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キャロラインは俺より一つ歳下の史学研究者だ。
幼い頃から本が好きで、家中の書物を読み漁り、読む物がなくなると収支報告書や領民からの陳情書など、文字さえあれば何でも読んでいたらしい。
好きになったのは俺の方だ。学園の図書館に朝行っても昼休憩に行っても放課後に行っても、とにかくいつでも居る。奥の席でただ黙々と本を読む眼鏡の下級生が段々と気になり始めた。
彼女が本を取りに行くため席を立った時、声を掛けた。
「邪魔はしないから近くに座っていても良いかな?」
今思えばかなり気味の悪い男だっただろう。でも彼女は「本を読む邪魔をしないなら良いですよ」と言ってくれた。
彼女が本から目を上げた時や、本を取りに行く時に少しづつ話をするようになる。この頃にはすでに自分の恋心を自覚していた。
ある時、目が疲れたのか、彼女が眼鏡を外した。
…こんな美少女だったのか!
これを知られたら彼女に求愛する男が続出するに違いない。
そう焦った俺は、思わず
「邪魔はしないから俺と恋人としてお付き合いしてくれないかな?」
と言ってしまっていた。彼女はきょとんとした後こう言った。
「本を読む邪魔をしないなら良いですよ」
会いに行くのもデートに誘うのも俺の方。
それでも公園の木陰で本を読む彼女の膝に頭を乗せると、片手で髪を撫でてくれる。
たまには本を置いて話をしてくれる。
抱きしめると抱き返してくれる。
「ハミルトン先生、恋人がいるんですか?」
青い大きな目を見開いてアリスが言う。
ああ、かわいい。
「まあ…でも俺は彼女にあまり好かれてはいないみたいですが」
「どうして?」
「連絡するのも、会いに行くのも俺の方からばかりなので。会っても彼女は本が優先ですし」
「ええ?恋人より本が優先だなんて…本当に、先生の事をそんなに好きじゃないのかもですね」
ズキン。
客観的に見てもそうなのか?それでも良いと言ったのは自分なのだが…やはりそう言われてしまうと胸が痛む。
「私だったら恋人をそんな不安にさせたりしないのに…」
目を伏せるアリスはとてもかわいい。
アリスが恥ずかしそうに頬を染めて「水を掛けられた後、救護室でカイル殿下と…口付けを…」と言った時、心の底から応援したいと思った。
カイルに婚約者がいようとも。それが自分の妹でも。
レイラはカイル殿下を幼い頃から慕っていた。それは知っているが、妹であろうと、アリスの邪魔をするなら許さない。
アリスは男爵家に引き取られるまでは平民として生活していた。男爵家と言う家柄も、言葉使いや礼儀作法なども、王子の相手としては相応しくないだろう。
カイルがアリスを護り、教育などで導くだろうが、ライアンもできる限りの協力と助力をしたいと思っている。
「傷が付いたな…」
ライアンはキャロラインとレイラの去った図書館の本棚の脇で、床に転がった指輪を拾うと、光にかざす。
そして少し眺めた後、ポケットに入れた。
-----
【自身の感情を疑え】
これはキャロラインが持って来た日記に書いてあった言葉だ。
「結局言えなかった…」
レイラは寮の部屋に戻りソファに座ってため息混じりに言った。
結局、キャロライン様に私が転生者な事、ゲームの事、強制力の事…言えなかったな。
だってキャロライン様、ちゃんとライアン兄様を好きだもの。なのに強制力でライアン兄様の気持ちがアリスに向いてしまったと知ったらどう思う?
強制力を排除することができるとしても、自分がそんな物でヒロインを好きになったり、悪役令嬢を憎んだりしているなんて思わないもの。自分の感情を疑うなんて、現実ではありえないわ…
「私がハミルトン家の娘じゃなければ、シナリオ通りにヒロインを苛めまくってやったのになあ」
レイラはそう呟く。
強制力の排除ができないなら、せめて「アリスを苛めた」と言う嫌われて当然の理由でカイルに嫌われたかった。何もしていないのに嫌われるなんて理不尽で腹立たしい。
「…でも、ハミルトン家の娘じゃなければカイルと幼なじみにならなかったし、カイルを好きになる事もなかったのか…」
複雑だなあ。
と、レイラはソファのクッションに顔を埋めながら呟いた。
キャロラインは俺より一つ歳下の史学研究者だ。
幼い頃から本が好きで、家中の書物を読み漁り、読む物がなくなると収支報告書や領民からの陳情書など、文字さえあれば何でも読んでいたらしい。
好きになったのは俺の方だ。学園の図書館に朝行っても昼休憩に行っても放課後に行っても、とにかくいつでも居る。奥の席でただ黙々と本を読む眼鏡の下級生が段々と気になり始めた。
彼女が本を取りに行くため席を立った時、声を掛けた。
「邪魔はしないから近くに座っていても良いかな?」
今思えばかなり気味の悪い男だっただろう。でも彼女は「本を読む邪魔をしないなら良いですよ」と言ってくれた。
彼女が本から目を上げた時や、本を取りに行く時に少しづつ話をするようになる。この頃にはすでに自分の恋心を自覚していた。
ある時、目が疲れたのか、彼女が眼鏡を外した。
…こんな美少女だったのか!
これを知られたら彼女に求愛する男が続出するに違いない。
そう焦った俺は、思わず
「邪魔はしないから俺と恋人としてお付き合いしてくれないかな?」
と言ってしまっていた。彼女はきょとんとした後こう言った。
「本を読む邪魔をしないなら良いですよ」
会いに行くのもデートに誘うのも俺の方。
それでも公園の木陰で本を読む彼女の膝に頭を乗せると、片手で髪を撫でてくれる。
たまには本を置いて話をしてくれる。
抱きしめると抱き返してくれる。
「ハミルトン先生、恋人がいるんですか?」
青い大きな目を見開いてアリスが言う。
ああ、かわいい。
「まあ…でも俺は彼女にあまり好かれてはいないみたいですが」
「どうして?」
「連絡するのも、会いに行くのも俺の方からばかりなので。会っても彼女は本が優先ですし」
「ええ?恋人より本が優先だなんて…本当に、先生の事をそんなに好きじゃないのかもですね」
ズキン。
客観的に見てもそうなのか?それでも良いと言ったのは自分なのだが…やはりそう言われてしまうと胸が痛む。
「私だったら恋人をそんな不安にさせたりしないのに…」
目を伏せるアリスはとてもかわいい。
アリスが恥ずかしそうに頬を染めて「水を掛けられた後、救護室でカイル殿下と…口付けを…」と言った時、心の底から応援したいと思った。
カイルに婚約者がいようとも。それが自分の妹でも。
レイラはカイル殿下を幼い頃から慕っていた。それは知っているが、妹であろうと、アリスの邪魔をするなら許さない。
アリスは男爵家に引き取られるまでは平民として生活していた。男爵家と言う家柄も、言葉使いや礼儀作法なども、王子の相手としては相応しくないだろう。
カイルがアリスを護り、教育などで導くだろうが、ライアンもできる限りの協力と助力をしたいと思っている。
「傷が付いたな…」
ライアンはキャロラインとレイラの去った図書館の本棚の脇で、床に転がった指輪を拾うと、光にかざす。
そして少し眺めた後、ポケットに入れた。
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【自身の感情を疑え】
これはキャロラインが持って来た日記に書いてあった言葉だ。
「結局言えなかった…」
レイラは寮の部屋に戻りソファに座ってため息混じりに言った。
結局、キャロライン様に私が転生者な事、ゲームの事、強制力の事…言えなかったな。
だってキャロライン様、ちゃんとライアン兄様を好きだもの。なのに強制力でライアン兄様の気持ちがアリスに向いてしまったと知ったらどう思う?
強制力を排除することができるとしても、自分がそんな物でヒロインを好きになったり、悪役令嬢を憎んだりしているなんて思わないもの。自分の感情を疑うなんて、現実ではありえないわ…
「私がハミルトン家の娘じゃなければ、シナリオ通りにヒロインを苛めまくってやったのになあ」
レイラはそう呟く。
強制力の排除ができないなら、せめて「アリスを苛めた」と言う嫌われて当然の理由でカイルに嫌われたかった。何もしていないのに嫌われるなんて理不尽で腹立たしい。
「…でも、ハミルトン家の娘じゃなければカイルと幼なじみにならなかったし、カイルを好きになる事もなかったのか…」
複雑だなあ。
と、レイラはソファのクッションに顔を埋めながら呟いた。
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