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「四時に各部屋へ結果をお伝えに参りますので、その時間には部屋にお戻り頂きますように。それまではご自由にお寛ぎください。来賓棟前の庭園、来賓棟のサロンと王城の図書室へは出入りして頂いて構いませんので」
昼餐会の最後にそう説明され、各自一旦部屋に戻る事になる。
昼餐会場から引き上げて来た侍従たちや、会場係や、給仕係の者が一部屋に集まり、それぞれが合格させたいと思った令嬢の席の番号を書いた紙を提出する。
「うわ…やはり…」
それを集計したルーカスは低い声で言うと、机に突っ伏した。
「一番票数が多かったのが八十七、次が八十九、その次が八十八、十一、続いて三十三、三十四、六十、二十五、そして九十四、七、この十名が通過という事でよろしいですか?」
宰相が集計結果を読み上げると、その場にいた人たちがパチパチと拍手をする。
「あの大女、通ったのか」
メレディスが苦々しい口調で言うと、ルーカスの肩がピクリと動いた。
ゆらりと立ち上がると、メレディスを見下ろして睨む。
メレディスは平均的な身長なのでルーカスの方が十センチ以上背が高いのだ。
「メレディス…その『大女』と言うのは、もしかして私の妹の事なのかな?」
「あ」
やば。聞こえてた。と小声で言うとメレディスはブンブンと首を横に振った。
「だっ!だってルーカス殿の妹があんなに大きい…いえ、背が高いなんて、ルーカス殿の話しからは想像できませんよ!それに俺、舞踏会であの女…あの妹からジュース掛けられたんですから!」
「妹は私にとってはいつだって小さくてかわいいし、現に妹は今でも私より小さい。それにジュースを掛けられた事に身長は関係あるのかな?」
「う…」
黒いオーラを漂わせた笑顔で言うルーカスに、気圧されて言葉に詰まるメレディス。
「ま…まあまあ。ルーカス殿の妹さんは八十九番ですよね?俺その子を書きましたよ」
「あ、俺も俺も」
侍従の一人が取りなす様に言うと、隣の侍従も言う。
「私は八十九と迷って八十七にしました」
給仕の侍女が言う。
「八十八も良かった。あそこの三人は本当に姿勢が良くて見ていて気持ち良かったです」
会場係が言う。
「そもそも『長い時間も姿勢を崩さず美しく待てる』が選考基準なんだから、お前の妹なら通過するに決まってるじゃないか。一番票数が多かった八十七番はお前の家の侍女だし」
ウェイン家の者は姿勢が良いという事は結構有名なのだ。
宰相がそうルーカスに言うと、ルーカスはへなへなと椅子に座るとまた机に突っ伏した。
「…そもそも、妹が一次を通過するなんて思ってもいないからこんな選考基準にしたんですよ…」
-----
「私はサロンに行くわ。侍女として、来賓棟で出されるお茶やお菓子に興味があるの」
部屋に戻って普段着に着替えると、マリアが言う。
「私、庭園に行って見ようかと思って。王城の庭園なんてゆっくり見た事ないし」
シャーロットが言う。
「私は図書室へ。王城の図書室には我が家の領地に適した作物の育成方法が載った本があるらしくて、確認したいんです」
クラリスがそう言って、結果を知らせに来るまでの時間は三人それぞれで過ごす事になった。
すごいわ。雑草なんて言葉すら存在しない位に手入れされてるのね。
全ての花も葉っぱも綺麗…
シャーロットが庭園の小径を歩いていると、向こうからグリフが歩いて来るのが目に入った。
ドキン。と心臓が鳴る。
明日また会えるからって言われたけど、本当に会えるなんて。
「ロッテ!」
昨日とは違う騎士服のグリフが笑顔で片手を上げた。
「グリフ様」
「ルーカスにこの待ち時間、ロッテはどこで過ごすと思うかと聞いてみたら『部屋か庭』と言っていたから…良かった。さすがに部屋へは行けないから、庭で会えて」
もしかして、わざわざ会いに来てくれたの?
「お兄様とお話しされたんですか?」
「昨夜な。ロッテは今日の二次選考に受かるだろうと言っていたが、どうだった?」
「選考基準がわからないので何とも…でもお兄様と目が合ったらこんな顔をしてたので、受かったのかも知れません」
シャーロットは眉間に皺を寄せて見せる。
「ははは。ルーカスはロッテに受かって欲しくないらしいな。俺も昨夜『何故ロッテを通過させたのか』と怒られたよ」
「あらら」
話しながら小径を並んで歩く。
やっぱりグリフ様は大きいな。見上げながら話すなんて、何だか新鮮だわ。
「ロッテ、昨日俺が『ルーカスはユリウス殿下の所だ』と言ったら舞踏会場には来ないのかと聞いたり、呼んでくれと言ったりしなかっただろ?」
「はい」
「多分あの時、ロッテは今ルーカスには会えないんだと悟ったんだと思うんだが」
「はい。あの、不正防止とかで関係者と参加者は会えない決まりなのかな、と何となく」
「その通りだ。それを察する事ができるロッテが一次で落ちるのが俺はどうしても納得できなかったんだ」
そうグリフは笑って言った。
「四時に各部屋へ結果をお伝えに参りますので、その時間には部屋にお戻り頂きますように。それまではご自由にお寛ぎください。来賓棟前の庭園、来賓棟のサロンと王城の図書室へは出入りして頂いて構いませんので」
昼餐会の最後にそう説明され、各自一旦部屋に戻る事になる。
昼餐会場から引き上げて来た侍従たちや、会場係や、給仕係の者が一部屋に集まり、それぞれが合格させたいと思った令嬢の席の番号を書いた紙を提出する。
「うわ…やはり…」
それを集計したルーカスは低い声で言うと、机に突っ伏した。
「一番票数が多かったのが八十七、次が八十九、その次が八十八、十一、続いて三十三、三十四、六十、二十五、そして九十四、七、この十名が通過という事でよろしいですか?」
宰相が集計結果を読み上げると、その場にいた人たちがパチパチと拍手をする。
「あの大女、通ったのか」
メレディスが苦々しい口調で言うと、ルーカスの肩がピクリと動いた。
ゆらりと立ち上がると、メレディスを見下ろして睨む。
メレディスは平均的な身長なのでルーカスの方が十センチ以上背が高いのだ。
「メレディス…その『大女』と言うのは、もしかして私の妹の事なのかな?」
「あ」
やば。聞こえてた。と小声で言うとメレディスはブンブンと首を横に振った。
「だっ!だってルーカス殿の妹があんなに大きい…いえ、背が高いなんて、ルーカス殿の話しからは想像できませんよ!それに俺、舞踏会であの女…あの妹からジュース掛けられたんですから!」
「妹は私にとってはいつだって小さくてかわいいし、現に妹は今でも私より小さい。それにジュースを掛けられた事に身長は関係あるのかな?」
「う…」
黒いオーラを漂わせた笑顔で言うルーカスに、気圧されて言葉に詰まるメレディス。
「ま…まあまあ。ルーカス殿の妹さんは八十九番ですよね?俺その子を書きましたよ」
「あ、俺も俺も」
侍従の一人が取りなす様に言うと、隣の侍従も言う。
「私は八十九と迷って八十七にしました」
給仕の侍女が言う。
「八十八も良かった。あそこの三人は本当に姿勢が良くて見ていて気持ち良かったです」
会場係が言う。
「そもそも『長い時間も姿勢を崩さず美しく待てる』が選考基準なんだから、お前の妹なら通過するに決まってるじゃないか。一番票数が多かった八十七番はお前の家の侍女だし」
ウェイン家の者は姿勢が良いという事は結構有名なのだ。
宰相がそうルーカスに言うと、ルーカスはへなへなと椅子に座るとまた机に突っ伏した。
「…そもそも、妹が一次を通過するなんて思ってもいないからこんな選考基準にしたんですよ…」
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「私はサロンに行くわ。侍女として、来賓棟で出されるお茶やお菓子に興味があるの」
部屋に戻って普段着に着替えると、マリアが言う。
「私、庭園に行って見ようかと思って。王城の庭園なんてゆっくり見た事ないし」
シャーロットが言う。
「私は図書室へ。王城の図書室には我が家の領地に適した作物の育成方法が載った本があるらしくて、確認したいんです」
クラリスがそう言って、結果を知らせに来るまでの時間は三人それぞれで過ごす事になった。
すごいわ。雑草なんて言葉すら存在しない位に手入れされてるのね。
全ての花も葉っぱも綺麗…
シャーロットが庭園の小径を歩いていると、向こうからグリフが歩いて来るのが目に入った。
ドキン。と心臓が鳴る。
明日また会えるからって言われたけど、本当に会えるなんて。
「ロッテ!」
昨日とは違う騎士服のグリフが笑顔で片手を上げた。
「グリフ様」
「ルーカスにこの待ち時間、ロッテはどこで過ごすと思うかと聞いてみたら『部屋か庭』と言っていたから…良かった。さすがに部屋へは行けないから、庭で会えて」
もしかして、わざわざ会いに来てくれたの?
「お兄様とお話しされたんですか?」
「昨夜な。ロッテは今日の二次選考に受かるだろうと言っていたが、どうだった?」
「選考基準がわからないので何とも…でもお兄様と目が合ったらこんな顔をしてたので、受かったのかも知れません」
シャーロットは眉間に皺を寄せて見せる。
「ははは。ルーカスはロッテに受かって欲しくないらしいな。俺も昨夜『何故ロッテを通過させたのか』と怒られたよ」
「あらら」
話しながら小径を並んで歩く。
やっぱりグリフ様は大きいな。見上げながら話すなんて、何だか新鮮だわ。
「ロッテ、昨日俺が『ルーカスはユリウス殿下の所だ』と言ったら舞踏会場には来ないのかと聞いたり、呼んでくれと言ったりしなかっただろ?」
「はい」
「多分あの時、ロッテは今ルーカスには会えないんだと悟ったんだと思うんだが」
「はい。あの、不正防止とかで関係者と参加者は会えない決まりなのかな、と何となく」
「その通りだ。それを察する事ができるロッテが一次で落ちるのが俺はどうしても納得できなかったんだ」
そうグリフは笑って言った。
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