第二王子は婚約破棄して王太子になりたいらしい。

ねーさん

文字の大きさ
26 / 36

25

しおりを挟む
25

「フィオナ!ああ、良かった」
 レオンの私室に車椅子のマルティナが入って来る。車椅子を押すのはレナードだ。
「ティナ、お兄様」
「こら、起きるなフィオ」
 ベッドから身を起こそうとしたフィオナをレオンが止める。
「もう大丈夫ですよ」
「駄目だ。まだ三日しか経っていないし、医師の許可も下りてない」
「過保護…」
 フィオナは唇を尖らせる。
「何とでも。何かあって後悔したくはないからな」
「そうよフィオナ。頭だもの。慎重にしなくちゃ」
「はいはい。大人しくしてます。ティナの具合はどうなの?」
「骨が着くのを待つしかないわ。でも幸いにもそう複雑な折れ方ではなかったみたい」
「そう。良かったわ。お兄様はあれからずっとティナに付いてるの?」
 フィオナはマルティナの後ろに立つレナードへ視線を向ける。
「そうしたいのは山々だが、昼間に少し会いに来る位だな。正式に婚約している訳でもないし」
 レナードは軽く肩を竦めた。
「そっか…そうよね」
「レオン殿下こそ、フィオナに付ききりな訳ではないんでしょう?」
 レナードがレオンに向かって言う。
「なっそんな訳ないじゃない!レオン様は今回の件の後始末もあるし、昼間はここにはおられないわ」
「俺も付ききりでいたいのは山々なんだがな」
 とは言え、レオンが日に何度もフィオナの様子を見に戻って来ているのはレナードたちには内緒だ。
「夜は?」
 レナードがニヤニヤしながらフィオナに聞く。
「お兄様!だから私、安静なんですって!」
「レナード殿、フィオを揶揄うのが楽しいのは判るが、あまり興奮させないでくれ」
「そうでした。申し訳ありません」
「隣の応接室に簡易ベッドを入れてある。これ以上フィオに何かあればまたキャストン伯爵に叱られるからなぁ」
「そう言えば、父上昨日フィオナに会いに来たんですよね?」
「…ああ。昨日もものすごく叱られたぞ。笑顔で」
 レオンは遠い目をする。
 レオン様の執務室に二人で篭って何を話してるのかと思えば、お父様に叱られてたのね…

「スーザン様はどうしてるの?」
 マルティナが言うと、レオンが
「翌日には屋敷に戻った。ただ父のキッシンジャー侯爵は捕縛されたが…」
「お母様の毒味役をキッシンジャー侯爵が買収していたんですよね?」
「そうだ」
「スーザン様はどうなるのかしら?」
「そうだな。キッシンジャー侯爵の処分次第でもあるが、兄上を助けようとしていたし、情状酌量の余地はあるだろうな」
「そうね…ブライアンお兄様は?」
 マルティナがそう言った時、レオンの部屋の扉が開く。
「私がどうかしたか?」
 ブライアンが入って来る。パスカルがブライアンの手を引いて、ソファに案内する。
「済まないな。自分の部屋なら家具の配置も分かるが、流石にレオンの部屋は分からないから」
「ブライアンお兄様…本当は瞳が青いのですね。すごく綺麗だわ」
 マルティナがブライアンの側へ車椅子を動かして行き、眼を覗き込む。
「そうか?ありがとう」
 ブライアンは微笑んでマルティナの方を見た。
「兄上、スーザン嬢の怪我は大丈夫だったんですか?」
「ああ。打撲だけで骨は大丈夫だ。今背中全体が内出血で大変な事になっているらしい」
「スーザン嬢と連絡を取り合ってるんですか?」
「…そうだな。怪我の様子も気になるし…婚約解消する事になってから互いの『情』に気付くのも皮肉な話だがな」
 ブライアンは苦笑いしながら言う。
「…今日、レオンを訪ねたのは他でもない、私の処遇についてだ」
「兄上の処遇?」
「レオン、私は王籍を離れようと思う」
 ブライアンは顔を上げて言った。

-----

「レナード様?」
 マルティナの部屋に戻る途中、マルティナが車椅子を押すレナードを振り向いて見上げた。
「レオン兄様の部屋を出てからずっと黙ってるから…」
「ああ。少し考え事を」
「考え事?」
「…ブライアン殿下とマルティナ殿下は、本当は血が繋がっていないのだな、と先程改めて思いまして」
「そうね?」
「もしも、ブライアン殿下とマルティナ殿下がご結婚されれば、ブライアン殿下は名実共にレオン殿下の兄弟になるのだな、と。その場合兄じゃなく、義弟になりますけど」
「ブライアンお兄様と私が…」
「ブライアン殿下は例え王籍を抜けてもオズバーン公爵家の方ですから、身分的にも釣り合いますし」
「…レナード様は、そうなった方が良いとお考えなのですか?」
 レナードは車椅子を止める。
「理性では、そうなれば色々丸く収まると考えています」
「……」
 マルティナは無言でレナードを見上げる。
「しかし、感情では…マルティナ殿下が他の男性と見つめ合うのは嫌だと…先程、マルティナ殿下がブライアン殿下の眼を見つめられていた時、二人を引き剥がしたい衝動に駆られました」
 レナードは、真っ直ぐにマルティナを見ながら言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい

瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。 伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。 --- 本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。

【完結】そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして

Rohdea
恋愛
──ある日、婚約者が記憶喪失になりました。 伯爵令嬢のアリーチェには、幼い頃からの想い人でもある婚約者のエドワードがいる。 幼馴染でもある彼は、ある日を境に無口で無愛想な人に変わってしまっていた。 素っ気無い態度を取られても一途にエドワードを想ってきたアリーチェだったけど、 ある日、つい心にも無い言葉……婚約破棄を口走ってしまう。 だけど、その事を謝る前にエドワードが事故にあってしまい、目を覚ました彼はこれまでの記憶を全て失っていた。 記憶を失ったエドワードは、まるで昔の彼に戻ったかのように優しく、 また婚約者のアリーチェを一途に愛してくれるようになったけど──…… そしてある日、一人の女性がエドワードを訪ねて来る。 ※婚約者をざまぁする話ではありません ※2022.1.1 “謎の女”が登場したのでタグ追加しました

転生令嬢は腹黒夫から逃げだしたい!

野草こたつ/ロクヨミノ
恋愛
華奢で幼さの残る容姿をした公爵令嬢エルトリーゼは ある日この国の王子アヴェルスの妻になることになる。 しかし彼女は転生者、しかも前世は事故死。 前世の恋人と花火大会に行こうと約束した日に死んだ彼女は なんとかして前世の約束を果たしたい ついでに腹黒で性悪な夫から逃げだしたい その一心で……? ◇ 感想への返信などは行いません。すみません。

つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?

宝月 蓮
恋愛
少しネガティブな天然鈍感辺境伯令嬢と目つきが悪く恋愛に関してはポンコツコミュ障公爵令息のコミュニケーションエラー必至の爆笑(?)すれ違いラブコメ! ランツベルク辺境伯令嬢ローザリンデは優秀な兄弟姉妹に囲まれて少し自信を持てずにいた。そんなローザリンデを夜会でエスコートしたいと申し出たのはオルデンブルク公爵令息ルートヴィヒ。そして複数回のエスコートを経て、ルートヴィヒとの結婚が決まるローザリンデ。しかし、ルートヴィヒには身分違いだが恋仲の女性がいる噂をローザリンデは知っていた。 エーベルシュタイン女男爵であるハイデマリー。彼女こそ、ルートヴィヒの恋人である。しかし上級貴族と下級貴族の結婚は許されていない上、ハイデマリーは既婚者である。 ローザリンデは自分がお飾りの妻だと理解した。その上でルートヴィヒとの結婚を受け入れる。ランツベルク家としても、筆頭公爵家であるオルデンブルク家と繋がりを持てることは有益なのだ。 しかし結婚後、ルートヴィヒの様子が明らかにおかしい。ローザリンデはルートヴィヒからお菓子、花、アクセサリー、更にはドレスまでことあるごとにプレゼントされる。プレゼントの量はどんどん増える。流石にこれはおかしいと思ったローザリンデはある日の夜会で聞いてみる。 「つかぬことをお伺いいたしますが、私はお飾りの妻ですよね?」 するとルートヴィヒからは予想外の返事があった。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

婚約破棄された幼い公爵令嬢、目覚めたら絶世の美女でした

鍛高譚
恋愛
『幼すぎる』と婚約破棄された公爵令嬢ですが、意識不明から目覚めたら絶世の美女になっていました 幼すぎる、頼りない――そんな理由で婚約者に見限られた公爵令嬢シルフィーネ。 心ない言葉に傷ついた彼女は、事故に遭い意識不明となってしまう。 しかし一年後、彼女は奇跡的に目を覚ます。 そして目覚めた彼女は――かつての面影を残しつつも、見る者すべてを惹きつける絶世の美女へと変貌を遂げていた! 周囲の反応は一変。婚約破棄を後悔する元婚約者、熱視線を送る他家の令息たち、さらには王太子からの突然の縁談まで舞い込み――? 「もう、誰にも傷つけられたくない。私は私の幸せを手に入れるの」 これは、冷たく突き放された少女が美しく咲き誇り、誇りと自由を手に入れる、ざまぁ&逆転恋愛劇。

婚約者候補を見定めていたら予定外の大物が釣れてしまった…

矢野りと
恋愛
16歳になるエミリア・ダートン子爵令嬢にはまだ婚約者がいない。恋愛結婚に憧れ、政略での婚約を拒んできたからだ。 ある日、理不尽な理由から婚約者を早急に決めるようにと祖父から言われ「三人の婚約者候補から一人選ばなければ修道院行きだぞ」と脅される。 それならばと三人の婚約者候補を自分の目で見定めようと自ら婚約者候補達について調べ始める。 その様子を誰かに見られているとも知らずに…。 *設定はゆるいです。 *この作品は作者の他作品『私の孤独に気づいてくれたのは家族でも婚約者でもなく特待生で平民の彼でした』の登場人物第三王子と婚約者のお話です。そちらも読んで頂くとより楽しめると思います。

誰にも口外できない方法で父の借金を返済した令嬢にも諦めた幸せは訪れる

しゃーりん
恋愛
伯爵令嬢ジュゼットは、兄から父が背負った借金の金額を聞いて絶望した。 しかも返済期日が迫っており、家族全員が危険な仕事や売られることを覚悟しなければならない。 そんな時、借金を払う代わりに仕事を依頼したいと声をかけられた。 ジュゼットは自分と家族の将来のためにその依頼を受けたが、当然口外できないようなことだった。 その仕事を終えて実家に帰るジュゼットは、もう幸せな結婚は望めないために一人で生きていく決心をしていたけれど求婚してくれる人がいたというお話です。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

処理中です...