悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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「それで『お家断絶』って何の事なの?」
 ディアナが小首を傾げて言う。
「いえ、あの…それは、学園を休んでいる時に読んだ小説に出て来た言葉なんです」
 そう言いながらイライザはさりげなくノートを閉じた。
「そう言えば、階段から落ちた怪我はもう大丈夫なの?」
「頭を打っただけで、怪我という程の怪我はしていないんです」
「アレックス様が『一週間経っても意識が戻らない』と言われてて…心配したのよ?」
「アレックス様が?」
 アレックス・ウォルトは公爵家の次男で、ディアナの婚約者だ。そしてグレイの友人でもある。
「ええ、私たち、ちょうどイライザ様とミア様が階段から落ちた所に居合わせて、イライザ様を救護室へ運んだのはアレックス様なの。それで容態を気にしておられるの」
「え?そうだったんですか?」
 アレックス様が私を運んでくださったなんて初耳!学園に復帰して四日も経つのに私ったらお礼も言ってないわ。
 あ、アレックス様が私を運んだって事は、ミアは階段の上でミアと話していたグレイ殿下が…?
「あの…じゃあミアは…」
 イライザが言うと、ディアナは困ったように微笑んだ。

 やっぱり。
 胸がジリジリと痛む。
 落ち着いて、イライザ。この嫉妬心は、以前のイライザのもので、今ののものじゃないわ。
 制服の胸元をギュッと掴んで自分に言い聞かせるイライザ。
「イライザ様?」
 ディアナがイライザの顔を覗き込んで来る。

 イライザとディアナがいる教室の外から人の話し声が聞こえて来た。
 あ、いけない。私と一緒の所を見られたら、ディアナ様の評判が落ちてしまう。
「あの!私図書室へ行きますので」
 ノートと筆入れを鞄に押し込みながらイライザは急いで立ち上がった。
「イライザ様?」
 きょとんとしてイライザを見上げるディアナ。
「ごきげんよう。ディアナ様」
 頭を下げて鞄を胸元に抱えて教室を飛び出すイライザを、ディアナは半ば呆然として見送った。

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 きっと私はアレックス様の肩に担がれて救護室に運ばれたのよ。そしてミアはグレイ殿下にお姫様抱っこで…
「ううう…心臓が痛いよぅ…」
 寮の部屋でイライザは胸を押さえてソファにうずくまっていた。
 ああ、さすがヒロインと攻略対象者一番手。お姫様抱っこも絵になる。美しい。永久保存のスチルだわ。

 バアンッ!
「どうしたんですか!?イライザ様!」
 扉が開いて、薄桃色の髪を揺らしてミア・サンライズが部屋に飛び込んで来た。
「ミア!?」
 ミアはソファにうずくまったイライザに駆け寄って、ソファの側に跪く。
「胸が苦しいんですか?あ!もしかして心臓発作!?」
「ちっ…ちちち違うわよ!!」
 慌てて起き上がるイライザ。
「医師を呼びますか!?」
「違うってば!病気じゃないわ!」
 立ちあがろうとするミアの服の袖を掴むと、ミアが眉毛を下げてイライザを見た。

「でも、胸を押さえて苦しがってたじゃないですか」
 あーかわいい。さすがヒロイン。
 ピンクのふわふわした髪にエメラルドグリーンの瞳が映えて、小さな鼻もふっくらした唇も、みんなかわいい。
「あれは…」
 貴女に嫉妬して胸が苦しかっただけよ。とは言わないけど。
「とにかく、病気じゃないの!それより貴女、ノックもせずに他人ひとの部屋へ入るだなんて、サンライズ男爵家ではそんな基本の躾さえ出来ていないの?」
 あ、動揺して以前のイライザみたいな言い方してしまったわ。
「だって…緊急事態だと思ったんですもの」
 首を傾げるミア。
 少し拗ねたような言い方すらかわいいわ。
 
 嫌味を言ったり、脅したり、持ち物を壊したり、水を掛けたり、舞踏会ではグレイ殿下と踊ったミアのクリーム色のドレスに葡萄ジュースを掛けたり、今までイライザは色んな事をして来たのに、この子、あんまり気にしてる様子もないのは何故なんだろ?
 ヒロイン特有の鈍感力とか?
「とにかく、私は病気でも何でもないから、早く出て行きなさいよ」
 イライザは部屋の扉を指差す。
 ミアを見てると胸が痛いだけじゃなく、ドス黒い感情まで出て来そう。これも悪役令嬢あるあるなのかも。
「はあい。あ、そうだ。イライザ様、階段から落ちた時には庇っていただいてありがとうございました」
 立ち上がったミアはイライザに向けてペコリと頭を下げた。
 …は?確かにミアの下敷きになったらしいけど、ミアは私がミアを庇ったと思ってるの?
「庇ってなんかいないわ。たまたまよ」
 むしろ、以前のイライザがミアを庇う筈がない。
「たまたまでも、私が無傷だったのはイライザ様のおかげです。ありがとうございます」
 ニコッと笑うミアはさすがヒロイン、ものすごくかわいくて、ミアが去った後イライザはまた胸を押さえてソファに倒れ込んだ。



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