第二王子は婚約破棄して王太子になりたいらしい。

ねーさん

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 立太子宣言をしてから一カ月が経ち、王の退位、王太子の即位まであと四カ月弱となった。
 レオンは第二子王子派の支持を固める事と、第一王子派を調略するために動いている。
 学園の夏季休暇が残り三週半。レオンとフィオナの婚約解消はまだ公表されていない。教会は正当な婚約が解消される許可をなかなか出さないからだ。
 新学期近くでの公表になってフィオナの負担を増やしたくはないが…
「父上が即位した後の最初の誕生日…つまり来年の年明けが王太子の勅命だが、戴冠式までには支持を固めておきたいな…」
 レオンは執務室でため息混じりに言う。
「一番の障壁はキッシンジャー侯爵家とオズバーン公爵ですかね」
 レオンの侍従パスカルが言うと、レオンは頷く。
「まあまだオズバーン公爵には奥の手があるが、キッシンジャー侯爵家は侯爵本人と、スーザン嬢が強硬だからな」
「そりゃあまあようやく手に入れた『第一王子の婚約者』の立場も、その第一王子が王太子となり、王になるからこそ手に入れたかったんですからね」
 オズバーン公爵は第一王子ブライアンの母方の祖父、つまり王太子の亡くなった正妃の父親だ。
 スーザンはブライアンの婚約者。父であるキッシンジャー侯爵の強力な後押しによってブライアンの婚約者に選ばれた。ブライアンが王太子にならない事態をキッシンジャー侯爵家が受け入れ難いのは容易に想像できる。
「スーザン様本人はブライアン殿下よりレオン殿下の方が好きそうですけどね」
「は?」
 パスカルの言葉に意外そうにレオンが応える。
「意外と本人は気付かない物なんですかね?まあブライアン殿下と婚約している身であからさまな真似はできませんけど、スーザン様、フィオナ様に会う度に嫌味言ってましたし、学園でもスーザン様が在学中はフィオナ様に度々絡んでいたようですよ」
「……」
 フィオナはそんな事何も言ってはいなかったが…いや、そういえば、誰かに「かわい気がない」と言われたような事を言っていたか。
「まあフィオナ様も学園では言い返してスーザン様とその取り巻きの鼻を明かしたりしてたみたいですけど」
 想像して、ふっとレオンは微笑む。
「さすがフィオナだな」

 しかし、と、レオンは考える。もしスーザンがブライアンよりレオンを好きだとすれば。
「フィオナとの婚約を解消した後、スーザン・キッシンジャーと婚約すると言えばどうだろうか?」
「…スーザン様と、誰が?」
「俺が」
 レオンが自分を指差すと、パスカルは大きく目を見開いた。
「ええ!?」
「スーザン嬢は俺と結婚できて、キッシンジャー侯爵は娘を王太子妃にできる」
「まあ…キッシンジャー侯爵家を寝返らせるには良い手かも知れませんが…殿下はそれで良いのですか?」
 レオンは眉の上に微かに残る傷に触れた。
「…誰だって同じだろ?」
 フィオナでないなら。
 レオンはその言葉を飲み込んだ。

「今日もマルティナ殿下とフィオナ様はつつがなくお過ごしでしたよ」
 夜、レオンの執務室でノエルが言った。
「ノエル、毎日フィオナの所へ…キャストン邸に行ってるのか?」
「マルティナ殿下とフィオナ様の様子を窺っておけと言われたのはレオン殿下ですよ?それに、屋敷を訪れてお二方と話すのは週に一回だけです。後は影から窺ってるだけで顔を合わせたりはしてません」
「…そうだな。俺だな」
 レオンは執務机に肘をついてため息を吐いた。
「そろそろ教会から婚約解消の許可が下りる。そうしたらマルティナを迎えに行く」

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「今朝、教会から知らせが来まして、婚約解消の許可が下りたそうです」
 週に一度やって来るノエルが、フィオナを見ながら言った。
「そう。思ったより日数が掛かったわね」
「正当な婚約をどちらかの瑕疵もなしに解消するんだから、それはそうでしょ」
 マルティナが言うと、フィオナは頷く。
「まあそうね。それでいつ頃発表されるの?」
 ノエルは首を傾げる。
「それは聞いてませんけど…先ずはマルティナ殿下を迎えに来られて、それからすぐに、だと思います」
 フィオナはノエルを窺うように見ながら言う。
「ノエル様は…随分とレオン殿下に信頼されてるのね?」
「はい?」
「だって、元々舞踏会での手伝いでしょ?それでも今はこうして側仕えみたいにしてるじゃない。それも妹と、解消するとは言え婚約者の所へ定期的に遣わされるなんて…これはかなりの信頼度じゃない?」
「そうですかね?」
 ノエルはきょとんとした表情だ。

 それにしても、独身、実質婚約者なしの女性の所に定期的に行かせるなんて…ヒロインくんだから、ないと思ってたけど、ノエル様を私の新しい婚約者としてレオン殿下が推してるって事もあり得る…?
 あ、独身、婚約者なしはティナもだわ。
 でもノエル様は男爵家の令息だから、身分的にティナはないわね。伯爵令嬢の私でも微妙な処だけど…将来の王の側近ならおかしくはないし。
 でも私はノエル様はヒロインくんとしてしか見れないし、レオン殿下に近しい人と結婚するのは嫌だな…

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