悪役令嬢なのに「赤い糸」が見えるようになりました!

ねーさん

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 ミアとエレノーラの裁判が終わり、それぞれミアが南の修道院、エレノーラが北の修道院へとそれぞれ送られる事が決まったのは、学園の秋期もそろそろ終わろうかという頃だった。

 ミアが送られる南の修道院は、二度と俗世へは戻れない者が入る修道院で、それは実質終身刑を言い渡されたようなものだ。
 エレノーラの送られる北の修道院は還俗が認められているが、それには法外な寄付金が必要だ。エレノーラの家は、エレノーラとの結婚、すなわち伯爵位と引き換えに借金を精算する事を計画していた有様なのでそのような寄付金は到底用意できないであろう。加えて北の修道院のある地域はこの国の辺境であり、王都から最も遠く、冬は長く積雪も多く極寒で、面会に訪れる者も少ない。

「エレノーラには…悪い事をしたと思ってるわ」
 王城の裏手に停められた馬車の扉の前で、フードの付いた黒いマントを纏ったミアはため息混じりに言った。
「エレノーラ様は一週間前に北へ出立されたけど、その前に面会した時は『北の修道院がどんなに過酷な環境でも、あんな男と結婚するよりは良いわ』って…」
 ミアの前に立つイライザが苦笑いしながら言う。
「…結局、エレノーラの望みを叶えられなかったから、そう言ってたなら、ある意味私も救われる気がするかな」
 ミアはそう言うと、自分の胸の辺りを撫でた。エレノーラに刺された場所だ。

「ディアナ様とアレックス様は最近前みたいに想い合う空気が濃くなってるの。赤い糸が見えたらきっと前と同じようにハッキリ見えただろうな」
「そっか…イライザも赤い糸見えなくなったんだっけ…」
「うん。でもまあ、見えない方が気楽で良いけど」
「そうね。それはわかる」
 イライザとミアは顔を見合わせて頷いた。

「結局、赤い糸切ったり繋いだりしたので本人にも周りにも良かったのって、ロイ殿下とマリアンヌくらいだったかもね」
「ああ…確かに」
 保養地でマリアンヌが感染症に倒れた時、熱で動けないマリアンヌと共に保養地へ留まったロイは、マリアンヌを献身的に看病し、二人の距離は一気に縮まった。
 ロイはマリアンヌに正式に婚姻を申し込み、ごく最近婚約が成立したのだ。

「イライザは?グレイ殿下とまだ婚約しないの?」
「エドモンド殿下の留学期間が終わるまではそう具体的な話はできないの。一応私、ガイド役だから」
「そうなんだ。まあ一応イライザが婚約者候補なのは変わってないんだから…そうなるか。エドモンド殿下の留学って、後半年くらいだっけ?」
「そう。来年の春期が終わって夏期休暇になったら帰国されるの」
「そっか…じゃあグレイ殿下の卒業パーティーではイライザをエスコートするのは無理なのね…」
 ミアが残念そうに言う。
「悪役令嬢が攻略対象者にエスコートしてもらえなくてヒロインが残念がるって図式、何かおかしいわね」
 クスクスとイライザが笑うと、ミアも「ホントだ」と笑った。

 ひとしきり話した後、ミアが大きく息を吸って吐き、イライザを見つめる。
「そろそろ、行くわ」
 ミアが言うと、イライザは頷いた。
「うん…」
「イライザ、見送りに来てくれてありがとう」
 微笑むミア。
「ううん。ミア、元気でね」
「うん。イライザもね。私は図太いから、きっと長生きすると思う…だから、退屈凌ぎに手紙…書いても良い?」
 ミアが上目遣いで言うと、イライザは顔を上げる。
「私も書くわ。面会にも行くし、差し入れもする」
「いずれ王子妃になろうって人が罪人の修道女とそんなに仲良くするもんじゃないわ。でも…待ってる」
「うん」
 どちらからともなく手を差し出し、イライザとミアは互いの手をぎゅっと握った。

-----

 ミアの乗った馬車が見えなくなるまで見送ったイライザが、王城への扉へ向かうと、その扉の向こうにグレイが立っていた。
「一緒に見送る事ができなくて済まなかった」
「大逆罪ですから、仕方ありませんわ」
 王子に危害を加えようとした罪に問われたミアは、柵越しなど以外で王族に直に会うのを禁じられているのだ。
 グレイがふとイライザの頬に触れる。
「…泣いたのか?」
「少しだけ…」
 だってミアは転生仲間で…友達とは少し違う気がするけど、私にとっては特別な人には違いないから。



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