第二王子は婚約破棄して王太子になりたいらしい。

ねーさん

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 レナードが閉めた扉を眺めながらレオンが言う。
「ティナとレナード殿は恋仲になったのか?」
「いえ…まだ違うと思います」
「まだ?」
「これからお兄様がティナを口説くつもりではないかと」
「その状態で俺に降嫁の話をするとは、レナード殿は余程自信があるのか?」
「うーん…結局結婚できないなら口説いてもお互い辛いだけなんで、確約が欲しかったのかも知れませんが…」
「成程な」
「でも、王女が伯爵家に降嫁するなんて、無理なんじゃないですか?」
 今まで王女が降嫁した事があるのは公爵家、侯爵家まで。伯爵家に降嫁した前例はない。
「難しいのは確かだが…ティナがそう望むなら叶えてやりたい。つまりレナード殿次第だな。ただ…問題がある」
「え?」
「俺がフィオと結婚して、ティナがレナード殿と結婚したら、さすがにキャストン家の権勢が強くなり過ぎる」
 俺がフィオと、結婚して…って結婚?
「でも婚約解消の許可下りたんですよね?」
「ああ。また婚約したいと教会に申請しても今度はなかなか許可されないだろうな」
 …ですよね。
 教会も同じ相手と婚約解消した途端にまた婚約したいなんて言えば、さすがに怒るんじゃないかな。

「フィオ」
 レオンがフィオナの顔を覗き込む。真剣な表情に思わずフィオナは息を飲んだ。
「俺はフィオをもう絶対に離さない。教会の許可など何年掛かろうと構わないんだ」
「…あ、あの…じゃあノエル様は?」
「ノエル?」
 レオンが眉を顰める。
 さすがにヒロインくんの名前を出す空気じゃなかったかも。でもハッキリさせておきたいし…
「私、レオン様はノエル様を私の結婚相手に充てがうつもりなのかと思ったり思わなかったりなんかしてたんですけども」
「回りくどいな」
「もしくは、ノエル様はレオン様の恋人なのかと」
「……は?」
 あ、レオン様の呆気に取られた表情かお、レアだわ。
「ノエルは男だぞ?」
「世の中には同性が好きな人もいますよね?」
「いる。いるが俺は違う」
「あれだけかわいかったらその気がない人もその気になるのかな~と」
 ガシッとレオンがフィオナの両肩を掴んだ。
「…フィオ。俺が好きなのはフィオだ」
「だって!そんな事言われた事ないし、大体二人の時はレオン様私に絶対触れないようにしてたじゃないですか!」
「そりゃあ、触れたら止まらなくなるからだ!」
 は?
「とま?ら、なく?」
 フィオナの肩を掴んだまま、レオンは視線を逸らす。耳が微かに赤い。
「二人きりの時触れたら、キスくらいじゃ済まん」
 あかっ!赤くなってるレオン様、レア。超レア!
 …あれ?じゃあ完全に二人きりの今は…?
「だが今はキスだけで我慢してやるから、俺と二人の時に他の男の名前を口にするな」
 え?
 レオンの手が、フィオナの頬に移動して、ゆっくりと顔が近付いた。

 唇が重なって…
 な、長いんですけど?
「レオン…様っ!」
「何だ?」
 唇を合わせたままでレオンは言う。フィオナはレオンとの顔の間に手を入れて、レオンの口を覆った。
「…手加減!して!」
「はは」
 真っ赤になったフィオナが言うと、レオンは嬉しそうに笑った。
「…俺は、もう後悔したくないんだ」
「後悔?」
「思い出したんだ」
 レオンはまたフィオナを抱き寄せた。

-----

「レナード様!フィオナは!?」
 レナードがキャストン邸に戻ると、マルティナが玄関へと駆け出て来て、レナードの腕を両手で掴んだ。
「フィオナは無事です。レオン殿下が助けてくださいました」
「レオン兄様が?」
「どうやらあの二人の婚約解消はなくなりそうですよ」
「…何だかよく分からないけど、それは良かったわ」
「詳しくは後ほど説明します。これから馬車を出して二人を迎えに行きます…が」
 レナードは自身の腕をぎゅっと掴んでいるマルティナの手に、もう片方の自分の手を重ねた。
「レナード様?」
「マルティナ殿下、私と結婚して頂けませんか?」
「…え?」
 マルティナが目を見開いてレナードを見上げる。
「一カ月半、同じ家で生活して…最近、貴女がかわいくて仕方ないんです。先程も、フィオナが貴女に変装しているのを見て、貴女を危険な目に遭わせるより、フィオナをそのまま行かせる事を選びました」
「そんな」
「もちろん絶対無事に助け出すつもりでしたが」
 レナードはマルティナの手をきゅっと握る。
「しがない伯爵家の次期当主でしかない私が、王女殿下をお迎えしたいなどと分不相応なのは重々承知の上ですが、どうか前向きに考えて頂けませんか?」
「レナード様…」
 レナードはマルティナの指先に口付けた。

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