悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

文字の大きさ
49 / 79

48

しおりを挟む
48

 王子が臣下である侯爵家の娘に跪くなんて、いくら謝罪でもありえないわ!
「や…やめてください!殿下」
「いや。俺はイライザに最大級の謝意を示さなければならないんだ」
 グレイがイライザを真っ直ぐに見る。
 真剣な瞳。これはもう…周りに人が居なくて他の人にこの状況を見られてないだけ良かったと思って納得するしかないか…

「…謝罪を受ける理由が思い当たらないのですが…?」
 おずおずとイライザが言うと、グレイは眉を寄せた。
「も、申し訳ありません」
 イライザが言うと、グレイは悲しそうな表情になる。
 怒らせた?悲しませた?
 わからない。どうしよう。
「…そんな風にイライザを萎縮させているのも、全て俺のせいなんだな」
「え?」

「俺がイライザに謝罪する理由は、ミアに関する全てだ」
「…え?」
 ミアに関する?全て?ってどう言う事?
「ミアがイライザにした事全て、そして俺がイライザにした事全てについて謝罪する」
 そう言うと、グレイは跪いたまま、頭を深く下げた。

「……」
 どう言う事かわからないまま、頭を下げるグレイを見つめるイライザ。
 とりあえず、頭を上げていただきたい。けど、何に謝られてるのかわからない。謝意を受け入れないと言う事はほぼ不可能なんだから「許す」と言えば良いの?
 でも、何を「許す」のかわからないのにそれも違うと思うし。
 だったら私は今この場面で何をどうすれば良いのだろう?
「…質問しても宜しいでしょうか?」
 イライザがそう言うと、グレイは頭を上げて「もちろん」と言う。
「では、とにかく椅子に座ってください。殿下が跪いて、私がベッドに座ってるなんて…私が落ち着きませんから」
「しかし」
「いえもう、私のためだと思って是非、椅子に」
 必死で言うイライザ。
「わかった」
 グレイは渋々と立ち上がるとライティングデスクの前に置いてあった椅子をひょいと持った。
「あ、侍女を呼びます!」
「このくらいで人を呼ばなくても良い」
 グレイはイライザのベッドの傍に椅子を置いた。
「申し訳ありません」
「謝るな。イライザに謝られると俺の方が余計に申し訳なくなる」
 グレイは困ったように言いながら椅子に座る。

「考えてみれば、事情と状況も説明せず、何も知らないイライザに謝罪して、イライザが許すも許さないも決められる訳がない。それでもまず謝意を、と思ったが…俺も大概狡いな」
「狡い?ですか?」
 きょとんとしたイライザに、グレイは苦笑いを浮かべた。
「王族の謝罪を受け入れない選択肢はないだろう?つまり許される前提での謝罪と言う事だ。これは狡いだろう」
「ああ…」
 確かにそうかも。

「では殿下、その『事情』や『状況』を説明していただけますか?その上で謝意を受け入れるかどうかを決めます」
 とは言え、受け入れないって選択肢はやっぱりないけど。
 イライザがニコリと笑って言うと、グレイもふっと微笑む。
「しかし目覚めたばかりで…長く話しをして身体は大丈夫か?」
「身体は重いですけど、睡眠充分で頭はスッキリしています」
 殿下に心配していただいただけで気分上がってるしね。 

「そうか。ただ、その前に一つ」
 グレイがそう言うと、イライザは首を傾げた。
「はい?」
「イライザが最近ずっと俺の事を『殿下』とだけで呼ぶのは、俺が名前を呼ぶのを禁じたせい、だな?」
「…はい」
「すまない。もう二度と名を禁じたりはしない」
 グレイは神妙な表情でまた頭を下げる。
「え…と」
 それは、名前を呼んでも良いって事…よね?
 でも…「名を呼ぶな」って低い声と冷たい瞳を思い出すと…やっぱり怖い。

「はい。わかりました」
 口角を無理矢理上げて言った。
 頭の中でも名前を出さないようにしてたんだもの。ちょっとリハビリ期間がないと、急には呼べないわ。
「ああ」
「それで、その『事情』とは…」
 と、言い掛けてイライザはふと気付く。

 …あれ?
 殿下の赤い糸が…見えない?

 自分の膝の上で手を組むグレイは今日は手袋をしていない。その手首に結ばれている筈の赤い糸が、見えなかった。
 え?
 イライザは自分の手へ視線を落とす。
「…ない」
 イライザの手首に、確かに結ばれていたリボン状の赤い糸。
 それが、見えなくなっていた。
 え!?
 ない!赤い糸がない!!
 イライザは自分の両方の手首をじっと見つめる。フリルの付いた寝衣から覗く白い手首。赤い糸はやはり見えなかった。
 …どう言う事?
 もしかして前回死に掛けてから赤い糸が見えるようになったから、今回死に掛けて、逆に見えなくなったとか?
 ううん。見えるのが当たり前すぎて特に何とも思わなかったけど、さっきブリジットの手首には赤い糸があったわ。うん。確かにあった。
「イライザ?」
 イライザを不思議そうに見ているグレイの手を改めて見るが、やはり赤い糸は見えない。
 あ、もしかして、ミアがまた何かしたのかも!

「ミアは何をしたのですか?」
 イライザはグレイの方へ身を乗り出したながら言った。








しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...