悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 考えてみたら「異性の素肌が顔に触れる」って、簡単なようで意外とハードル高いわよね。
 机の上に広げたノートに「赤い糸の伝説」のゲームについて思い出した事を書き留めていたイライザは、赤い糸が見えるようになる条件を書いた自分の文字を見てふと思った。
 素肌だからもちろん手でもアリだけど、この世界の貴族は大体いつでも手袋を着用してるし。
 学園の制服の時は手袋しないけど、男子が女子の顔に触るなんて、恋人同士でもなきゃほぼないもんなあ。
 まあだからこそ、ヒロインが攻略対象者の好感度を上げていけばそのハードルを越えられるのか…

 そして、赤い糸が見えるようになったヒロインは、意中の相手の手首に繋がっている糸を「切る」事ができる。
 糸、つまり攻略対象者とその婚約者や恋人との絆を断ち切る。
 それから更に好感度を上げていけば、ヒロインと攻略対象者との間に糸が繋がる。これがヒロインのハッピーエンドだ。
 糸を切るのって、糸を手に持って「切れろ」って念じれば良かったんだよね。ゲームしてる時にも「絆って割に簡単に切れるんだなあ」と思ったけど、本当に簡単だわ。

 ヒロインであるミアがグレイを攻略したら、悪役令嬢であるイライザはグレイから婚約破棄される。
 この世界でイライザとグレイは婚約していないので、婚約破棄はないとしても、ミアを陥れようとしたイライザはグレイから断罪されるだろう。
 いずれ時が来れば立太子し、延いては国王となる予定の第一王子に断罪されたら、フォスター家が無事で済むとは思えない。

「私一人が国外追放になるくらいならまだしも、王家から処罰されるような娘がいる家だもん、没落とか…もしかして連帯責任でお家断絶とか…」
 あり得る。グレイ殿下って私の事嫌いだもの。今の私はミアに対してそこまでされる程の犯罪的な虐めをする気はないけど、ゲームの強制力でそんな事態になってしまうかも知れないし。

 グレイに断罪されてフォスター家に累が及ぶ。
 これがバッドエンドだ。

「あの女に殿下を取られたら私、死んでも死に切れなくて、貴女の処へ化けて出るわ。末代まで祟ってやるんだから」
 目が覚める前にイライザの言った台詞。
 ごめんね。イライザ。
 化けて出てくれても、祟ってくれても良いわ。

 婚約してないけど、もしもイライザとグレイの間に赤い糸が繋がっているなら、私、それを切る。

「お家断絶って何の事かしら?」
 じっとノートを見つめながら考えていたイライザの頭の上から女性の声。
「ディアナ様」
 優美な微笑みをたたえながらイライザを見下ろす真っ直ぐな金髪に青い瞳の美女。ディアナ・アンカーソンは公爵令嬢で、イライザの「友人」だ。
 友人って言っても、ディアナ様は公爵令嬢だし、私はディアナ様の取り巻きの一人なんだけども。
「ディアナ様、お一人ですか?エレノーラ様やシェリー様は?」
「私もたまには一人でいたい時もありますわ。今廊下からイライザ様が見えて、そう言えば最近イライザ様とお話していないわ、と思ったの」
 ニコニコと笑いながらイライザの隣りの席に座るディアナ。
「はあ…」
 イライザはディアナから視線を逸らして鼻の頭を掻く。

 学園に復帰した日、廊下を歩くイライザを呼び止めたのはディアナの取り巻き仲間のエレノーラとシェリーだった。
 三人で校舎の裏の花壇の側に移動すると
「イライザ様、貴女ミアを階段から突き飛ばしたんですって?」
 そう、イライザと同じ侯爵家の令嬢であるシェリー・モーガンが言った。
「私が突き飛ばしたのに、何故私が一緒に落ちて、更に下敷きになったのですか?」
 そんな状況はあり得ない。だから私はミアを突き飛ばして階段から落としたりはしていない。
 あの時は、ミアとグレイ殿下が階段の上に立っていた。私はミアに文句を言いながら階段を登って行った。そして、何故かは知らないけど、ミアが落ちて来たのよ。それで私にぶつかって一緒に下まで落ちた。思い出したのはこれだけだけど。
「そんな事知らないわよ。でも貴女がミアを邪魔に思って虐めていたのは有名だから、どんな言い訳した処で信じる人はいないでしょうね」
「まあそうでしょうね」
 無表情で言うイライザに苛立ったシェリーはイライザの肩を押す。
「いくら気に入らないからって階段から落とすなんて犯罪行為だわ。そんな事をする人がディアナ様に侍るなんて許さない!貴女が近付けばディアナ様や私たちまで同類だと思われるのよ!」
「シェリー様、手を出してはいけませんわ。そんな事をしてはそれこそイライザ様と同じになってしまいます」
 そう言ってイライザとシェリーの間に入ったのはエレノーラ・ワトソン。エレノーラは伯爵令嬢で、侯爵令嬢であるイライザやシェリーをライバル視していた。
 ここぞとばかりに、ニヤニヤして嫌な感じ。
 でもここで言い返したら以前のイライザと同じだわ。
「わかりました。私はもうディアナ様には近付きませんわ」
 イライザはニッコリと笑って言った。









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