第二王子は婚約破棄して王太子になりたいらしい。

ねーさん

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「御祖父様が、母上を…?」
 ブライアンの手が小刻みに震え出す。
「…ブライアンが生まれた時、髪は金色で瞳は青かった。直ぐにあの男の子供だと判った。ただ大きくなるに連れ、髪や瞳の色が変わる事はある。『不義の子を生んだ』と怯えるアデラに、もう少し様子を見ないと王太子の子ではないと断言する事はできないと言った」
 しかし。とレオナルドは言う。
 怯えたアデラは自分の部屋に閉じこもり、ブライアンを外に出さないようにした。そして、王太子とも、硝子職人の恋人とも、会う事をを拒んだ。
 そんな状態が二年続いて、王太子は側妃を迎える事となる。

 アデラと王太子との間に次の子が望めないとなると、ブライアンは何としても「王太子の子」でなければならないのだ。
 ブライアンが三歳になる頃、側妃が懐妊したとの報が流れた。
 側妃の生む子が、もしも男児ならば…王位はその男児の物になってしまう。
 レオナルドはアデラの元を訪れ、ブライアンの金の髪を脱色し、紫に染めた。少しづつ、紫を濃くするように。
 更に、紫の硝子を瞳に被せる事を提案すると、アデラはそれを拒否した。あまつさえ、王太子にブライアンは王太子の子ではないと告白し、ブライアンを連れて城を出ると言い出したのだ。

「ブライアンは『王太子の子』だ。そうでなければならない」

 そして、レオナルドは王宮の医師を買収し、アデラに毒を飲ませ、医師に「心臓の病」との診断をさせたのだ。

「母上…」
 震えるブライアンの肩をますます強くレオナルドは掴む。
「実の娘も、自らの野望の前には邪魔者でしかなかったと言う事ですか?」
 レオンの言葉に、レオナルドは不敵に笑った。
「儂にもう一人娘が居れば、アデラと挿げ替え、王太子の子を生ませたんだがな。生憎娘は一人しかいなかったのだ」
 余りの物言いに、レオンの背筋にぞくりと寒気が走る。
 野望の前には親子の情も役に立たないと…そんなに非情になれるものなのか?
「…貴方は、狂っている」
「そうだな。兄が死んだ時から儂は少しづつおかしくなっているんだろう。…だからこそ今更この野望は捨てられん」
「その瞳に被せる硝子のせいで兄上の視力が奪われたのに?」
「目が見えんでも王にはなれる」
 レオナルドは何の感情もない口調で言う。ブライアンは震えながら言った。
「父上…王太子殿下は、私に『今まで息子だと信じていた者を今更息子ではないと言われても、ブライアンに対する愛情は変わらない』と言ってくださった。『ただ息子でないと分かった以上、王太子に、王にすることはできない』と『済まない』とまで言ってくださったのに!」
「王太子…デリックは長子でそのまま王太子となり、また王となる。『予備』の思いなど判らん」
 ブライアンの瞳から涙が落ちる。
 硝子を瞳に入れるのはとても痛くて長時間は無理だった。公務など人前に出る際のみ、どうにか耐えていたのだ。
 それでも長年異物を入れ、傷付け、治る間もなく更に傷を重ね続けて来た。
 ただ怖かった。父に、弟に、妹に、自分を拒絶されるのが。
 それでも国王が退位し、王太子が王となる。そしてこのままだと自分が王太子に指名されてしまうとなった時、ブライアンは「父」であるデリックに打ち明けたのだ。
 目の前で硝子を取り去り、髪の染料を落とし、自分には王家の色が受け継がれていないのだと。

「さて、そろそろ儂の望みを聞いて貰おうか。レオン殿下」
「……」
「『自分は王太子にはならない』と『王太子になるべきはブライアンだ』と広く公言しなさい。デリックから『ブライアンを王太子に指名する』と言わせても良いぞ」
 ブライアンの肩を掴んだまま、レオナルドはレオンに歩み寄ると、レオンの顎を掴んだ。
「…これ以上、お前の大切な人を傷付けたくなければ、な」
 顔をレオンに近付けると、ニヤリと笑った。

「そんな事…させないわ!」
 声が響いて、レオナルドに後ろから何かがぶつかる。
「…お前、何故…?」
「この声…スーザン!?」
 スーザンが、レオナルドの腰に短剣を突き立てていた。

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