長身令嬢ですが、王太子妃の選考大会の招待状が届きました。

ねーさん

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 地震!?

「メレディス様、バネッサさん、テーブルの下へ!早く!」
 マリアの声が聞こえる。
「これは何だ?」
「バネッサさん、早く!」
「あ、ああ」
 生まれて初めての揺れに慌てるバネッサは、マリアの言葉に大きな身体を小さく丸めてテーブルの下へと潜る。
 メレディスも本が落ちる様子を呆然の眺めながらもテーブルの下へ座った。

 シャーロットの視界を落ちて来る本が横切る。
 怖いっ!早くテーブルの下へ…
 本がバサバサと落ちる書棚と書棚の間に、一人の女性の姿が見えた。
「キャアアア!」
 頭を押さえて立ち尽くす女性。
 立ち上がるシャーロットの視界に、女性の頭の上で、グラリと傾く高い書棚が映った。

「危ない!」

 駆け出すシャーロット。

 そして。

 頭に重い物が当たる衝撃。
 久しぶり、なんて思うのはおかしいんだけど、この感じ、覚えがある。

 私、上手くあの女の人を庇えたかな?

 もしかして、また、これで死んじゃうの?

 …でも、もしそうなっても、後悔はしない。
 私が盾になって誰かを守れるなら、やっぱり背が高くて良かった、と思う。

 ただ…もう一度だけ、ユリウス殿下に会いたかったな。
 
 淋しそうに笑うユリウス殿下の、心からの笑顔が見たかった。
 
-----

 ルーカスが足を踏み入れた図書室は、普段の様相とは一変していた。
 床一面、足の踏み場もない程の本。書棚は倒れ、別の書棚にもたれ掛かり、別の書棚は中程で折れている。
 図書室の奥は白く煙ってよく見えないが、本の山を崩そうとしている人、呆然と座り込む人などの姿が見えた。

「ロッテ!」
 声を上げると、白煙の向こうから声がする。
「ルーカス殿!こちらです!」
 メレディスの声だ。
 本を乗り越えながら奥へと進むと、うずたかく積み重なった本の山を掻き分けているバネッサと、本の山の上に乗る折れた書棚の一部を退かそうとしているメレディスが目に入った。
「メレディス」
「ルーカス殿!ロッテが女性を庇って…」
 この本と、書棚の断片の下に、ロッテが?

「見えた!」
 バネッサが本を掴んでは脇へと投げながら叫ぶ。
 バネッサの手の先にシャーロットの着ていたワンピースの端が見えた。
「ロッテ!」
 ルーカスもバネッサの側に膝をつき、本を掴む。

 徐々に姿を現したシャーロットは女性を抱き抱えたまま、意識を失っていた。
「ロッテ!しっかりしろ!」
 ルーカスがシャーロットを抱き起こすと、女性を抱き抱えた腕が解ける。
 同じく意識のない女性の黒髪の鬘がずれて金髪が溢れた。
「…トレイシー・セルザム」
 女性の顔を見て、メレディスが呟く。

 何故、トレイシー・セルザム公爵令嬢がここに?
 何故、ロッテに庇われている?
 いやそれは後だ。
 ルーカスはシャーロットを抱き上げた。
「メレディス、セルザム公爵令嬢は任せる」
「はい」
 バネッサが手助けをしてトレイシーをメレディスの背に乗せるのを横目に見ながらルーカスは素早く本の山々を乗り越え、図書室の入口へと向かう。
 図書室を出ると、マリアがルーカスに駆け寄った。
 周りを見回すと、騎士が数人いて、図書室に入ろうとする人を止めているのが見える。
 おそらく、王城内で一番被害が大きいのがここだろう。また大きな揺れが起きれば更に被害も増えるので、立ち入りを制限するのは妥当だとルーカスにも思えた。
「ロッテは…」
「意識はないが、脈も呼吸もしっかりしている。このまま医療棟へ連れて行く」
 早足で歩きながら言う。
「はい」
「マリアはユリウス殿下の執務室へ行って、殿下にロッテは保護したと伝えてくれ」
「え?」
「…ロッテの安否が不明のままでは陣頭指揮に集中できないそうだ」
 ため息混じりに言うルーカスの後ろを歩きながら、マリアは手で口元を覆った。
「それって…」
 もしかして、ユリウス殿下も、ロッテを?



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