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厨房へ行くと、アンリがイライザに出すお茶の準備をしていた。
「イライザお嬢様?」
「お茶はクッキーが焼けてからでいいわ」
イライザの作るクッキーレシピは、混ぜて焼くだけの簡単なものなので一時間もあれば充分出来上がるのだ。
「イライザ様、薄力粉とバター、砂糖だけで良いんでしたか?卵は使わないんですよね?」
厨房の奥から髭を蓄えて恰幅の良い料理長が顔を出す。
「そういう本格的なのは料理長に任せるわ」
イライザが口角を上げると、料理長はニヤリと笑った。
以前、イライザはディアナたちとお菓子を作った事がある。その時簡単レシピのクッキーの作り方を覚えてから、イライザはストレスが溜まるとよくクッキーを焼いていた。
しかし、以前のイライザが厨房に顔を出すと、スタッフに一斉に緊張が走り、料理長一人が嫌々イライザの相手をしていたのが、イライザが生まれ変わってからは、イライザが厨房にやって来ると料理長以下スタッフが「チョコレート入れますか?」「めん棒使ってください」「オープン予熱しておきます」などと率先してサポートしてくれるようになっているのだ。
-----
「イライザ・フォスター嬢、隣国の第三王子であるエドモンド・ウィバリー殿下のガイド役を共に担う事になった、生徒会長のジェフリー・ハドックだ」
仏頂面の男性がイライザに向けて手を差し出している。
「イライザ・フォスターです。よろしくお願いします」
イライザは頭を下げてから、ジェフリーの手を握った。
「早速だが、エドモンド殿下をお迎えする段取りについて、生徒会役員と打ち合わせをしようと思う」
「はい」
「何しろエドモンド殿下が学園へ来られるのは来週だ。時間があまりないので昼休憩に、できれば食堂の中二階で会議をしたいのだが…」
ジェフリーが若干言いにくそうにしているのは、食堂の中二階にはグレイも来るからだ。
ほんの数カ月前まで、グレイと昼食を摂るミアとそれに絡むイライザ、そんな光景が毎日のように繰り広げられていた。
学園の皆がそれを知っているし、ジェフリーたち生徒会の面々は中二階を利用する者として間近でそれを見ていたのだ。
「…わかりました」
イライザは覚悟を決めて頷いた。
あれからずっと食堂へ行くのは避けてたけど、会議だし、仕方ないわ。
グレイ殿下の座られる席は決まっているから、私は背を向ける席に座って…グレイ殿下も生徒会の方たちも煩わせないようにしなくちゃ。
「…大丈夫なのか?」
ジェフリーが眉を寄せて言う。
「ええ。皆さまにご迷惑をお掛けしないようにいたしますわ」
ジェフリーを見ながらイライザは笑って言った。
「……」
ジェフリーが目を瞬かせながらイライザを見る。
「ハドック様?」
「ああ…フォスター嬢が変わったと言うのは本当だったんだな」
感心したように言った。
生徒会役員は五名いて、生徒会長、副会長の一人、会計が男子、副会長のもう一人、書記が女子だ。
ジェフリーがイライザを役員たちに紹介し、イライザが「よろしくお願いします」と頭を下げる。四人は揃って畏怖の眼差しでイライザを見ていた。
ま、こう言う反応で当然よね。
「あの、私、こちらに座っても良いかしら?」
イライザがグレイがいつも座るテーブル席に背を向けて座る椅子を指差すと、ジェフリー以外の役員四人が訝し気な表情を浮かべる。
「ああ、そうだな。ではイライザ嬢はここへ」
ジェフリーは得心したように言い、イライザのために椅子を引いてくれた。
あれ?さっきまで「フォスター嬢」だったのに「イライザ嬢」になってる。
椅子に座りながらそう思った時、イライザは刺さるような視線を感じた。
視線の方を見ると、書記の女子生徒がすっと目を逸らす。
あの娘、パイロット版で見た生徒会長のカノジョだわ。
あ!そうだ。ヒロインと攻略対象者である生徒会長はこの隣国の王子を迎えるための打ち合わせ会議の時に初めて話をするんだったわ!って事はこれから出会いイベントが発生するって事?
確か、中二階で会議をしている時に、昼食の乗ったトレイを持ったヒロインが近くを通り掛かって、他の生徒にぶつかられて、トレイに乗っていたスープを生徒会長の膝に溢してしまうって出会いだったわ。
それで生徒会長と仲良くなったヒロインは生徒会長がガイド役の隣国の王子とも知り合って…って流れ。
「あ!イライザ様!」
イライザの後ろからミアの声がした。
厨房へ行くと、アンリがイライザに出すお茶の準備をしていた。
「イライザお嬢様?」
「お茶はクッキーが焼けてからでいいわ」
イライザの作るクッキーレシピは、混ぜて焼くだけの簡単なものなので一時間もあれば充分出来上がるのだ。
「イライザ様、薄力粉とバター、砂糖だけで良いんでしたか?卵は使わないんですよね?」
厨房の奥から髭を蓄えて恰幅の良い料理長が顔を出す。
「そういう本格的なのは料理長に任せるわ」
イライザが口角を上げると、料理長はニヤリと笑った。
以前、イライザはディアナたちとお菓子を作った事がある。その時簡単レシピのクッキーの作り方を覚えてから、イライザはストレスが溜まるとよくクッキーを焼いていた。
しかし、以前のイライザが厨房に顔を出すと、スタッフに一斉に緊張が走り、料理長一人が嫌々イライザの相手をしていたのが、イライザが生まれ変わってからは、イライザが厨房にやって来ると料理長以下スタッフが「チョコレート入れますか?」「めん棒使ってください」「オープン予熱しておきます」などと率先してサポートしてくれるようになっているのだ。
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「イライザ・フォスター嬢、隣国の第三王子であるエドモンド・ウィバリー殿下のガイド役を共に担う事になった、生徒会長のジェフリー・ハドックだ」
仏頂面の男性がイライザに向けて手を差し出している。
「イライザ・フォスターです。よろしくお願いします」
イライザは頭を下げてから、ジェフリーの手を握った。
「早速だが、エドモンド殿下をお迎えする段取りについて、生徒会役員と打ち合わせをしようと思う」
「はい」
「何しろエドモンド殿下が学園へ来られるのは来週だ。時間があまりないので昼休憩に、できれば食堂の中二階で会議をしたいのだが…」
ジェフリーが若干言いにくそうにしているのは、食堂の中二階にはグレイも来るからだ。
ほんの数カ月前まで、グレイと昼食を摂るミアとそれに絡むイライザ、そんな光景が毎日のように繰り広げられていた。
学園の皆がそれを知っているし、ジェフリーたち生徒会の面々は中二階を利用する者として間近でそれを見ていたのだ。
「…わかりました」
イライザは覚悟を決めて頷いた。
あれからずっと食堂へ行くのは避けてたけど、会議だし、仕方ないわ。
グレイ殿下の座られる席は決まっているから、私は背を向ける席に座って…グレイ殿下も生徒会の方たちも煩わせないようにしなくちゃ。
「…大丈夫なのか?」
ジェフリーが眉を寄せて言う。
「ええ。皆さまにご迷惑をお掛けしないようにいたしますわ」
ジェフリーを見ながらイライザは笑って言った。
「……」
ジェフリーが目を瞬かせながらイライザを見る。
「ハドック様?」
「ああ…フォスター嬢が変わったと言うのは本当だったんだな」
感心したように言った。
生徒会役員は五名いて、生徒会長、副会長の一人、会計が男子、副会長のもう一人、書記が女子だ。
ジェフリーがイライザを役員たちに紹介し、イライザが「よろしくお願いします」と頭を下げる。四人は揃って畏怖の眼差しでイライザを見ていた。
ま、こう言う反応で当然よね。
「あの、私、こちらに座っても良いかしら?」
イライザがグレイがいつも座るテーブル席に背を向けて座る椅子を指差すと、ジェフリー以外の役員四人が訝し気な表情を浮かべる。
「ああ、そうだな。ではイライザ嬢はここへ」
ジェフリーは得心したように言い、イライザのために椅子を引いてくれた。
あれ?さっきまで「フォスター嬢」だったのに「イライザ嬢」になってる。
椅子に座りながらそう思った時、イライザは刺さるような視線を感じた。
視線の方を見ると、書記の女子生徒がすっと目を逸らす。
あの娘、パイロット版で見た生徒会長のカノジョだわ。
あ!そうだ。ヒロインと攻略対象者である生徒会長はこの隣国の王子を迎えるための打ち合わせ会議の時に初めて話をするんだったわ!って事はこれから出会いイベントが発生するって事?
確か、中二階で会議をしている時に、昼食の乗ったトレイを持ったヒロインが近くを通り掛かって、他の生徒にぶつかられて、トレイに乗っていたスープを生徒会長の膝に溢してしまうって出会いだったわ。
それで生徒会長と仲良くなったヒロインは生徒会長がガイド役の隣国の王子とも知り合って…って流れ。
「あ!イライザ様!」
イライザの後ろからミアの声がした。
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