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週末、家に戻って舞踏会用のドレスの試着をしているイライザの元へ母がやって来た。
「あら、良く似合ってるわ。イライザ」
「お母様。でも金の装飾が派手過ぎだったかもと思ってるんですが」
イライザは鏡を見ながら自分の首に掛けた金と琥珀のネックレスを指差した。
「イライザは顔立ちがハッキリしているから、宝飾品もこのくらいハッキリしているほうが映えるわよ」
鏡の中の自分を見ると、確かに似合ってる。
でも派手だ。これで留学生の王子と一緒にいたらものすごく目立ちそう。
「ブリジットのドレスも深緑で素敵だったわよ」
ブリジットは深緑か…
あ、お兄様の瞳の色だわ。
って事はブリジットもお兄様を好きだったりするのかしら?
私がもっと普通の姉だったら、こういう時には姉妹できゃあきゃあ言いながら試着したり、恋バナしたりできたんだろうなあ。
「そうだわ。イライザ、貴女ハンナに何をしたの?」
「え?」
お母様付きの侍女のハンナ。
赤い糸を切ってから一週間経つけど、何か変化があったの?
「ハンナとは学園生の頃からの友人なのよ。アドルフのお母様と三人、仲良しだったの」
「そうなんですか?」
「ええ。ハンナは男爵家の三女で、私がアドルフを引き取った時から私に付いてくれて、お父様と結婚した時に一緒にフォスター家に来てくれたのよ。それでね、ハンナにも学園生の頃恋人がいて」
「あ」
その恋人が宝石店の店主?
ハンナの恋人の家は貿易商だったが、会社の船が海難事故で沈没し、その損害により会社が倒産してしまった。
破産した恋人はハンナと別れ、新しい事業を興すため外国へと旅立ち、ハンナはフォスター家の侍女として働きながら、数年後親の薦める相手と結婚した。
外国で宝石商となったかつての恋人が帰国して王都に宝石店を構え、フォスター家へ営業に来た際に二人は再会する。
その時既にハンナは結婚して子供もおり、それを知った恋人もほどなく自身も結婚したのだ。
「ハンナはね、自分と再会するまで彼が独身だったから、彼が戻るまで待てなかった自分をずっと責めていたの」」
「…ずっと好きだったんですか?ハンナはその彼を」
「好きなままお別れしたから、燻っているものはあったのだと思うわ」
彼の方は独身のまま帰国したんだし、ハンナを好きだったんだろうな。なるほどそれで赤い糸がずっと繋がったままだったのか。
「ハンナの名誉のために言うと、ハンナはその気持ちを彼に告げた事もないし、旦那様を裏切った事もないのよ」
「はい」
「それでも彼の顔を見る度に辛くて仕方なかったらしいの。もう好きなのか、嫌いなのかもわからないくらいに」
「……」
「でもこの間、イライザの遣いで宝石店へ行って彼に会った時、何だかすごくスッキリして晴れ晴れした気持ちになったらしいの。彼の方も同じような感じで、別れてから初めて何のわだかまりもなく話ができたと言っていたわ」
「…そうですか」
良かった。ホントに良かったわ。
「何かきっかけがあったのかハンナに聞いたら『イライザお嬢様におまじないをしてもらったくらいしか普段と違う事はしていない』って。イライザおまじないって何をしたの?」
「えーと…本、そう本で、縁切りのおまじないって言うのを見たので、試してみたんです」
「縁切り。そうなのね」
「はい」
「そのおまじないが効いたのかどうかは気の持ちようなのかも知れないけど、久しぶりにハンナの憂いのない表情を見られて嬉しかったわ。ありがとう。イライザ」
母が嬉しそうに笑う。
赤い糸が見える、切れるのってこんな使い方もできるのね…
良かった。嫌われ者の私でも役に立てて嬉しいな。
-----
赤いリボンの伸びる先を目で辿る。
視線の先に結び目。
蝶々結び。
「…固結びの方が良かったのかな?」
でももう結び直す事はできないしなあ。
「ま、多分大丈夫でしょ」
何とかなるわ。
多分。
週末、家に戻って舞踏会用のドレスの試着をしているイライザの元へ母がやって来た。
「あら、良く似合ってるわ。イライザ」
「お母様。でも金の装飾が派手過ぎだったかもと思ってるんですが」
イライザは鏡を見ながら自分の首に掛けた金と琥珀のネックレスを指差した。
「イライザは顔立ちがハッキリしているから、宝飾品もこのくらいハッキリしているほうが映えるわよ」
鏡の中の自分を見ると、確かに似合ってる。
でも派手だ。これで留学生の王子と一緒にいたらものすごく目立ちそう。
「ブリジットのドレスも深緑で素敵だったわよ」
ブリジットは深緑か…
あ、お兄様の瞳の色だわ。
って事はブリジットもお兄様を好きだったりするのかしら?
私がもっと普通の姉だったら、こういう時には姉妹できゃあきゃあ言いながら試着したり、恋バナしたりできたんだろうなあ。
「そうだわ。イライザ、貴女ハンナに何をしたの?」
「え?」
お母様付きの侍女のハンナ。
赤い糸を切ってから一週間経つけど、何か変化があったの?
「ハンナとは学園生の頃からの友人なのよ。アドルフのお母様と三人、仲良しだったの」
「そうなんですか?」
「ええ。ハンナは男爵家の三女で、私がアドルフを引き取った時から私に付いてくれて、お父様と結婚した時に一緒にフォスター家に来てくれたのよ。それでね、ハンナにも学園生の頃恋人がいて」
「あ」
その恋人が宝石店の店主?
ハンナの恋人の家は貿易商だったが、会社の船が海難事故で沈没し、その損害により会社が倒産してしまった。
破産した恋人はハンナと別れ、新しい事業を興すため外国へと旅立ち、ハンナはフォスター家の侍女として働きながら、数年後親の薦める相手と結婚した。
外国で宝石商となったかつての恋人が帰国して王都に宝石店を構え、フォスター家へ営業に来た際に二人は再会する。
その時既にハンナは結婚して子供もおり、それを知った恋人もほどなく自身も結婚したのだ。
「ハンナはね、自分と再会するまで彼が独身だったから、彼が戻るまで待てなかった自分をずっと責めていたの」」
「…ずっと好きだったんですか?ハンナはその彼を」
「好きなままお別れしたから、燻っているものはあったのだと思うわ」
彼の方は独身のまま帰国したんだし、ハンナを好きだったんだろうな。なるほどそれで赤い糸がずっと繋がったままだったのか。
「ハンナの名誉のために言うと、ハンナはその気持ちを彼に告げた事もないし、旦那様を裏切った事もないのよ」
「はい」
「それでも彼の顔を見る度に辛くて仕方なかったらしいの。もう好きなのか、嫌いなのかもわからないくらいに」
「……」
「でもこの間、イライザの遣いで宝石店へ行って彼に会った時、何だかすごくスッキリして晴れ晴れした気持ちになったらしいの。彼の方も同じような感じで、別れてから初めて何のわだかまりもなく話ができたと言っていたわ」
「…そうですか」
良かった。ホントに良かったわ。
「何かきっかけがあったのかハンナに聞いたら『イライザお嬢様におまじないをしてもらったくらいしか普段と違う事はしていない』って。イライザおまじないって何をしたの?」
「えーと…本、そう本で、縁切りのおまじないって言うのを見たので、試してみたんです」
「縁切り。そうなのね」
「はい」
「そのおまじないが効いたのかどうかは気の持ちようなのかも知れないけど、久しぶりにハンナの憂いのない表情を見られて嬉しかったわ。ありがとう。イライザ」
母が嬉しそうに笑う。
赤い糸が見える、切れるのってこんな使い方もできるのね…
良かった。嫌われ者の私でも役に立てて嬉しいな。
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赤いリボンの伸びる先を目で辿る。
視線の先に結び目。
蝶々結び。
「…固結びの方が良かったのかな?」
でももう結び直す事はできないしなあ。
「ま、多分大丈夫でしょ」
何とかなるわ。
多分。
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