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 地震!?

 ゴゴゴ…と地鳴りがし、グラグラと地面が揺れ始める。

 バサバサバサッ!
 揺れで書棚から本が落ちた。

 ガンッ!

 突き上げるような揺れが襲う。

 高い天井まで届きそうな程高い書棚がグラリと揺れて……

「危ない!」
 シャーロットは立ち上がって駆け出した。

-----

 ガシャンッ!パリーンッ!
 棚の上の燭台や置物が落ちる。飾り棚やチェストが倒れた。

 何だこれは。
 ユリウスは倒れて来る物のない部屋の真ん中で、調度品や本棚が倒れるのを呆然と眺める。
「ユリウス殿下!」
 揺れが収まると、ルーカスがノックもせず扉を開いて入って来た。
「ルーカス」
「ご無事ですか!?」
「今のは何だ?」
「地震です」
「ジシン?」
「詳しくは後程。余震…まだ揺れるかも知れませんので、殿下は倒れる物や落ちて来る物がない場所に居てください。扉は開けたままにしておいてください」
 ユリウスの無事を確認したルーカスは、部屋を出ようとする。
「待て、この揺れの範囲は広いのか?」
 ルーカスを呼び止めるユリウス。
「まだわかりませんが…」
 この世界では余り地震は起こらないようで、それでも王城や王宮の作りは頑丈だが、庶民の家などは前世で建築関係だった自分から見れば耐震性に乏しい建物もある。家具などの転倒や、家屋の倒壊などもあるかも知れないし、人的な被害もあるだろう。
 揺れが収まれば被害状況の確認と…

 冷静に考えようと努めるルーカスだが、シャーロットとマリアの居場所を把握していない事が気掛かりであった。
「ロッテは?ロッテやマリアたちはどこにいるんだ?」
 ルーカスの心情を察したかのようにユリウスが言う。
「…わかりません」
「!」

「殿下!」
 廊下からグリフたち護衛騎士が数人部屋に入って来た。
「グリフたちは被害状況の確認を!騎士団で手分けをし、王城の中、王都、王都以外だ」
「はっ!」
「怪我人が居れば救護を。王城の医療棟を開放する。医師と看護師数人を状況確認に連れて出ろ。物資が必要なら備蓄庫から出せ。しかしお前たちが怪我などしないよう、充分気を付けろ」
「はっ!」
「地震の後には火災が発生しやすいので、注意喚起してくれ」
「おう」
 ルーカスがグリフに言うと、グリフは頷いた。

 グリフたちが簡単な礼を取って廊下を駆け出すと、ユリウスは「執務室へ行く」と廊下へ出る。

「ルーカス」
「はい」
「宰相を呼べ。それからお前はロッテとマリアを探せ」
「しかし…」
 カタカタと、小さな余震が起きる。
 ユリウスとルーカスは揺れが収まるまでその場に立ち止まった。
「…ロッテの安否を確認しなければ、俺が落ち着いて指揮を取れん」
「殿下…」
「陛下が王都におられない以上、俺が責任者だ。頼むルーカス、ロッテの無事を確認して来てくれ」
「畏まりました」
 ルーカスは頭を下げる。
「ユリウス殿下、ありがとうございます」
「ルーカスのためではない。俺のためだ」
 そう言うと、ユリウスは振り向かずに執務室へと向かった。

 ルーカスは踵を返して駆け出す。

 ロッテ、マリア、どこにいるんだ。
 ルーカスは先ず医療棟へ行こうと足を向ける。
 すると、廊下の向こうからマリアが駆けて来た。
「ルーカス様!!」
「マリア!」
 マリアはそのままルーカスの胸に飛び込む。ルーカスはマリアをぎゅっと抱きしめた。
「ルーカス様!ロッテが…早く来てください!」
 マリアがルーカスを仰ぎ見て言う。必死な表情だ。
「ロッテがどうした?」
「図書室で、本が…」
 図書室。最悪だ。
 そうルーカスは思った。
 建物に耐震性があっても、棚の本が落下するのは防げない。更に王城の図書室の本は総じて厚くて頑丈な装丁だ。その厚くて頑丈な本がかなりの高さの書棚にぎっしりと詰まっている。
 それが一斉に降り注いだとすれば、下に居る人間は…
「余震に気を付けろ。私は先に行く」
 ルーカスはマリアの肩に手を置き、そう言うと、全速力で走り出す。
 残されたマリアは、ルーカスの後を追って走りながら呟いた。
「お願い…ロッテを助けて」



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