入替令嬢と最果ての恋人

ねーさん

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 二十八位。
 卒業パーティーの準備にかまけてあまり勉強してなかったから…これはヤバいわ。
 アレクサンドラは先日の考査の結果を見ながら焦る。卒業まであと二カ月、今更寮には入れられないだろうが、次が最後の考査だ。最後は十位台では終えたい。
 早く衣装を仕上げて、もう少し勉強の時間を増やさなきゃ。
 アレクサンドラは卒業パーティーの衣装をアレンジするため、何着かを抱えて部屋に戻ろうと廊下を歩く。
「アリ」
 声を掛けられて振り向くと、マークが立っていた。
「…どうしたの?」
 憮然とした表情。やっぱりまだ怒っていて、何か文句を言いたいのだろうか。
「それは、卒業パーティーの衣装なのか?」
 顎でアレクサンドラの抱えている衣装を指す。
「そうだけど…?」
「敢えてその色にしたのか?」
「その色?」
 アレクサンドラは自分の抱える衣装に目を落とす。
 赤色と緑色の布地が見える。
「…ウリエルの色だ」
 マークは小さな声でそう言うと、アレクサンドラの二の腕を掴んで壁に押し付けた。
「え?きゃっ」
 アレクサンドラの背中が壁にぶつかる。マークは両手をアレクサンドラの顔の横の壁に置くと、アレクサンドラを上から見下ろした。
 …か、壁ドンだわ。
「な、何?」
 顔が近い。怒ってる。怖い。
「……」
 マークは無言でアレクサンドラを見詰める。眉を寄せて、不機嫌そうな表情だ。
「マーク?」
「…アリは、嘘つきだ」
 マークは壁に自分の額を押し付ける。アレクサンドラの顔の目の前にマークの肩がある。額が当たりそうだ。
「痛っ!」
 耳!耳噛まれた!
 アレクサンドラが耳を押さえて壁に寄りかかりずるずると座り込むと、そんなアレクサンドラを見てマークは口角を上げる。
「真っ赤だ」
「なっ」
 何でマークが泣き笑いみたいな表情かおをするの?
「…済まない」
 呆然とマークを見上げるアレクサンドラにそう言うと、マークは廊下を歩き去った。

-----

 あれは何だったんだろう?
 リボンを縫い付ける手を止めて、耳を触る。
「耳朶噛むなんて意味深すぎる…」
 嘘つきって言われたけど、ゲームに関する事なら嘘は一つも言ってないんだけどな。そりゃあ信じられないのも無理はないけど…
「…ぼんやり考えてないで、早く衣装を仕上げなきゃ」
 アレクサンドラは首を振り、また手を動かし始めた。

 衣装が出来上がり、皆で試着をしてみる事になった。
 シンシアはアレクサンドラの部屋で、男性陣は応接間で着替える。
「どう?」
 シンシアは赤いドレスのスカートを持ち、くるりと回って見せた。
「よく似合うわ。どこかキツかったり突っ張ったりしない?」
「大丈夫みたいよ」
「じゃあこれで保管しておくわね」
「アリのは?着てみないの?」
「私はもう試着したわ」
「ええ~見たかったのに。まあ当日までのお楽しみにしとくか」
 トントンとノックの音がして、返事をするとウリエルたちが入って来る。
 ウリエルが紺の衣装、アントニーは緑、カラムは青だ。
「どう?」
「やっぱり騎士だけあってスタイルも姿勢も良いわね。皆んな」
 シンシアが頷きながら言う。
「動いてみて違和感ない?」

「お父様が皆んなの衣装見たいって言ってたから、このまま執務室へ行ってくれる?」
「おお」
「はーい」
 シンシアと、アントニーとカラムが部屋を出て行く。アレクサンドラが気付くと、ウリエルがドアの前に立っていた。
「ウリエル?」
「アリの衣装は?何色?」
「ベージュよ。行きましょう、ウリエル」
 アレクサンドラがウリエルを促し、ドアノブに手を掛けると、ウリエルがその手首を掴んだ。
「ウリエル?」
「…シンシアが、辺境伯様はこの卒業パーティーでアリの結婚相手を探すつもりだろうって…」
「シンシアがそう言うだけよ。私はお父様から何も聞いてないわ」
「じゃあ!アリ!俺と結婚してくれ!」
 ウリエルはそう言うと、掴んだアレクサンドラの手首を引き、抱きしめようとする。
「ウリエル!?」
 アレクサンドラは掴まれていない手を突っ張り身を捩るが、ウリエルに背中に腕を回され身動きができなくなる。
「アリが好きなんだ。ずっと」
 力が強い。さすが騎士だ。
 マークに噛まれた同じ耳にウリエルの吐息を感じる。
 嫌だ。怖い…
「…いや」
 小さく呟くと、バンッと音を立ててドアが開いた。
 視線を向けると、マークが部屋に入って来る。
「アリを離せ」
 騎士服のマークは腰の剣に手を当てた。
 あれは訓練用の模擬刀?でももし真剣だったら…
「なっ。マークには関係ないだろう!?」
 ウリエルはアレクサンドラを抱く腕に力を込める。マークは剣を抜いた。
「マーク!駄目よ!」
 アレクサンドラはマークに手を伸ばそうとするがウリエルの腕に押さえられていて伸ばせなかった。






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