悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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「グレイ殿下!大丈夫ですか!?」
 離れた所で待機していた護衛騎士二人が芝生に倒れたグレイとミアに駆け寄る。
 一人がグレイに抱き付いているミアを引き剥がすと、もう一人がグレイの傍に跪いた。
「俺は大丈夫だ…それより…」
 仰向けに横たわったグレイは、騎士に目で合図をする。
 騎士が頷くと、ミアを引き剥がした騎士が、素早くミアを羽交締めにした。
「痛ぁい!何するのよ」
 ミアが身じろぎすると、グレイの横に跪いていた騎士が立ち上がり、スラリと剣を抜く。
「黙れ」
 低い声で言うと、ミアに剣先を向けた。

「…なっ」
 目を見開いたミアが絶句する。
 グレイがゆっくりと身を起こすと、ミアはグレイへ向かって叫んだ。
「グレイ殿下!助けて!」
「王子に害を成しておいて、当の王子に助けを求めるとは、どう言う了見だ?」
 ミアに剣を突き付けた騎士が言う。
「害?」
「馬をわざと暴走させ、第一王子殿下を危険に晒した。この行いは大逆罪に相当する」
「!」
 冷たい声色で騎士が言うと、ミアは一気に青褪めた。
 大逆罪とは王族に危害を加える、または加えようとする罪。計画するだけでも罪に問われる重罪だ。
「そ…そんなつもりなかったの!」
 私はただイライザに消えて欲しかっただけで…

「申し開きは王都に戻ってから聞く」
 ミアを羽交締めにした騎士がミアを立たせようとするが、ミアはジタバタと暴れながら叫ぶ。
「嫌ぁ!待って!グレイ様、私そんなつもりなかったんです!ねぇ、グレイ様!助けてください!」
 そんなミアの声を聞きながら、グレイはゆらりと立ち上がった。

「…ミア、アレックスから何度も『殿下』と呼べと言われただろう?」
 グレイは苦渋の表情で言う。
「え?あの?…で、殿下。私、殿下を害するつもりなんて全然…本当です。助けて…」
 羽交締めにされたまま、地面に膝をついてハラハラと涙を流すミア。
 グレイは眉間に力を入れ、拳をグッと握ると、ミアを見た。
「どんなつもりだろうと、言い逃れできる行動ではない」
「そんな…」
 ミアは愕然としてグレイを見上げる。

 目を閉じて、一拍置いて目を開けると、グレイはミアを真っ直ぐ見据えた。
 冷ややかな瞳で自分を見るグレイに、ミアは驚愕して視線を彷徨わせ…
「!」
 ハッとして、自分の手を持ち上げる。
「ない!!何で!?」
 グレイと、剣を突きつける騎士とミアを羽交締めにしている騎士が訝し気にミアを見た。
「嫌…何で?何で!?」
 ミアの顔が絶望と恐怖に歪む。

「連れて行け」
 グレイが短く言うと、羽交締めにしていた腕を解き、二人で素早くミアの手首を後ろ手に縛った。
 剣を収めたもう一人の騎士がミアの二の腕を掴んで歩かせる。

「いやぁ!やめて!私はヒロインなのよ!?何で!?何で赤い糸が消えてるのよぉ!?」

 芝生広場にミアの叫び声が響いた。

-----

「ちょっと!いつまで寝てる気!?」
 突然、頭の中に声が響く。
 少しキンキンした女性の声。聞き慣れた、でも久しぶりに聞いたような…

 …あ!

「イライザ!?」
 聞き慣れた声。の声。

「皆んな心配してるんだから早く起きたら?」
「皆んな?」
「ディアナ様やブリジット、エドモンド殿下も。それにグレイ殿下もよ」
 グレイ殿下。
 自分の身体があるのかも定かではない感覚なのに、心臓がドクンと鳴るのがわかる。
「ねぇ、イライザとこうして話ができるって事はイライザ生きてるんだよね?だったら…じゃなくイライザが起きた方が良いんじゃないの…?」
 殿下とミアが結ばれるのを見るのは辛いかも知れないけど…

「生きてないわ」
「え?」
「私、生きてないから起きるのは無理。意識だけが貴女の頭の中に残っているの。それも普段はこうして話したりはできないくらい微弱よ。今何故話せているのかと言えば、貴女が死にかけてるからよ」
 私、今死にかけてるのか。

「色々言いたい事はあるけれど、結果としてグレイ殿下とあの女を引き離せたみたいだから、末代まで祟るのはやめてあげるわ」
「え?」
 殿下をミアを引き離せた?
「まあ、あの女の自滅だけれども」
 ミアの自滅?
 何の事?

「目が覚めたらわかるわ。とにかく、早く起きなさい!」



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