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番外編3
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2-下
「私は、リリー様にお仕えしたくてついて来たのです。王宮へ行きたかった訳でも、公爵家に勤めたかった訳でもありません。もう良いですか?私はこれから明日のためにリリー様を磨き上げるんですから、忙しいんです」
ニックを睨むようにして言う。
「…怒らせるつもりはなかったんですが。ローゼリア様もものすごくリリー様の事をお好きみたいで、ちょっとリリー様がどんな方なのか興味が沸きまして」
「リリー様は素晴らしいお方です!では失礼します」
ベティはそう言うと頭を下げてニックの前を去る。
ベティの後姿を見送りながら、ニックは
「ベティさん、気が強そうで…かわいいなあ」
と呟いた。
シドニーが再婚である事と、王太子に婚約解消され格下の貴族に嫁ぐ事となったリリーを慮り、結婚式は身内のみでこじんまりと執り行われた。
ベティは自分の部屋で窓から外を見ながら一週間前のリリーの結婚式の様子を思い出す。
リリー様の笑顔は幸せに輝いてたわ…
それにマーシャル公爵家からは誰も出席されないかと思っていたけど、クリス様がエレノア様を伴って来てくださって…
公爵様からのお祝いのお手紙も預かって来てくださったし。
そう言えばクリス様もエレノア様も、春に学園で初めてローゼリアを見掛けた時、余りにもローゼにそっくりでものすごく驚いたって仰っていたわね。
それを聞いた時には「そんなに似てる人がいるのか」と感心したけど、実はローゼ本人だったんだもの。似てて当たり前よね。
結婚式の前にクリスティンがリリーの元を訪れ、エレノアと婚約したと報告していたのを思い出すベティ。
「正式にご婚約…か」
良かったわ。こうなる事を望んでいたんだもの。
ガサっと、ベティの目の前の草を踏み鳴らす音がして、月明かりに光る黒髪が見えた。
「あれ?ベティさん」
木の影から灯りが見えて、ニックが姿を現し、ベティの部屋の窓の前に立つ。
「ニックさん?何してるんですか?こんな夜中に」
「夜半から雨が降りそうなので、見廻りを。ベティさんこそこんな夜中に外を見て…考え事ですか?」
灯りを手にニコリと笑うニック。
「まあ…」
「あ、あの方の事ですか?リリー様…奥様の、弟君」
「は?」
「ベティさん、結婚式でも、その後ここに滞在された時も、結構見てましたよね?弟君…クリスティン様でしたっけ?」
笑顔のまま、言う。
「なっ!」
カッと赤くなったベティは夜中なのに思わず大声で言った。
「貴方って、どれだけ無神経なんですか!?」
バタンッと勢い良く閉じられ、カーテンを引かれた窓を見ながらニックは顎に手を当てて考える。
「…激昂すると言う事は、図星か」
しかし私はよく「無神経だ」と言われるな。自分では本当の事を言って何故怒られるのか、よくわからないが…こういう処が無神経だと言われる所以なのだろうか。
それにしてもベティさんの好みがクリスティン様とは…
「私とは全然違うな」
-----
「昨夜は申し訳ありませんでした」
ベティがリリーのお茶を運ぶため、廊下でワゴンを押していると、ニックが現れて頭を下げた。
「…朝から会う人会う人に『昨夜の大声は何だったのか』と聞かれて迷惑なんです」
ベティは立ち止まる事なくワゴンを押して歩く。ニックは頭を上げると、ベティについて行く。
「私も『昨夜無神経だと言われていたのはお前だろう』と皆に言われました」
「…だから『ニックと付き合ってるのか』とか『痴話喧嘩か』とか言われて…それも迷惑です」
「ふむ。ではベティさん、その噂を本当にしてはいただけませんか?」
「…は?」
思わず振り向くベティ。顎に手を当てているニックは真顔だった。
「私は本当の事しか言っていないのにいつも『無神経』と言われまして…何がいけないのか、自分ではわからないんです。ですから側にいて教えていただけませんか?」
「……はい?」
「せめて悪気はないのが伝わればと、笑顔を心掛けていても『胡散臭い』と逆効果な事もあり…正直どうすれば良いのか…」
「それでいつもあんな貼り付けたみたいな笑顔だったんですか?…それは、確かに…」
ベティは驚いてニックを見た。
「胡散臭い?」
「はい」
頷くベティに、ふっと息を吐きながら笑うニック。
あ、今の笑顔は自然だわ。
「ベティさんのそういう正直な処、好きです」
「……」
ベティは無言でワゴンを押した。
「ベティさん?」
「…リリー様のお茶が冷めてしまいますので失礼します」
こういう所でそういう事を言うのが、すでに無神経なのよね。
ニックの方を見ずに言う。
「はい。失礼いたしました」
片手を胸に当てるニック。またベティの後ろについて歩く。
「どうすれば私とお付き合いしていただけますか?」
「…仕事中なので、そういう話はやめてください」
「では仕事の後で会っていただけますか?」
「嫌です」
「ですよね」
リリーの部屋の前で止まると、ニックも止まる。
ベティはニックの方を振り返ると
「…貴方がいかに無神経かを教えて差し上げるために、仕事の後、十分だけ時間を取ります」
「ベティさん!」
あ、嬉しそう。
「とりあえず、私の前では胡散臭い笑顔を見せるのはやめてください」
ベティはそう言うと、リリーの部屋の扉をノックした。
「私は、リリー様にお仕えしたくてついて来たのです。王宮へ行きたかった訳でも、公爵家に勤めたかった訳でもありません。もう良いですか?私はこれから明日のためにリリー様を磨き上げるんですから、忙しいんです」
ニックを睨むようにして言う。
「…怒らせるつもりはなかったんですが。ローゼリア様もものすごくリリー様の事をお好きみたいで、ちょっとリリー様がどんな方なのか興味が沸きまして」
「リリー様は素晴らしいお方です!では失礼します」
ベティはそう言うと頭を下げてニックの前を去る。
ベティの後姿を見送りながら、ニックは
「ベティさん、気が強そうで…かわいいなあ」
と呟いた。
シドニーが再婚である事と、王太子に婚約解消され格下の貴族に嫁ぐ事となったリリーを慮り、結婚式は身内のみでこじんまりと執り行われた。
ベティは自分の部屋で窓から外を見ながら一週間前のリリーの結婚式の様子を思い出す。
リリー様の笑顔は幸せに輝いてたわ…
それにマーシャル公爵家からは誰も出席されないかと思っていたけど、クリス様がエレノア様を伴って来てくださって…
公爵様からのお祝いのお手紙も預かって来てくださったし。
そう言えばクリス様もエレノア様も、春に学園で初めてローゼリアを見掛けた時、余りにもローゼにそっくりでものすごく驚いたって仰っていたわね。
それを聞いた時には「そんなに似てる人がいるのか」と感心したけど、実はローゼ本人だったんだもの。似てて当たり前よね。
結婚式の前にクリスティンがリリーの元を訪れ、エレノアと婚約したと報告していたのを思い出すベティ。
「正式にご婚約…か」
良かったわ。こうなる事を望んでいたんだもの。
ガサっと、ベティの目の前の草を踏み鳴らす音がして、月明かりに光る黒髪が見えた。
「あれ?ベティさん」
木の影から灯りが見えて、ニックが姿を現し、ベティの部屋の窓の前に立つ。
「ニックさん?何してるんですか?こんな夜中に」
「夜半から雨が降りそうなので、見廻りを。ベティさんこそこんな夜中に外を見て…考え事ですか?」
灯りを手にニコリと笑うニック。
「まあ…」
「あ、あの方の事ですか?リリー様…奥様の、弟君」
「は?」
「ベティさん、結婚式でも、その後ここに滞在された時も、結構見てましたよね?弟君…クリスティン様でしたっけ?」
笑顔のまま、言う。
「なっ!」
カッと赤くなったベティは夜中なのに思わず大声で言った。
「貴方って、どれだけ無神経なんですか!?」
バタンッと勢い良く閉じられ、カーテンを引かれた窓を見ながらニックは顎に手を当てて考える。
「…激昂すると言う事は、図星か」
しかし私はよく「無神経だ」と言われるな。自分では本当の事を言って何故怒られるのか、よくわからないが…こういう処が無神経だと言われる所以なのだろうか。
それにしてもベティさんの好みがクリスティン様とは…
「私とは全然違うな」
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「昨夜は申し訳ありませんでした」
ベティがリリーのお茶を運ぶため、廊下でワゴンを押していると、ニックが現れて頭を下げた。
「…朝から会う人会う人に『昨夜の大声は何だったのか』と聞かれて迷惑なんです」
ベティは立ち止まる事なくワゴンを押して歩く。ニックは頭を上げると、ベティについて行く。
「私も『昨夜無神経だと言われていたのはお前だろう』と皆に言われました」
「…だから『ニックと付き合ってるのか』とか『痴話喧嘩か』とか言われて…それも迷惑です」
「ふむ。ではベティさん、その噂を本当にしてはいただけませんか?」
「…は?」
思わず振り向くベティ。顎に手を当てているニックは真顔だった。
「私は本当の事しか言っていないのにいつも『無神経』と言われまして…何がいけないのか、自分ではわからないんです。ですから側にいて教えていただけませんか?」
「……はい?」
「せめて悪気はないのが伝わればと、笑顔を心掛けていても『胡散臭い』と逆効果な事もあり…正直どうすれば良いのか…」
「それでいつもあんな貼り付けたみたいな笑顔だったんですか?…それは、確かに…」
ベティは驚いてニックを見た。
「胡散臭い?」
「はい」
頷くベティに、ふっと息を吐きながら笑うニック。
あ、今の笑顔は自然だわ。
「ベティさんのそういう正直な処、好きです」
「……」
ベティは無言でワゴンを押した。
「ベティさん?」
「…リリー様のお茶が冷めてしまいますので失礼します」
こういう所でそういう事を言うのが、すでに無神経なのよね。
ニックの方を見ずに言う。
「はい。失礼いたしました」
片手を胸に当てるニック。またベティの後ろについて歩く。
「どうすれば私とお付き合いしていただけますか?」
「…仕事中なので、そういう話はやめてください」
「では仕事の後で会っていただけますか?」
「嫌です」
「ですよね」
リリーの部屋の前で止まると、ニックも止まる。
ベティはニックの方を振り返ると
「…貴方がいかに無神経かを教えて差し上げるために、仕事の後、十分だけ時間を取ります」
「ベティさん!」
あ、嬉しそう。
「とりあえず、私の前では胡散臭い笑顔を見せるのはやめてください」
ベティはそう言うと、リリーの部屋の扉をノックした。
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