転生令嬢と王子の恋人

ねーさん

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 あ、ロイド殿下。
 リザは学園の二階廊下から、中庭のベンチに座るロイドを見つけた。
 今日も安定の仏頂面ね。
 ロイドは一人ベンチで本を読んでいるようだ。
「リザ」
 呼ばれてロイドから視線を離す。呼んでいたのはリザの友人、同じクラスのジェイク・モーガンだ。
「ジェイク、ステラは?」
「さきに食堂で席取っておくってさ。歩くの嫌だから迎えにに行って来いって言われた」
 ジェイクは肩を竦める。ステラ・パーカーも同じクラスの友人だ。
「…相変わらず尻に敷かれてるわね」
「侯爵家の令嬢が『尻』とか言わないように」
「ジェイクとステラには良いのよ!」
 言いながらリザはジェイクの腕を叩くと、二人並んで食堂の方へ歩き出す。

 その様子を、中庭のベンチからロイドがじっと見つめていた。

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「ねぇリザ、それだけしか食べないの?」
 昼ご飯を食べながらステラが言う。
 ステラは子爵家の一人娘で、金髪碧眼の美女だ。ただ、少しふくよかだが。ジェイクは男爵家の三男で、ステラにベタ惚れで婿入りを希望している。
「サンドイッチ一皿で充分だわ」
「小食ね」
 ステラの前にはサンドイッチが山盛りになっていて、パクパクと勢い良く食べるステラをジェイクがにこにこして眺めていた。
「そうだ。私、リザの言っていた『攻略対象』とやらを考えてみたのよ」
「え?本当?」
 リザは自家の侍女ジューンの他に、ステラとジェイクにだけは前世の記憶が突然蘇って来た事を話していたのだ。
「まずは、サイモン王太子殿下と、生徒会副会長でもあるロイド第二王子殿下。これはリザの言う『乙女ゲーム』がヒロインが見目麗しく高貴な男性と恋をするというテーマなら外せないわね」
「そうね」
「後はクリストファー・マーシャル様」
「オリー様の弟君ね」
「そう。公爵家の跡継ぎで学園の二年生。生徒会書記。将来性は二重丸」
「そしてマーク・スペンサー様。生徒会副会長。私たちと同級生ね。騎士の家系で、将来は近衛騎士におなりになるだろうとの評判ね」
「そうね」
「そして生徒会長のランドルフ・リード様。四年生。伯爵家の次男ながら将来の宰相候補。後は会計のエリック・ドイル。一年生で商家の息子で大金持ちだわ」
「うん」
「最後はゴヴァン・ニューマン先生ね。確か24歳」
「先生?」
「あら、リザ、ニューマン先生は生徒会の顧問よ」
「ああ!」
 つまりこの学園の生徒会が攻略対象候補だとステラは言っているのだ。
「ついでにニューマン先生がサイモン王太子殿下の同級生で、学園の頃からの友人なのは有名な話ね」
「なるほど…先生伝手で王太子殿下との繋がりが…」
 リザは目を見開く。多分学園の生徒であろうヒロインが、とっくに学園を卒業している王太子とどうやって知り合うのか、色々考えてみたが思い付かなかったのだ。

「二人とも、ここが乙女ゲームの舞台だって前提だけど、そんな事本当にあるかなあ?」
 ジェイクが呆れたように言うと、ステラはドンっとテーブルを叩いた。
「ジェイク、今の生徒会の面々は歴代の生徒会と比べても眉目秀麗、文武両道の方が揃いすぎなの。わかる?そ・ろ・い・す・ぎ」
 ステラがジェイクを睨む。ジェイクはたじたじだ。
「揃いすぎ?」
「こんなに特別級の男性方が集まるだなんて、乙女ゲームの舞台で攻略対象でもなきゃ納得できない位の異常事態なのよ」
「…ソ、ソウダネ」
 あ、ジェイク、棒読みになった。
 でも確かにこんなにハイスペックな方々が揃った生徒会って後にも先にもないかも。顧問のニューマン先生もカッコ良いし。
「と、するとヒロインは誰なのかしら?」
 今は新学期が始まって一カ月が経った時期だ。生徒会の任期は乙女ゲームの最終イベントであろう卒業パーティーまで。つまり今年度がゲームの舞台なんだろう。
 もしもロイド殿下がヒロインに攻略されたら…私、卒業パーティーで婚約破棄とかされちゃうのかしら?
「私『このがヒロインかしら?』と疑っている生徒が一人いるわ」
 ステラが目を光らせながら言う。
「誰?」
 リザが身を乗り出して問うと、ステラは指を立てて言った。
「一年生のローズ・エンジェル男爵令嬢よ」
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