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「レオン殿下ったら!私の面白い妹…かわいい妹を捨てるなんて、見損なったわ!」
「お姉様、言い直しても、完全に『面白い妹』まで口から出てます」
キャストン邸の執務室のソファに三人の女性が座っている。
その一人、婚家から里帰りしているフィオナの姉パトリシアが言うと、フィオナが冷静に言い返す。
「だって、レオン殿下ったら、あんな手まで使って婚約したのに」
「あんな手?」
マルティナがきょとんとして言う。
パトリシアが「レオンは婚約を断るなら『フィオナとキスした仲だと公表してやる』と脅した」と説明すると、マルティナは
「キス…?って、え?レオン兄様とフィオナって婚約する前からそんなに親しかったの?」
と困惑した様子で言う。
「…違うわよ!生まれて初めて『王子妃になるのは嫌』って言われたのが気に障ったんでしょ。ただのいやがらせよ。あれは」
フィオナは眉を顰めて言った。
「ふーん。レオン兄様、その頃からフィオナが特別だったのね」
「…何その言い方。今更ロマンス方向に持って行こうとするの、やめてよティナ」
心底嫌そうにフィオナが言うと、マルティナは「ごめん」と小さく言った。
「それにしても、レオン殿下の宣言から一週間?ブライアン殿下の方に動きはないの?」
パトリシアが執務机の方を振り向いて問うと、女同士の会話には入らないとばかりに書類を見ていたフィオナの兄レナードが顔を上げた。
「私もあれから王城に上がってないから詳しくは分からないけど、ブライアン殿下は静観の構えのようだね」
レナードは王城で文官をしている。が、レオンの立太子宣言の後は「レオンの婚約者の兄」の立場を慮り、登城を控えているのだ。
「どうしてブライアンお兄様は動かれないのかしら?」
マルティナが首を傾げる。
「ブライアン殿下は長子で、正妃の御子だもの。通常であればブライアン殿下が勅命を受けるのが当然だから、敢えて騒がないのかしらね?」
パトリシアがそう言うと、レナードは顎に手を当てて考えながら言う。
「姉上の言う事も分かるが、ならばブライアン殿下もご自分が立太子すると宣言なさっても良いのにな」
ブライアンは現王太子の第一子で、正妃の産んだ王子。
レオンは第二子で、側妃の産んだ王子。
第一王子が王位継承する決まりがある訳ではないが、この国では男の長子相続が一般的なので、通常ならばブライアンが王太子となるのが当然の流れであり、レオンが王太子の座を奪おうとするなど考えられない。
まして、正妃と側妃の子とは言え、兄弟仲が悪かった訳でもないのだ。
「でも、そうしたら『兄弟全面対決!』って感じにならない?そうなるのを避けてるのかも」
フィオナが言うと
「ふむ。国王陛下や王太子殿下も、レオン殿下を咎める様子もなく、ブライアン殿下を擁立しようとする様子もなく、同じく静観されているからなあ…もしかすると、レオン殿下の立太子は陛下や王太子殿下も諒解されているのかも…案外ブライアン殿下も」
レナードが考えながら言う。
「…私には誰も何も話してくれないのね」
ポツリとマルティナが言う。
「ティナ…」
「この国では女性が爵位や家を継ぐ事はないし、私もいずれどこか他の家や国に嫁ぐ事になるから知らされないのだろうけど…何だか淋しいな」
苦笑いしながら俯くマルティナ。フィオナはマルティナの手を取り手の甲を摩る。
「ティナ、王宮へ戻ったらレオン殿下がきっと話してくれるわよ」
「そうかしら?結局私は何も知らされずにどこかレオン兄様にとって有利になる所へ嫁がされそうな気がするわ」
マルティナは自虐的に笑った。
「でもヒロ…ノエル様が来て『レオン殿下がマルティナ殿下を迎えに来るまで待っていてください』って言ってたじゃない。レオン殿下はティナを大切に思ってるわ」
舞踏会の日の夜、キャストン邸を訪れたノエルは、レオンからの伝言としてそう告げたのだ。
私への伝言は「キャストン家の皆様に迷惑を掛けて済まない」だけ。そもそも私個人への伝言でもないし。まあそりゃあそうでしょうけども。
でもヒロインくん、レオン殿下側の事情も知ってるのかもだし、いつの間か王女である妹への伝言を頼まれるくらい信頼されてるし…これがヒロイン力って事なのかな。
レオン殿下が王太子として立たれる時、隣に立つのがどこの令嬢になるのか、今は分からないけど、殿下の側にはヒロインくんが寄り添ってるんだろうな…
「レオン殿下ったら!私の面白い妹…かわいい妹を捨てるなんて、見損なったわ!」
「お姉様、言い直しても、完全に『面白い妹』まで口から出てます」
キャストン邸の執務室のソファに三人の女性が座っている。
その一人、婚家から里帰りしているフィオナの姉パトリシアが言うと、フィオナが冷静に言い返す。
「だって、レオン殿下ったら、あんな手まで使って婚約したのに」
「あんな手?」
マルティナがきょとんとして言う。
パトリシアが「レオンは婚約を断るなら『フィオナとキスした仲だと公表してやる』と脅した」と説明すると、マルティナは
「キス…?って、え?レオン兄様とフィオナって婚約する前からそんなに親しかったの?」
と困惑した様子で言う。
「…違うわよ!生まれて初めて『王子妃になるのは嫌』って言われたのが気に障ったんでしょ。ただのいやがらせよ。あれは」
フィオナは眉を顰めて言った。
「ふーん。レオン兄様、その頃からフィオナが特別だったのね」
「…何その言い方。今更ロマンス方向に持って行こうとするの、やめてよティナ」
心底嫌そうにフィオナが言うと、マルティナは「ごめん」と小さく言った。
「それにしても、レオン殿下の宣言から一週間?ブライアン殿下の方に動きはないの?」
パトリシアが執務机の方を振り向いて問うと、女同士の会話には入らないとばかりに書類を見ていたフィオナの兄レナードが顔を上げた。
「私もあれから王城に上がってないから詳しくは分からないけど、ブライアン殿下は静観の構えのようだね」
レナードは王城で文官をしている。が、レオンの立太子宣言の後は「レオンの婚約者の兄」の立場を慮り、登城を控えているのだ。
「どうしてブライアンお兄様は動かれないのかしら?」
マルティナが首を傾げる。
「ブライアン殿下は長子で、正妃の御子だもの。通常であればブライアン殿下が勅命を受けるのが当然だから、敢えて騒がないのかしらね?」
パトリシアがそう言うと、レナードは顎に手を当てて考えながら言う。
「姉上の言う事も分かるが、ならばブライアン殿下もご自分が立太子すると宣言なさっても良いのにな」
ブライアンは現王太子の第一子で、正妃の産んだ王子。
レオンは第二子で、側妃の産んだ王子。
第一王子が王位継承する決まりがある訳ではないが、この国では男の長子相続が一般的なので、通常ならばブライアンが王太子となるのが当然の流れであり、レオンが王太子の座を奪おうとするなど考えられない。
まして、正妃と側妃の子とは言え、兄弟仲が悪かった訳でもないのだ。
「でも、そうしたら『兄弟全面対決!』って感じにならない?そうなるのを避けてるのかも」
フィオナが言うと
「ふむ。国王陛下や王太子殿下も、レオン殿下を咎める様子もなく、ブライアン殿下を擁立しようとする様子もなく、同じく静観されているからなあ…もしかすると、レオン殿下の立太子は陛下や王太子殿下も諒解されているのかも…案外ブライアン殿下も」
レナードが考えながら言う。
「…私には誰も何も話してくれないのね」
ポツリとマルティナが言う。
「ティナ…」
「この国では女性が爵位や家を継ぐ事はないし、私もいずれどこか他の家や国に嫁ぐ事になるから知らされないのだろうけど…何だか淋しいな」
苦笑いしながら俯くマルティナ。フィオナはマルティナの手を取り手の甲を摩る。
「ティナ、王宮へ戻ったらレオン殿下がきっと話してくれるわよ」
「そうかしら?結局私は何も知らされずにどこかレオン兄様にとって有利になる所へ嫁がされそうな気がするわ」
マルティナは自虐的に笑った。
「でもヒロ…ノエル様が来て『レオン殿下がマルティナ殿下を迎えに来るまで待っていてください』って言ってたじゃない。レオン殿下はティナを大切に思ってるわ」
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私への伝言は「キャストン家の皆様に迷惑を掛けて済まない」だけ。そもそも私個人への伝言でもないし。まあそりゃあそうでしょうけども。
でもヒロインくん、レオン殿下側の事情も知ってるのかもだし、いつの間か王女である妹への伝言を頼まれるくらい信頼されてるし…これがヒロイン力って事なのかな。
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