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「私ぜったい!絶対!王都には行かないわ!」
14歳のアレクサンドラは縦ロールの髪を靡かせながら首を横に振った。
「アリ、学園へ行かないつもりか?」
父ハンクが執務机の前に立つアレクサンドラを見上げる様に言う。アレクサンドラは力強く頷いた。
執務室のソファに座る母ケリーはため息混じりに言う。
「小さい頃はあんなに『王都に行きたい』って言ってたのに、今じゃ『絶対行かない』ですものね…」
「あの頃は何にも分からなかったから…今は違うの!」
ゲームの中のアレクサンドラは、第二王子のロイドの婚約者という形で登場する全ルート共通の悪役令嬢なのだ。
ヒロインがどのルートを選ぼうと、各々のライバル令嬢と組んでヒロインを虐める。そして卒業パーティーにライバル令嬢と一緒に断罪されるのだ。
ヒロインを虐める令嬢を攻略対象である第二王子ロイドも許す筈もなく、当然のように婚約破棄もセットとなっている。
もれなく断罪、婚約破棄に、ロイドルートには更に国外追放という処分が付いているのだ。
国外追放となった後の事はゲームではぼんやりとしか描かれていないが、侯爵家のお嬢様が一人国外に追いやられて、庶民としてまともに生きて行ける訳もなく、最後は身を売って生計を立てていたようだった。
国外追放にならない他のルートでも、王子に婚約破棄された令嬢に次の貰い手などある筈もなく…こちらもハッキリとは描かれてはいなかったが、確か、真性のドS爺の後妻になり、爺に嬉々としてなぶられていたようだ。
つまりゲームに関われば最後には必ず不幸が待っている。
幸いアレクサンドラはクロフォード侯爵家には生まれず、ここ、ワイダラー辺境伯家に生まれたのだ。聞けばクロフォード侯爵家にはアレクサンドラと同じ歳の令嬢が居ると言う。何がどうなったのから分からないが、きっとその令嬢と自分が入れ替わったのだろうとアレクサンドラは思った。
過酷な運命は、申し訳ないがクロフォード侯爵令嬢に担ってもらおう。
王都…学園に行かなければヒロインにも攻略対象者にも他の悪役令嬢にも会わずに済む。
アレクサンドラはそう考えた。
「身体が弱いとか、理由は何でも良いの!もちろん勉強はするわ。学園に行ったのと変わらない位の成績を残してみせる!だからお父様…お願いします」
アレクサンドラがそう言って頭を下げると、父の大きな手が俯いたアレクサンドラの頭を掴む。
「何!?お父様?」
後頭を掴まれたアレクサンドラは頭を上げる事も封じられて、視線だけでハンクを見た。
「我儘娘め。成績を落としたら学園の寮にぶち込むからな」
ハンクはそのままアレクサンドラの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
-----
「リザ・クロフォード…」
16歳になったアレクサンドラの元に第二王子ロイドがクロフォード侯爵家の令嬢と婚約したとの知らせが届いた。
リズの妹、リザ。
「すごくしっくり来る…」
やっぱりクロフォード侯爵令嬢と私は入れ替わってるんだわ。
「どうしたの?アリ」
シンシアがアレクサンドラの顔を覗き込んで来た。
「ううん。明日考査だから…」
「そうそうアリ、ここ教えて?」
「どこ?」
ワイダラー辺境伯領は国境に接している。なので辺境伯の私設騎士団や、王都から派遣された辺境警備の騎士、その家族も領地に住んでいて、シンシアは私設騎士団員の子供だ。アレクサンドラと同じ歳でアレクサンドラが前世を思い出した頃に仲良くなった。
それまでのアレクサンドラは王都への気持ちばかりで屋敷の外を見ていなかった。王都へは行かないと決めてから領地へ出ると、大きな子から小さな子まで沢山の子供たちが居たのだ。
同い歳の、年上の、年下の、友達が沢山できた。
前世から通じても初めての友達だ。
学園は「身体が弱くて寮生活ができない」アレクサンドラのために通信教育の様に週に一回課題を送って来る。アレクサンドラと同じ歳の五名が一緒に通信教育を受けていた。
今は考査を受けるためや課題をやったり自習をしたりする場所として使用されている屋敷の隅の一室、通称勉強部屋でアレクサンドラとシンシアは自習をしている。
普段は課題のやり取りで、考査の時は学園から問題を持って教師がやって来て、考査の監督をするのだ。
「十日も掛けて王都から来て、一日中考査の監督して、すぐまた王都に帰るなんて…先生も大変よねぇ」
シンシアがため息混じりに言う。
「私も先生が居る間は身体の弱い振りしなきゃいけなくて大変よ」
「アリのは自己都合だから同情できないわ」
「シンシア、冷たい」
「私ぜったい!絶対!王都には行かないわ!」
14歳のアレクサンドラは縦ロールの髪を靡かせながら首を横に振った。
「アリ、学園へ行かないつもりか?」
父ハンクが執務机の前に立つアレクサンドラを見上げる様に言う。アレクサンドラは力強く頷いた。
執務室のソファに座る母ケリーはため息混じりに言う。
「小さい頃はあんなに『王都に行きたい』って言ってたのに、今じゃ『絶対行かない』ですものね…」
「あの頃は何にも分からなかったから…今は違うの!」
ゲームの中のアレクサンドラは、第二王子のロイドの婚約者という形で登場する全ルート共通の悪役令嬢なのだ。
ヒロインがどのルートを選ぼうと、各々のライバル令嬢と組んでヒロインを虐める。そして卒業パーティーにライバル令嬢と一緒に断罪されるのだ。
ヒロインを虐める令嬢を攻略対象である第二王子ロイドも許す筈もなく、当然のように婚約破棄もセットとなっている。
もれなく断罪、婚約破棄に、ロイドルートには更に国外追放という処分が付いているのだ。
国外追放となった後の事はゲームではぼんやりとしか描かれていないが、侯爵家のお嬢様が一人国外に追いやられて、庶民としてまともに生きて行ける訳もなく、最後は身を売って生計を立てていたようだった。
国外追放にならない他のルートでも、王子に婚約破棄された令嬢に次の貰い手などある筈もなく…こちらもハッキリとは描かれてはいなかったが、確か、真性のドS爺の後妻になり、爺に嬉々としてなぶられていたようだ。
つまりゲームに関われば最後には必ず不幸が待っている。
幸いアレクサンドラはクロフォード侯爵家には生まれず、ここ、ワイダラー辺境伯家に生まれたのだ。聞けばクロフォード侯爵家にはアレクサンドラと同じ歳の令嬢が居ると言う。何がどうなったのから分からないが、きっとその令嬢と自分が入れ替わったのだろうとアレクサンドラは思った。
過酷な運命は、申し訳ないがクロフォード侯爵令嬢に担ってもらおう。
王都…学園に行かなければヒロインにも攻略対象者にも他の悪役令嬢にも会わずに済む。
アレクサンドラはそう考えた。
「身体が弱いとか、理由は何でも良いの!もちろん勉強はするわ。学園に行ったのと変わらない位の成績を残してみせる!だからお父様…お願いします」
アレクサンドラがそう言って頭を下げると、父の大きな手が俯いたアレクサンドラの頭を掴む。
「何!?お父様?」
後頭を掴まれたアレクサンドラは頭を上げる事も封じられて、視線だけでハンクを見た。
「我儘娘め。成績を落としたら学園の寮にぶち込むからな」
ハンクはそのままアレクサンドラの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
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「リザ・クロフォード…」
16歳になったアレクサンドラの元に第二王子ロイドがクロフォード侯爵家の令嬢と婚約したとの知らせが届いた。
リズの妹、リザ。
「すごくしっくり来る…」
やっぱりクロフォード侯爵令嬢と私は入れ替わってるんだわ。
「どうしたの?アリ」
シンシアがアレクサンドラの顔を覗き込んで来た。
「ううん。明日考査だから…」
「そうそうアリ、ここ教えて?」
「どこ?」
ワイダラー辺境伯領は国境に接している。なので辺境伯の私設騎士団や、王都から派遣された辺境警備の騎士、その家族も領地に住んでいて、シンシアは私設騎士団員の子供だ。アレクサンドラと同じ歳でアレクサンドラが前世を思い出した頃に仲良くなった。
それまでのアレクサンドラは王都への気持ちばかりで屋敷の外を見ていなかった。王都へは行かないと決めてから領地へ出ると、大きな子から小さな子まで沢山の子供たちが居たのだ。
同い歳の、年上の、年下の、友達が沢山できた。
前世から通じても初めての友達だ。
学園は「身体が弱くて寮生活ができない」アレクサンドラのために通信教育の様に週に一回課題を送って来る。アレクサンドラと同じ歳の五名が一緒に通信教育を受けていた。
今は考査を受けるためや課題をやったり自習をしたりする場所として使用されている屋敷の隅の一室、通称勉強部屋でアレクサンドラとシンシアは自習をしている。
普段は課題のやり取りで、考査の時は学園から問題を持って教師がやって来て、考査の監督をするのだ。
「十日も掛けて王都から来て、一日中考査の監督して、すぐまた王都に帰るなんて…先生も大変よねぇ」
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