悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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「イライザ、図書室に付き合ってくれるかな?」
 エドモンドが優美な笑顔で言うと、イライザも笑顔で応える。
「もちろんです。エドモンド殿下」
「エドモンドと呼んでくれといつも言っているのに…」
「そうはいきませんよ」
 イライザとエドモンドが話しながら教室を出ると、ジェフリーが廊下に立っていた。

「図書室ですか?私も行きますよ。殿下」
 ジェフリーがそう言うと、エドモンドはげんなりとした表情を浮かべる。
「ジェフリーは四年生、俺とイライザは三年生、学習範囲も違うんだ。付き合ってくれるのはイライザだけで良いよ」
「ガイド役としてはそうはいきませんよ」
「イライザだってガイド役ではないか」

 言い合いながら廊下を歩くエドモンドとジェフリーを、イライザは少し後ろを付いて歩きながら眺めた。
 うーん、エドモンド殿下が学園に来られて一か月半、エドモンド殿下が意外と私を気に入ってくれてるのは良かったんだけど…ジェフリー様が、何と言うか、エドモンド殿下と私を二人きりにさせないようにしてるような気がするんだけど…気のせい?なのかな?
 でもジェフリー様のカノジョのナタリア様に時々ジッと見られてる…と言うか、睨まれちゃってるって事は、気のせいじゃないって事よねぇ?
 ミアはヒロインなのにエドモンド殿下やジェフリー様に接触してる様子はないし、何なんだろう、この状況。

「グレイ!」
 先を歩くエドモンドの声でイライザはハッとして前を見る。
「エド」
 グレイとアレックスが廊下に居て、グレイがエドモンドに向かって手を上げていた。

 イライザはグレイと目を合わせないように俯く。
「この国の歴史を学ぶために図書室へ行く処なんだ」
 エドモンドが言うと、グレイは顎に手を当てた。
「歴史を学ぶなら王城の図書室の方が文献が多いんじゃないか?」
「王城の図書室ではイライザが一緒に来てくれないからな」
 笑顔でエドモンドが言うと、グレイは眉を顰める。
「……」
 し、視線を感じるわ。グレイ殿下がこっちを見てる。
 心臓がバクバクして苦しい…
「俺がこの国の歴史を学ぶのは、この国と俺の国との友好のためでもあるし、イライザを娶るためでもある」
 …え?
 確かに「ガイド役は花嫁候補」だけど、エドモンド殿下がそれについて明言されるのは初めてで…
 イライザが思わず顔を上げると、グレイが目を見開いてイライザを見ていた。

 え?
 グレイ殿下、何か怒ってる?
「グレイ殿下?」
 目が合ったグレイが不機嫌なように感じて、イライザはグレイを呼んだ。
 すると、グレイはますます目を見開く。
「名を…」
 グレイの呟きに、イライザはザアッと青褪めた。
 私、グレイ殿下の名前を呼ぶのを禁じられてたんだった!
「も…申し訳ございません。第一王子殿下」
「……」
 慌てて頭を下げるイライザを見て、グレイは口元を引き締め、眉を顰める。

 イライザとグレイを交互に見ると、エドモンドは口角を上げる。
 すっと手を伸ばすと、イライザの頬に触れ、反対側の頬に軽くキスをした。
「なっ!?」
「エド!?」
「殿下!?」
 イライザと、グレイと、ジェフリーの声が響く。
 同時にイライザは自分の身体がピンクの光に包まれるのを感じた。
「こんな所で何をしているんですか!?」
 ジェフリーが自分の手でキスされたイライザの頬を拭う。
 続けてピンクの光に包まれるイライザ。

「俺はイライザを花嫁として隣国に連れ帰るつもりだから」
 ニコリと笑って言うエドモンドの手首から赤い糸が伸びている。
「だからと言って人前でキスなど…」
「俺の国では親しい人への挨拶で、同性同士でも頬にキスをするぞ」
「ここは隣国ではありません!」
 エドモンドと言い合うジェフリーの手首にも赤い糸が見えた。
 ジェフリー様の赤い糸はやっぱりナタリア様に繋がっているわ。
 エドモンド殿下の赤い糸は…

「イライザ」
 呆然とエドモンドとジェフリーを眺めていたイライザの腕を掴んで、グイッと引いたのはグレイだ。
 グレイの方に引き寄せられ、イライザは困惑してグレイを見る。
「…第一王子殿下?」
 眉を顰めたまま、グレイはイライザを見ると、踵を返してイライザの腕を掴んだままで、廊下を走り出した。
「え?え?え?」
 グレイに引っ張られ、イライザもグレイと一緒に走り出す。

「イライザ!?」
「グレイ殿下!」
 走りながら廊下の角を曲がる時、取り残されたエドモンドとジェフリーが遠くでイライザとグレイを呼んでいるのが見えた。



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