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カイルはレイラを自分の部屋に連れ帰ると、ソファに並んで座った途端にレイラを抱きしめた。
「…どうしたの?カイル」
いつにも増してスキンシップが激しいな。アリスと会ったから?それにしても…
「霧が晴れた」
カイルはそう言うと、腕を緩めてレイラの顔を覗き込む。
「霧?」
「そう。頭の中にずっと薄くかかっていた霧が晴れたんだ」
「?」
「レイラが好きだ」
「!?」
「俺はレイラだけが、好きだと、一片の曇りもなく言える」
カイルが嬉しそうに笑ってレイラを見ている。
もしかして…
「もう俺には強制力は働いていない」
「…本当に?」
「本当だ。さっき階段から落ちた俺に駆け寄ろうとしたレイラを抱きしめた時、レイラへの愛しさだけで胸の中が一杯になった。あれからアリスを見ても何とも思わない」
本当に?
レイラはカイルの瞳をじっと見つめる。
「…傷が残ったな」
カイルが愛おしそうに普段は前髪で隠れているレイラの目尻から額に残る傷痕に触った。
「時間が経てばもう少し薄くなると思うけど…頭にも足にも傷は残るわ。カイル…嫌?」
「レイラが生きているなら身体についた傷痕など気にもならない。ただ…」
「ただ?」
「…俺はきっとレイラの心に傷をつけた。それが痕になって残るなら…一生かけて癒したい」
カイルは愛しさの溢れる瞳でレイラを見る。そして、額の傷痕に口付けた。
-----
「こここ公爵家の養女になって、サイラス殿下のきっ妃になります!」
モーリス公爵家に戻ったエマは、ミシェルの前で力を込めてそう言った。
「ふふ。じゃあエマお姉様ね」
ミシェルは微笑む。エマよりミシェルの方が二つ歳下なのだ。
「私が姉になるんですね…」
「そうよ。それで?この短時間に何があって決意したの?」
「あの、アリス様が…」
「アリス?」
かくかくしかじかと、エマはアリスに言われた事をミシェルに説明すると、はあ~と大きく息を吐いた。
「…大きな決断過ぎて実感が湧きません」
「そうね。これから色々な事が動けば実感も湧くわよ。それでサイラス殿下と気持ちは確かめ合ったんでしょう?今はそれだけ実感していれば良いんじゃない?」
「気持ち…」
エマの頬が真っ赤に染まる。
これは…サイラス殿下、早速キスくらいしたのかしら?
診察室からサイラスの部屋へと連れて来られたエマは、ソファへ所在無げに座っていた。
…ミシェル様に伴って、この部屋に入った事はあるけど、いつも部屋の隅に控えてて、ソファに座るのは初めてだわ。
王宮の侍女がやって来て、エマの前に紅茶を置いてくれる。
思わずペコリと頭を下げて、顔見知りでもある侍女に苦笑いされた。
「エマ」
エマの正面に座るサイラスは優しく微笑んでいる。
「…サイラス殿下」
「涙目になってる。緊張してる?」
「してます」
何しろ、今の今まで自分が侍女にお茶を淹れてもらう立場になるなど、考えた事もなかったのだ。
「少しづつ、慣れて行こう」
「は、はい」
でもでも、王宮や上位貴族の侍女の多くは貴族令嬢だわ。もしかして…子爵令嬢の私より、もっと身分の高い令嬢がサイラス殿下の婚約解消を知って殿下の妃の座を狙っていたりとか…
それで私がサイラス殿下の妃になるなんて納得いかなくて…
結婚後もサイラス殿下の側妃や愛妾になるのを狙っていたり…
「エマ?何考えてる?」
真横から声が聞こえて、エマは思わず「ひゃあ」と声を上げてしまう。
いつの間にかサイラスがエマの隣に座っている。
「多分、碌なことじゃないな」
サイラスは苦笑いするとエマの手を取る。
「サイラス殿下…」
「エマには『殿下』を付けずに呼んで欲しい」
ちゅっと音を立ててエマの指先に口付けた。
「ひゃっ!」
あまっ。甘い!!
「カイルがレイラに『呼び捨てで呼んで欲しい』と言ってたのは、なるほどこういう気持ちなのか」
「よ、呼び捨ては無理!です!」
「…じゃあ『サイラス様』」
「今すぐは無理です」
「ああ。いずれ、な」
慌てるエマにサイラスは微笑む。
こんなに甘い表情をされる方なの?
サイラスはエマの手を引き、自分の方へ引き寄せた。
ぽすん、とエマの頬がサイラスの胸に当たる。
ドキドキしすぎて、頭がクラクラする。
「エマ…顔が赤い」
「そ、それはそうですよ」
サイラスはエマの髪を撫でる。
「エマが碌なことじゃない事、考えなくて済むようにするから」
「大丈夫です。闘いますから」
サイラスの腕の中で、エマはぐっと拳を握った。
カイルはレイラを自分の部屋に連れ帰ると、ソファに並んで座った途端にレイラを抱きしめた。
「…どうしたの?カイル」
いつにも増してスキンシップが激しいな。アリスと会ったから?それにしても…
「霧が晴れた」
カイルはそう言うと、腕を緩めてレイラの顔を覗き込む。
「霧?」
「そう。頭の中にずっと薄くかかっていた霧が晴れたんだ」
「?」
「レイラが好きだ」
「!?」
「俺はレイラだけが、好きだと、一片の曇りもなく言える」
カイルが嬉しそうに笑ってレイラを見ている。
もしかして…
「もう俺には強制力は働いていない」
「…本当に?」
「本当だ。さっき階段から落ちた俺に駆け寄ろうとしたレイラを抱きしめた時、レイラへの愛しさだけで胸の中が一杯になった。あれからアリスを見ても何とも思わない」
本当に?
レイラはカイルの瞳をじっと見つめる。
「…傷が残ったな」
カイルが愛おしそうに普段は前髪で隠れているレイラの目尻から額に残る傷痕に触った。
「時間が経てばもう少し薄くなると思うけど…頭にも足にも傷は残るわ。カイル…嫌?」
「レイラが生きているなら身体についた傷痕など気にもならない。ただ…」
「ただ?」
「…俺はきっとレイラの心に傷をつけた。それが痕になって残るなら…一生かけて癒したい」
カイルは愛しさの溢れる瞳でレイラを見る。そして、額の傷痕に口付けた。
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「こここ公爵家の養女になって、サイラス殿下のきっ妃になります!」
モーリス公爵家に戻ったエマは、ミシェルの前で力を込めてそう言った。
「ふふ。じゃあエマお姉様ね」
ミシェルは微笑む。エマよりミシェルの方が二つ歳下なのだ。
「私が姉になるんですね…」
「そうよ。それで?この短時間に何があって決意したの?」
「あの、アリス様が…」
「アリス?」
かくかくしかじかと、エマはアリスに言われた事をミシェルに説明すると、はあ~と大きく息を吐いた。
「…大きな決断過ぎて実感が湧きません」
「そうね。これから色々な事が動けば実感も湧くわよ。それでサイラス殿下と気持ちは確かめ合ったんでしょう?今はそれだけ実感していれば良いんじゃない?」
「気持ち…」
エマの頬が真っ赤に染まる。
これは…サイラス殿下、早速キスくらいしたのかしら?
診察室からサイラスの部屋へと連れて来られたエマは、ソファへ所在無げに座っていた。
…ミシェル様に伴って、この部屋に入った事はあるけど、いつも部屋の隅に控えてて、ソファに座るのは初めてだわ。
王宮の侍女がやって来て、エマの前に紅茶を置いてくれる。
思わずペコリと頭を下げて、顔見知りでもある侍女に苦笑いされた。
「エマ」
エマの正面に座るサイラスは優しく微笑んでいる。
「…サイラス殿下」
「涙目になってる。緊張してる?」
「してます」
何しろ、今の今まで自分が侍女にお茶を淹れてもらう立場になるなど、考えた事もなかったのだ。
「少しづつ、慣れて行こう」
「は、はい」
でもでも、王宮や上位貴族の侍女の多くは貴族令嬢だわ。もしかして…子爵令嬢の私より、もっと身分の高い令嬢がサイラス殿下の婚約解消を知って殿下の妃の座を狙っていたりとか…
それで私がサイラス殿下の妃になるなんて納得いかなくて…
結婚後もサイラス殿下の側妃や愛妾になるのを狙っていたり…
「エマ?何考えてる?」
真横から声が聞こえて、エマは思わず「ひゃあ」と声を上げてしまう。
いつの間にかサイラスがエマの隣に座っている。
「多分、碌なことじゃないな」
サイラスは苦笑いするとエマの手を取る。
「サイラス殿下…」
「エマには『殿下』を付けずに呼んで欲しい」
ちゅっと音を立ててエマの指先に口付けた。
「ひゃっ!」
あまっ。甘い!!
「カイルがレイラに『呼び捨てで呼んで欲しい』と言ってたのは、なるほどこういう気持ちなのか」
「よ、呼び捨ては無理!です!」
「…じゃあ『サイラス様』」
「今すぐは無理です」
「ああ。いずれ、な」
慌てるエマにサイラスは微笑む。
こんなに甘い表情をされる方なの?
サイラスはエマの手を引き、自分の方へ引き寄せた。
ぽすん、とエマの頬がサイラスの胸に当たる。
ドキドキしすぎて、頭がクラクラする。
「エマ…顔が赤い」
「そ、それはそうですよ」
サイラスはエマの髪を撫でる。
「エマが碌なことじゃない事、考えなくて済むようにするから」
「大丈夫です。闘いますから」
サイラスの腕の中で、エマはぐっと拳を握った。
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