入替令嬢と最果ての恋人

ねーさん

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 ドロシー・カーティスはアレクサンドラたちより一歳下の子爵家の令嬢で、マークの婚約者の悪役令嬢としてゲームに登場した。
 前世でアレクサンドラはマークのルートは一度しかプレイした事はないが、ドロシーはアレクサンドラと組んでヒロイン、ローズを虐めていたのだ。
 確か、ドロシーはマークの事を本当に好きな設定だったわ。
 貴族の結婚といえば家同士が決める物だが、ドロシーは学園に入ってマークに一目惚れし、父親に「マークと結婚したい」と頼み込んで婚約に漕ぎ着けたのだ。
 だからこそマークがローズに惹かれるのが許せず、他のルートの悪役令嬢よりも少し虐めが過激だった。

「ドロシー嬢」
 アレクサンドラの部屋の外からマークの声がした。
「マーク様!」
 ドロシーは満面の笑みを浮かべると、部屋の外に立つマークに向かって駆け出した。
 マークは眉間に皺を寄せて立っている。
「どうしてアリ…様の部屋に居るんですか?」
「人の気配がしたからここかなって。マーク様、前みたいに『ドロシー』って呼び捨てにしてください」
「…貴女はもう私の婚約者ではありませんから」
「私は婚約破棄を承諾していません。だから私をマーク様の婚約者に戻してください」
「貴女が承諾していなくても、両家によって婚約は解消されました。教会も認めています」
「嫌です!」
「嫌って…」
 マークが視線を上げて、アレクサンドラと目が合った。
「アリ様、お騒がせして申し訳ありません。ドロシー嬢、応接室へ行きましょう」
 マークはアレクサンドラに向かって軽く頭を下げ、ドロシーに手を差し出す。
 ドロシーは嬉しそうにマークの手に自分の手を乗せた。
「アレクサンドラ様、お騒がせいたしました」
 ドロシーは笑顔でアレクサンドラに頭を下げる。
「はあ…」
 そのまま二人はアレクサンドラの視界から消えた。

 確かにマークがローズと出会う前、マークは「ドロシー」と呼び捨てにし、二人は仲が良い様子だった。
「アレクサンドラ様、婚約者が急に冷たくなったのです」
 ゲームの中で、ドロシーはアレクサンドラの前でそう訴えた。
「まあ、ドロシー様、私の婚約者もよ」
「ロイド殿下も…やはりローズ様に…?」
 アレクサンドラが頷くと、ドロシーは憤怒の表情を浮かべた。
「…許せないわ」
 どちらからともなくそう呟いた。

-----

「卒業パーティーにマーク様と出たいのです」
「まあだからこの時期にわざわざここまで来たの?」
 夕食の席で母ケリーとドロシーが盛り上がっている。
 マークはただ黙々と食べている。
「そうなんです。私はあと一年ありますけど、マーク様は今年が卒業の年ですから。退学されてても婚約者のパートナーとしてなら出席できるじゃないですか」
「そうねぇ」
 アレクサンドラはちらっとマークを見る。表情は変わらない。
「だからマーク様の瞳と同じ水色のドレスを仕立てたんです」
 水色のドレスか…
 ゲームのマークルートでは、ローズが水色のドレスを着ていた。ピンクの髪と相俟って、とてもかわいらしいパステルカラーのスチルが目に浮かぶ。
 水色とか、かわいい色って私似合わないもんなあ…

「あ、雪」
 いつもの木に登りドレスの見本帳をめくっていると、チラチラと白い物が舞うのが見えた。
「そろそろここにも来れなくなるわね…」
 木の枝葉のおかけで風は防げるが、雪が積もると危ないので暖かくなるまで木には登れなくなる。
「アリ」
 下から声がする。
「マーク?」
「ああ。…登っても良いか?」
「良いわよ」
 マークは枝に手を掛けると、するすると登りアレクサンドラの座る枝の隣の枝に座った。
「今日はドロシー様は?」
「俺は訓練に出てる事になってるから、奥様とお茶会してる筈だ」
「疲れた顔してるわ。マーク」
 ドロシーが来て三日、四六時中マークに着いて回り「婚約」「パーティー」とずっと言っていて、静観しようとしていた周りも少々呆れているのだ。
「…本当に疲れてる。早く諦めて帰ってくれないかな」
 マークははあ~と息を吐くと片手で額を抑えた。
 あら、弱音を吐くマーク、ちょっとかわいいかも。
「マークはドロシー様を好きだったんじゃないの?」
「……」
 マークがアレクサンドラをじっと見る。
「その…と出会う、前に、よ?」
 マークは眼を逸らすと少し俯く。
「…嫌いではなかった。多少は好きだったかも知れないが…婚約者なんてそんなもんじゃないか?」
 多少は好きだったのか…
「そういう物なの?」
「…今思えば、ローズの事も本当に好きだったのかどうか」
「え?」
 アレクサンドラがマークの方を向いた時
「アレクサンドラ様、酷いわ!!」
 と、木の下からドロシーの声が聞こえた。



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