第二王子は婚約破棄して王太子になりたいらしい。

ねーさん

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 舞踏会は五日後だ。
「講堂に行けば殿下、いるかな?」
 週末にフィオナは、舞踏会の会場である講堂を覗いて見る事にした。
 もし声が掛けられそうなら掛けるけど、どんな様子なのか見るだけでも良いわ。
 寮から講堂は歩いてすぐだ。
 フィオナが講堂に近付くと、横開きの扉が開いているのが見えた。
 誰かはいるのね。
 扉から見える講堂の中は暗幕などで光が入らないようにしてあるのか、随分と暗かった。
 フィオナはそっと中を窺う。
 あ、レオン殿下。いたわ。
 講堂の奥の一段高くなった舞台に立つレオンが目に入った。
「二週間ぶり…かな?」
 フィオナがレオンの姿を見るのは、レオンが楽しそうに婚約を解消すると言って以来だった。
 暗いからよく分からないけど、顔色悪い…ように見えるわ。
「キャストン様」
 ドキン!
 後ろから声を掛けられて、フィオナの心臓が跳ねた。
 べべべ別に悪い事してる訳じゃないのに!
 フィオナが胸に手を当てて振り向くと、ノエルが立っている。
「ジ、ジルベスター様」
「殿下に会いに来られたのですか?」
「ちょっ!」
 フィオナは心なしか嬉しそうなノエルの腕を掴むと、中から見えない位置まで引っ張って行く。
 
 ノエルの腕を掴むフィオナを、レオンが舞台の上から見ていた。
「フィオ?」
「どうされました?レオン殿下」
 舞台の袖から女性の声が聞こえる。
「いや。…ノエルが見えた気がしたんだ」

 講堂から少し離れた所までノエルの腕を引いて歩く。
「キャストン様?」
 ノエルの腕を離すと、フィオナは俯いた。
「いえ。あの…あのね。今、殿下と喧嘩してて。それでちょっと様子を見に来ただけで、あの、会いに来た訳じゃなくてね」
 フィオナがしどろもどろに言うと、ノエルがふんわりと微笑んだ。
 …かわいい。さすがヒロインくん。私なんかよりよっぽどかわいいわ。
「つまり気不味いので今は会いたくない、と言う事ですか?」
「そう!そういう事!」
「…成程。婚約者様と喧嘩されてたから殿下の機嫌が悪かったのか…」
「え?」
「この間は興奮状態のようだと言いましたけど、一昨日位からは逆にものすごく不機嫌だったんです」
「眠いから?」
 フィオナがそう言うと、ノエルはふっと吹き出す。
「さすがに眠いからじゃないでしょうけど…」
 くすくす笑うノエル。
 でも私、二週間はレオン殿下と会ってないもの。一昨日からの不機嫌に私は関係ないわ。
 ついでに言えば寝不足だって。婚約解消するって殿下が言った時にはもう目の下に隈があったんだもの、私とは関係ないのよ。
 …私とは関係ない処で殿下が何か思い悩む事があったとしても、それを打ち明けてくれるような仲じゃ…なかったのよ。

 ガタンッ
 その時、講堂の中から大きな音と「きゃあ!」と言う女性の声が聞こえて来た。
「レオン殿下!」
「殿下!」
 複数の男性の声が聞こえた。
 ノエルが講堂の扉に向かって走り出す。フィオナもノエルに続いて走り出した。

 ノエルの後からフィオナが飛び込むように講堂に入ると、舞台の上に三人のしゃがみこんだ男性と、二人の立った男性と、二人の女性が集まっているのが見えた。生徒会の役員とサポートメンバーや手伝いの生徒のようだ。
 そしてその人の隙間から、横になった人の足が見える。
 …あれは、レオン殿下?
「担架!」
「そこにある暗幕を使おう。その方が早い」
「救護室に連絡!」
 舞台の下で立ち尽くすフィオナの横を男性たちが駆けて行った。
「どうしたんだ!?」
 ノエルがしゃがみ込んだ男性の肩を掴んで聞くと、青褪めた男性が言う。
「脚立が倒れて…」
「落ちたのか!?」
「いや、倒れた脚立が頭に当たったんだ」
 
 しゃがみこんだ男性の位置がずれて、フィオナの目に横向きに倒れたレオンの姿が飛び込んで来た。
 …気を失ってるの?
 青白い顔、額に傷があり、血が流れている。
 フィオナの後ろから男性たちが横を駆けて行き、暗幕を広げると、何人かでレオンを乗せる。
 そして四人で持ち上げて、講堂の扉へ向かう。
「キャストン様、一緒に来てください」
 頭の位置を持っているノエルがフィオナに言った。
「…は、はい!」
 フィオナは震える手を押さえながらノエルたちに着いて駆け出した。


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