悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 バシャーン!

 イライザを乗せた馬が湖に落ちた水音が響き、ベンチに伏せていたディアナが顔を上げた。
「イライザ様!アレックス様、イライザ様が…!」
 ディアナに覆い被さっていたアレックスは起き上がると、柵へと走り、柵に片足を掛ける。
 バシャバシャと音を立てて馬が水面へ頭を出した。水中に馬の体躯の栗色とイライザの着ていたワンピースのクリーム色が見えた。
 あそこか。
 アレックスは柵へと上ると、それを蹴って湖に飛び込む。
 続いて護衛騎士が駆けて来て、剣と上着を投げ捨てるとアレックスに続いて飛び込んだ。

「イライザ!」
 エドモンドが柵に飛び付いて叫ぶ。
 飛び込もうとすると、護衛騎士がエドモンドを羽交締めにして止めた。
「放せ!」
「いいえ!他の騎士が必ずイライザ様を救出します!我が国で隣国の王子を危険な目に遭わせる訳にはいきません!」
「くっ…」
 エドモンドに何かあれば国際問題になる。
 自分の立場を理解するエドモンドは悔しそうに歯を食いしばった。

 騎士が馬の鼻革を捕まえ、アレックスがイライザの腕を掴む。
 イライザの手に手綱が巻き付いていて、沈まずに済んだようだ。
 違う護衛騎士が手漕ぎのボートより少し大きな船で近付いて来て、気を失っているイライザを船の上に引き上げた。
「イライザ様…」
 思わずその場にへたり込んだディアナ。
 アレックスは自力で船へと上がると、ディアナに向けて手を上げた。
 ディアナがそれに気付くと、指で船を着けられる岸の方角を指差す。
「あちらに船を着けるようです。行きましょう、エドモンド殿下」

-----

 ロイが熱でぐったりとしたマリアンヌ抱いて早足で歩いていると項垂れたマリアンヌの頸が露わになった。
「これは?」
 ロイが首筋にある赤い点を視線で示すと、後ろを歩いていたブリジットが小走りでロイに追い付く。
「虫に刺されたと言ってました」
「虫?刺されたのはいつ?」
「ええと…芍薬を王都に持ち帰りたいと話した日です」
「あの日?では三日前か…」
 じっと虫刺されの痕を見ながら呟くロイ。
「?」
 ブリジットが首を傾げる。
「急ごう」
 ロイは歩く速度を少し上げた。
「え?は、はい」
「疲労か流感の熱かと思ったが、もしかすると、虫由来の感染症かも知れない」
「ええ!?」

 早足のロイを小走りのブリジットが追い掛けていると、馬車を停めている方向からワイゼルが走って来た。
「ロイ殿下!大変です」
 ワイゼルが慌てた様子で言う。
「ワイゼル、馬車は?」
「直ぐ来ます。それが、あの、イライザ様が…」
「姉様?」

 馬車がやって来て、ロイはマリアンヌを抱いたまま馬車に乗り込み、続いて乗ろうとしたブリジットをワイゼルが止めた。
「ワイゼル様?」
「ブリジット様は芝生広場へ行ってください」
「え?」
「馬が暴走してイライザ様が湖に落ちたと護衛から聞きました。水からは引き上げられたそうなんですが、意識がないそうなので…」
「ええ!?」
「ブリジット、マリアンヌの事は僕に任せて」
 馬車の扉から顔を出してロイが言う。
「わかりました」
 ブリジットは頷いて、芝生広場へと走り出した。

「ワイゼル、この辺りに生息する虫などの感染症に対する血清を準備しておくよう保養所の医師に先触れを出しておいて」
「わかった」
 ワイゼルが馬で馬車に付いて来た騎士にそれを伝えに行くと、ロイは座席に寝かせたマリアンヌの額に乗せたハンカチを取ると、準備してあった濡らした手拭いを乗せる。
 手にしたハンカチはブリジットの物だ。ロイはそれをトラウザーズのポケットへと入れた。
 ブリジットに「ごめんなさい」と言われたからには、潔く諦める。ただ思い出にハンカチをもらうくらいは…いいよね?

 ワイゼルが馬車に乗って来ると、マリアンヌを寝かせた座席の向かい側の座席にロイとワイゼルが並んで座り、馬車が走り出す。
「馬が暴走したと言っていたけど、何があった?」
「断片的な情報ですが…イライザ様を乗せたまま馬が湖へ飛び込み、イライザ様は救助されましたが意識がないと。それから、ミア様が拘束された、と聞きました」
 ワイゼルが首を捻りながら言うと、ロイは吃驚とした表情でワイゼルを見た。
「ミア嬢が?」
「拘束された、と」
「…は?」



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