ヒロインに転生しましたけど、私、王太子より悪役令嬢が好きなんです。

ねーさん

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「またか…」
 ローゼは教室の机の上に置かれた、ビリビリに破られた教科書を見てため息を吐く。
 教科書に落書きされるのは、まだどうにか文字が読めるから良いけど…いや良くはないんだけども、破かれると教科書として使い物にならなくなるから困るのよね…
 私を困らせるためにやってるんだから、困って当然なんだろうけど、いくらマーシャル家からお給金もらってるとは言え…教科書って高いのよ。
 最近のローゼには「教科書やノートに落書きされる」「教科書やノートを破かれる」「鉛筆やペンなどの筆記用具を盗られる」「靴や上履きや着替えを隠される」「机や椅子を壊される」などの嫌がらせ被害が頻発している。
 更に昼休憩や放課後に呼び出されては嫌味を言われ、糾弾される日々だ。
「流石に心が荒む…」
 ローゼはビリビリの教科書を手にして椅子に座り、小さく呟いた。

 攻略対象者は生徒会役員五名、顧問の教師、王太子の七名だ。
つまり、そのそれぞれの婚約者や恋人など、七名の悪役令嬢がいると言う事だ。
 落書き系はクリスティンの幼なじみで二年生のエレノア・ウィンブロー伯爵令嬢。
 破く系はランドールの婚約者、三年生のサフィ・デップマン伯爵令嬢。
 盗む系はイヴァンの恋人コーネリア・バイロン。ロイズの侍女で二十三歳。
 隠す系はマリックの恋人で一年生のデボラ・ムーサフ。王都の薬問屋の娘。
 壊す系はルークの婚約者、ドロワ・カーティス子爵令嬢、二年生。
 呼び出し系はロイズの婚約者、エリカサンドラ・クロフォード侯爵令嬢、三年生。イヴァンの恋人コーネリアがローゼに嫌がらせをするのに手を貸したりもしている。
 主にこの様な感じの役割分担がされていて、たまに違う系統の事をしたり、呼び出しが複数の悪役令嬢からだったりするのだ。
 
 ゲームだと何かある度に攻略対象者に泣きついて好感度を上げて教科書も鉛筆も靴も、机や椅子まで何とかしてもらってたけど…結局そうやって攻略対象者に近付けば、悪役令嬢からの苛めは酷くなるんだし、そもそも好きでもない異性に泣きつきたいとは思わないんだけど…
「それにしてもやっぱりリリー様は天使ね」
 悪役令嬢の中でローゼに敵意を向けて来ないのは、リリーだけなのだ。
 サイオン殿下は私に興味がないから、リリー様が私を敵視する必要がないってだけなんだけど…私に好意を向けるサイオン殿下も想像できないけど、私に悪意を向けるリリー様はもっと想像できないわ。
 そうだ、次の休みにはリリー様の笑顔に存分に癒されよう。うん。絶対そうしよう。
「さ、教科書買いに行くか」
 ローゼは勢い良く立ち上がった。

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 あ、二人だけになってる…何か理由を付けて出て行かなくちゃ。
「ローゼ、困った事があれば言って良いんだぞ?」
 生徒会室で書類を整理していると、他の役員が皆いなくなり、ロイズと二人きりになってしまった。
 そんな時不意にロイズが言った。
「え?」
「…エリカが何かしていると、噂で聞いた」
 ロイズ殿下の婚約者エリカサンドラ・クロフォード侯爵令嬢か。
 赤い縦ロールの髪の美女、典型的悪役令嬢だわ。
 と言うか、ロイズ殿下も知ってるならエリカサンドラ様を止めてくだされば良いのに…いやいや、ロイズ殿下が私を庇うような事を言ったら逆に火に油を注ぐ事になるか。
「いえ、何も困ってはいませんので」
 ローゼはにこやかにそう言うと、生徒会室の扉の方へ寄って行く。せめて扉は開けておかないと…
 
 ダンッ
 扉に近付いたローゼの後から、二本の腕が伸びて来て、ローゼの頭を挟むように勢い良く扉に着いた。
「ローゼ…」
 頭の上でロイズの声がする。
 これは、後ろから、壁ドンされてる状態?
「何故何も話してくれないんだ…俺を頼ってくれ。ローゼ」
 耳元で声。背中に当たってるのはロイズ殿下の身体…
「……」
 怖い。
「ローゼ…好きだ…」
 ローゼの耳にロイズの息が当たる。
 ゾクリと背筋に悪寒が走った。
 嫌。怖い。
 ローゼは震える手で扉の取手を握ると、思い切り押した。
 扉が開いて、転がるように廊下へ出る。
「ローゼ!」
 ロイズの声を後ろに聞きながら、ローゼは廊下を駆け出した。


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