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「レオン殿下、レナード・キャストン殿がお見えです」
執務室のレオンの元に侍従パスカルが歩み寄り、小声で言う。
「レナード殿が?」
「火急の用件…と」
「通せ」
パスカルがレナードを伴って執務室に入って来る。
「レオン殿下、フィオナが攫われました」
レナードはレオンを睨むように見据えて言った。
「フィオナが!?」
レオンは弾かれたように立ち上がる。
「正確には、マルティナ殿下の身代わりとして。攫ったのはレオン殿下の侍従だとマルティナ殿下が証言しています。誰なのか教えてください」
「俺の侍従?」
レオンは腹心の侍従へ鋭い声を飛ばす。
「パスカル!」
「はっ!今日ここにいない者は…ヘンリー•トンプソンです!」
「トンプソンとは、子爵家の?…なら、子爵家の別荘が湖の側にありますね」
レナードは少し考えると、執務室を出ようとする。
「俺も行く」
レオンは傍らの剣を手に取った。
「殿下はフィオナとの婚約を解消されるんですから、もう関係ないでしょう?犯人が分かればあとはこちらで」
レナードがレオンを留めようとすると
「フィオが危険な目に遭っているのにじっとしていられるか!」
レオンはそう叫ぶと執務室を飛び出した。
-----
「はあ。はあ。はあ」
フィオナは肩で息をする。
「抵抗するねぇ。かわいいなぁ」
使者、ヘンリー・トンプソンは楽し気に血の付いた唇を舐める。
フィオナはヘンリーに両手を押さえられている。前開きのブラウスはボタンが飛んで胸当てがずらされ、左胸が露わになっていた。
ヘンリーが腹の上に乗っているので身動きが取れない。
「…何でっ!こんな事するのよ!?」
「お前こそ、俺がレオン殿下の遣いじゃないのに気付いていて、何故着いて来た?」
「もし本当にレオン殿下の遣いだったら、と思っただけよ!それに、こんな目に遭うのはティナより私の方がレオン殿下が傷付かないわ!」
「婚約者がこんな事されりゃあ傷付くだろ?」
ヘンリーは面白そうに言うと、フィオナの手を押さえたまま、胸の膨らみに顔を近付ける。
「…婚約者なんていくらでも挿げ替えられるもの」
「声が震えてるぜ」
ベロリと膨らみを舐められる。
「ひっ」
バアンッ!
フィオナが息を飲んだ時、部屋の扉が勢い良く開いた。
「フィオ!」
レオンとレナードが部屋に駆け込んで来る。
え?レオン殿下?…幻かな、コレ。
レオンはフィオナに覆い被さっていたヘンリーの腹を蹴り上げると、フィオナを抱きしめた。
レオンに蹴られたヘンリーはベッドから落ちた所をレナードに取り押さえられる。
後から部屋に入って来たパスカルが素早くヘンリーを縛り上げ、レナードが口にハンカチを押し込んだ。
「フィオ…」
フィオナはレオンにぎゅうぎゅうと抱きしめられたまま混乱していた。
「…殿下…どうして…?」
「『殿下』なんて言わないでくれ…」
幻ではないみたいだけど、じゃあ夢?
「これは…随分と都合の良い夢ね…」
「フィオ?」
レオンは抱きしめる腕を緩めると、フィオナの顔を覗き込む。
「…何これ、え?夢じゃないの?」
目の前にレオン。いつもの様に顔を覗き込む紫の瞳…に、薄っすらと涙。
フィオナはレオンの目尻にそっと触れた。
「嫌がらずに触らせてくれるなんて、やっぱり夢?」
レオンは堪え切れずに笑い出す。
「はは。…相変わらずフィオは面白いな」
「え?これ夢じゃないの?」
「夢じゃない」
レオンはまたフィオナを抱きしめた。
「レオン殿下、そろそろ離してください」
「『殿下』と呼ぶな」
「レオン様、そろそろ離してください」
「嫌だ」
「え?狡い」
くっくっとフィオナを抱きしめたまま、レオンが笑いを噛み殺している。
「フィオ。好きだ」
「え?」
「俺はやっぱりフィオが好きだ」
「…初耳です」
「言った事なかったか?」
レオンは腕を緩めると、フィオナの顔を覗き込む。
「ないですよ」
「顔が赤い」
フィオナが頬を染めてレオンを上目遣いで睨むと、レオンは右手でフィオナの頬に触れた。
「レオン殿下、フィオナにそれ以上手を出すつもりなら、二度と婚約解消は認めませんよ」
部屋の入り口にレナードが立っている。
「お兄様!」
わわ。身内にこんな処を見られるなんて恥ずかしい!
フィオナはレオンから離れようと胸を押すが、レオンはフィオナを離さず、ますます強く抱き込んだ。
「ああ。分かってる」
「なら良いんです。これからパスカル殿たちはヘンリー・トンプソンを王城へ連行します。私は我が家でマルティナ殿下がお待ちですのでフィオナの無事を知らせて、馬車でここへ戻ります。それまではごゆっくり」
レナードはそう言うと、扉を閉じ…ようとして、また「レオン殿下」と呼び掛ける。
「どうした?」
「マルティナ殿下に伯爵家へ降嫁頂くのは、不可能ですか?」
「え?」
…ってお兄様!?
「…善処しよう」
「ありがとうございます」
レナードは恭しく礼を取ると、扉を閉じた。
「レオン殿下、レナード・キャストン殿がお見えです」
執務室のレオンの元に侍従パスカルが歩み寄り、小声で言う。
「レナード殿が?」
「火急の用件…と」
「通せ」
パスカルがレナードを伴って執務室に入って来る。
「レオン殿下、フィオナが攫われました」
レナードはレオンを睨むように見据えて言った。
「フィオナが!?」
レオンは弾かれたように立ち上がる。
「正確には、マルティナ殿下の身代わりとして。攫ったのはレオン殿下の侍従だとマルティナ殿下が証言しています。誰なのか教えてください」
「俺の侍従?」
レオンは腹心の侍従へ鋭い声を飛ばす。
「パスカル!」
「はっ!今日ここにいない者は…ヘンリー•トンプソンです!」
「トンプソンとは、子爵家の?…なら、子爵家の別荘が湖の側にありますね」
レナードは少し考えると、執務室を出ようとする。
「俺も行く」
レオンは傍らの剣を手に取った。
「殿下はフィオナとの婚約を解消されるんですから、もう関係ないでしょう?犯人が分かればあとはこちらで」
レナードがレオンを留めようとすると
「フィオが危険な目に遭っているのにじっとしていられるか!」
レオンはそう叫ぶと執務室を飛び出した。
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「はあ。はあ。はあ」
フィオナは肩で息をする。
「抵抗するねぇ。かわいいなぁ」
使者、ヘンリー・トンプソンは楽し気に血の付いた唇を舐める。
フィオナはヘンリーに両手を押さえられている。前開きのブラウスはボタンが飛んで胸当てがずらされ、左胸が露わになっていた。
ヘンリーが腹の上に乗っているので身動きが取れない。
「…何でっ!こんな事するのよ!?」
「お前こそ、俺がレオン殿下の遣いじゃないのに気付いていて、何故着いて来た?」
「もし本当にレオン殿下の遣いだったら、と思っただけよ!それに、こんな目に遭うのはティナより私の方がレオン殿下が傷付かないわ!」
「婚約者がこんな事されりゃあ傷付くだろ?」
ヘンリーは面白そうに言うと、フィオナの手を押さえたまま、胸の膨らみに顔を近付ける。
「…婚約者なんていくらでも挿げ替えられるもの」
「声が震えてるぜ」
ベロリと膨らみを舐められる。
「ひっ」
バアンッ!
フィオナが息を飲んだ時、部屋の扉が勢い良く開いた。
「フィオ!」
レオンとレナードが部屋に駆け込んで来る。
え?レオン殿下?…幻かな、コレ。
レオンはフィオナに覆い被さっていたヘンリーの腹を蹴り上げると、フィオナを抱きしめた。
レオンに蹴られたヘンリーはベッドから落ちた所をレナードに取り押さえられる。
後から部屋に入って来たパスカルが素早くヘンリーを縛り上げ、レナードが口にハンカチを押し込んだ。
「フィオ…」
フィオナはレオンにぎゅうぎゅうと抱きしめられたまま混乱していた。
「…殿下…どうして…?」
「『殿下』なんて言わないでくれ…」
幻ではないみたいだけど、じゃあ夢?
「これは…随分と都合の良い夢ね…」
「フィオ?」
レオンは抱きしめる腕を緩めると、フィオナの顔を覗き込む。
「…何これ、え?夢じゃないの?」
目の前にレオン。いつもの様に顔を覗き込む紫の瞳…に、薄っすらと涙。
フィオナはレオンの目尻にそっと触れた。
「嫌がらずに触らせてくれるなんて、やっぱり夢?」
レオンは堪え切れずに笑い出す。
「はは。…相変わらずフィオは面白いな」
「え?これ夢じゃないの?」
「夢じゃない」
レオンはまたフィオナを抱きしめた。
「レオン殿下、そろそろ離してください」
「『殿下』と呼ぶな」
「レオン様、そろそろ離してください」
「嫌だ」
「え?狡い」
くっくっとフィオナを抱きしめたまま、レオンが笑いを噛み殺している。
「フィオ。好きだ」
「え?」
「俺はやっぱりフィオが好きだ」
「…初耳です」
「言った事なかったか?」
レオンは腕を緩めると、フィオナの顔を覗き込む。
「ないですよ」
「顔が赤い」
フィオナが頬を染めてレオンを上目遣いで睨むと、レオンは右手でフィオナの頬に触れた。
「レオン殿下、フィオナにそれ以上手を出すつもりなら、二度と婚約解消は認めませんよ」
部屋の入り口にレナードが立っている。
「お兄様!」
わわ。身内にこんな処を見られるなんて恥ずかしい!
フィオナはレオンから離れようと胸を押すが、レオンはフィオナを離さず、ますます強く抱き込んだ。
「ああ。分かってる」
「なら良いんです。これからパスカル殿たちはヘンリー・トンプソンを王城へ連行します。私は我が家でマルティナ殿下がお待ちですのでフィオナの無事を知らせて、馬車でここへ戻ります。それまではごゆっくり」
レナードはそう言うと、扉を閉じ…ようとして、また「レオン殿下」と呼び掛ける。
「どうした?」
「マルティナ殿下に伯爵家へ降嫁頂くのは、不可能ですか?」
「え?」
…ってお兄様!?
「…善処しよう」
「ありがとうございます」
レナードは恭しく礼を取ると、扉を閉じた。
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