意識を集中――
――無属性魔法、テレキネシス、発動。
観客「……ん?」
「おい、ゴール……なんか動いてね?」
「いや、待て……動いてるぞ!!!??」
司会:「な、な、なんとぉぉぉぉ!?!?!?」
「ゴールが……ゴールが女神から逃げているぅぅぅぅぅ!!!!!」
その言葉に、カトリーヌ、目を見開く!!!
「アーサー!! てめえ、やりやがったな!!!」
ゴール、じわじわと後退開始!!!!
カトリーヌ、即反応!!!!
「待ちやがれゴール!!!!!」
「止まりやがれゴオオオオオオル!!!!!」
――ダッッッッ!!!!
司会:「カ、カトリーヌ選手!! ゴールを全力で追いかけ始めましたぁぁぁ!!!!!」
「もう何のレースかわかりません!!!!!」
会場、一瞬の静寂。
…………
観客:「……は?」
「いや、何やってんだよ!!!!!」
「おい、追え追えぇぇぇ!!!!!」
「もう笑うしかねえだろこれぇぇぇ!!!!!」
――爆笑!!!!!!!
会場、大爆発!!!!
――ゴールを追うカトリーヌ。
それに向かう魔物たち。
――レース、再開!!!!
司会:「2番がトップスピード!! 5番も負けじと追う!!!」
「そしてカトリーヌ選手も、ゴールに向かって猛追中です!!!!!」
観客「なんだこれぇぇぇ!!!」
「もう何でもいい!! 面白すぎる!!!」
「最後まで見届けるしかないな!!!」
僕、額に汗を浮かべながら心の中でつぶやく。
(まずい……やりすぎたか!? でも、このままじゃ……!!)
――ズバァァァン!!!!
ゴールが2番の目の前に迫る!!!
司会:「ゴール目前!!! 2番、ラストスパートだあああああ!!!!!」
――バンッ!!!!
司会:「2番がトップでゴール!!!!」
「これぞ大逆転劇だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
――ドサッ。
カトリーヌ、ゴール前で膝をつく。
肩を落とし、荒い息をつきながら呟く。
「くそ……ゴールのほうが速えなんて……!!!」
――観客、大爆笑!!!!
爆笑と拍手が巻き起こる!!!!
姉さん、感極まって席に戻りながら叫ぶ。
「ミレイヌ!!! よく頑張ったわ!!! あなたは最高よぉぉぉぉ!!!!!」
――ドッ!!!!(観客、大拍手!!!!)
司会:「こんなレース、見たことありません!!!!」
「最後はゴールも、カトリーヌ選手も、魔物たちも……
全員が駆け抜けた!!! 最高の展開でしたぁぁぁぁ!!!!!」
僕、小さくため息をつく。
冷や汗を拭きながら、最後に一言――
「いや、僕が一番駆け抜けた気がするよ……。」
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