57 / 84
56
しおりを挟む
56
「それで卒業までがリンジーがヒューイ様の気持ちを信じられるかどうかを見極める期間になったのね?」
冬期が始まった寮の部屋で、ユーニスが言うと、部屋の主のリンジーが困った顔をして頷いた。
「そうなの。それで、私がヒューイを信じられたら婚約は継続、やっぱり信じられないなら婚約は解消。当然卒業まではオルディス家への援助も継続。もし婚約解消になってもそれまでの支援金は返さなくて良い…って、これ、我が家にとって都合が良すぎない?」
「そうねぇ」
さすがにお父様も「婚約解消になれば支援金は返済する」って言ったけど、ヒューイが「それだと家に借金を背負わせるのが嫌でリンジーが婚約解消したいと言えなくなる」と拒否したのよね…「俺は、リンジーが我慢や無理をして俺と結婚するような真似はさせたくない」なんて言って。
でも信じられるも信じられないも…ヒューイの十二歳の誕生日に「リンジー様、ヒューイ様を大好きですものね」そう言ったあの侍女に「あれは刷り込みだろ」と言ったのはヒューイだし。
「刷り込みなのか、植え付けられているのか…いっそ洗脳なのかも知れないが、俺の結婚する相手はリンジーしか考えられない」
この間そう言ったのもヒューイ。
…だったら、私たち二人とも、刷り込みで「好き」だと思い込んでいるだけなんじゃないの?
「俺はリンジーの気が強い処が好きじゃない。それにピンクとかフリルとか好きだけど、見た目地味だから似合ってないしさ。ザインの方が…断然綺麗だろう?」
今も一字一句間違いなく覚えているヒューイの言葉。
私のいない所で言ったその言葉こそがヒューイの本音だと思えてならない。
「リンジー?」
黙り込んだリンジーの顔を覗き込むユーニス。
「あ…何だかヒューイの態度が急変したから、胡散臭いなあ~と思っちゃって」
「そうね。わからなくもないけど…そういえば、ヒューイ様とザイン様は…その…完全にお別れしたの?」
「少なくとも休みに会ったりはしてないみたい。寮ではどうなのかわからないけど」
「そう」
もしも、リンジーが結局、婚約解消を選択したら、ケント殿下はどうなさるんだろう?
あんなにリンジーを好きなんだもの、やっぱりそうなったらリンジーにまた求婚されるのかしら?
「今年の卒業パーティーはどうするの?ヒューイ様にエスコートしてもらうの?」
ユーニスが言うと、リンジーは眉を顰めた。
「…出たくないって言ったら、駄目だって言うの」
「ヒューイ様が?」
「うん。自分たちが卒業するのは来年なんだから、今年は出なくても構わないと思うんだけど…」
またドレスに宝飾品を贈るってヒューイは言ってたけど、着飾るのは苦手なのに、憂鬱だわ。
「もしかして、また女避けに?」
「それもあると思う。少なくとも学園生の間の婚約解消はない訳だし」
「ヒューイ様がリンジー以外と踊らないなら、ザイン様に女生徒が殺到するのかしら?」
「そうなるかも。そういえば、ユーニスとザインの縁談はその後どうなってるの?」
「そういえば、そんな話しもあったわね。と言う感じだからどうにもなってないわ。進んでもないし、無くなってもないし」
口元に手を当ててユーニスが言う。
「そう…ザインもあの側近兼司書の人との関係を聴取されたり、色々あったから…考える暇もなかったわね。きっと」
「そうね。まあでも私も同性しか好きになれない人と結婚する気はないから、ザイン様が落ち着かれたらこちらからお断りすることになるわ」
「そうよね」
「…でも」
ユーニスはテーブルに肘をついて、両手で頬杖をつく。
「ザイン様も…自分の一番好きな相手とは絶対に結婚できないのだもの…何だかいたわしいわね…」
そうか。ザインは男性でも女性でも恋愛対象になる訳じゃなく、好きになるのは常に男性なのよね。
同性婚が認められてないこの国だと、結婚って形で好きな人と結ばれる事はないのか…
「そうね…」
リンジーもテーブルに両手で頬杖をつくと、リンジーとユーニスは同時に深くため息を吐いた。
「それで卒業までがリンジーがヒューイ様の気持ちを信じられるかどうかを見極める期間になったのね?」
冬期が始まった寮の部屋で、ユーニスが言うと、部屋の主のリンジーが困った顔をして頷いた。
「そうなの。それで、私がヒューイを信じられたら婚約は継続、やっぱり信じられないなら婚約は解消。当然卒業まではオルディス家への援助も継続。もし婚約解消になってもそれまでの支援金は返さなくて良い…って、これ、我が家にとって都合が良すぎない?」
「そうねぇ」
さすがにお父様も「婚約解消になれば支援金は返済する」って言ったけど、ヒューイが「それだと家に借金を背負わせるのが嫌でリンジーが婚約解消したいと言えなくなる」と拒否したのよね…「俺は、リンジーが我慢や無理をして俺と結婚するような真似はさせたくない」なんて言って。
でも信じられるも信じられないも…ヒューイの十二歳の誕生日に「リンジー様、ヒューイ様を大好きですものね」そう言ったあの侍女に「あれは刷り込みだろ」と言ったのはヒューイだし。
「刷り込みなのか、植え付けられているのか…いっそ洗脳なのかも知れないが、俺の結婚する相手はリンジーしか考えられない」
この間そう言ったのもヒューイ。
…だったら、私たち二人とも、刷り込みで「好き」だと思い込んでいるだけなんじゃないの?
「俺はリンジーの気が強い処が好きじゃない。それにピンクとかフリルとか好きだけど、見た目地味だから似合ってないしさ。ザインの方が…断然綺麗だろう?」
今も一字一句間違いなく覚えているヒューイの言葉。
私のいない所で言ったその言葉こそがヒューイの本音だと思えてならない。
「リンジー?」
黙り込んだリンジーの顔を覗き込むユーニス。
「あ…何だかヒューイの態度が急変したから、胡散臭いなあ~と思っちゃって」
「そうね。わからなくもないけど…そういえば、ヒューイ様とザイン様は…その…完全にお別れしたの?」
「少なくとも休みに会ったりはしてないみたい。寮ではどうなのかわからないけど」
「そう」
もしも、リンジーが結局、婚約解消を選択したら、ケント殿下はどうなさるんだろう?
あんなにリンジーを好きなんだもの、やっぱりそうなったらリンジーにまた求婚されるのかしら?
「今年の卒業パーティーはどうするの?ヒューイ様にエスコートしてもらうの?」
ユーニスが言うと、リンジーは眉を顰めた。
「…出たくないって言ったら、駄目だって言うの」
「ヒューイ様が?」
「うん。自分たちが卒業するのは来年なんだから、今年は出なくても構わないと思うんだけど…」
またドレスに宝飾品を贈るってヒューイは言ってたけど、着飾るのは苦手なのに、憂鬱だわ。
「もしかして、また女避けに?」
「それもあると思う。少なくとも学園生の間の婚約解消はない訳だし」
「ヒューイ様がリンジー以外と踊らないなら、ザイン様に女生徒が殺到するのかしら?」
「そうなるかも。そういえば、ユーニスとザインの縁談はその後どうなってるの?」
「そういえば、そんな話しもあったわね。と言う感じだからどうにもなってないわ。進んでもないし、無くなってもないし」
口元に手を当ててユーニスが言う。
「そう…ザインもあの側近兼司書の人との関係を聴取されたり、色々あったから…考える暇もなかったわね。きっと」
「そうね。まあでも私も同性しか好きになれない人と結婚する気はないから、ザイン様が落ち着かれたらこちらからお断りすることになるわ」
「そうよね」
「…でも」
ユーニスはテーブルに肘をついて、両手で頬杖をつく。
「ザイン様も…自分の一番好きな相手とは絶対に結婚できないのだもの…何だかいたわしいわね…」
そうか。ザインは男性でも女性でも恋愛対象になる訳じゃなく、好きになるのは常に男性なのよね。
同性婚が認められてないこの国だと、結婚って形で好きな人と結ばれる事はないのか…
「そうね…」
リンジーもテーブルに両手で頬杖をつくと、リンジーとユーニスは同時に深くため息を吐いた。
1
あなたにおすすめの小説
貴方だけが私に優しくしてくれた
バンブー竹田
恋愛
人質として隣国の皇帝に嫁がされた王女フィリアは宮殿の端っこの部屋をあてがわれ、お飾りの側妃として空虚な日々をやり過ごすことになった。
そんなフィリアを気遣い、優しくしてくれたのは年下の少年騎士アベルだけだった。
いつの間にかアベルに想いを寄せるようになっていくフィリア。
しかし、ある時、皇帝とアベルの会話を漏れ聞いたフィリアはアベルの優しさの裏の真実を知ってしまってーーー
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】お嬢様だけがそれを知らない
春風由実
恋愛
公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者でもあるお嬢様には秘密があった。
しかしそれはあっという間に公然の秘密となっていて?
それを知らないお嬢様は、日々あれこれと悩んでいる模様。
「この子たちと離れるくらいなら。いっそこの子たちを連れて国外に逃げ──」
王太子殿下、サプライズとか言っている場合ではなくなりました!
今すぐ、対応してください!今すぐです!
※ゆるゆると不定期更新予定です。
※2022.2.22のスペシャルな猫の日にどうしても投稿したかっただけ。
※カクヨムにも投稿しています。
世界中の猫が幸せでありますように。
にゃん。にゃんにゃん。にゃん。にゃんにゃん。にゃ~。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる