双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

文字の大きさ
4 / 79

3

しおりを挟む
3

「アレン殿下、お話って何でしょう?」
 ジェイが退室し、開けた扉の外に控えているのを見ながら、パトリシアはそう切り出した。
「俺が以前転生の事を話したのを覚えてるか?」
「あ…はい。覚えて……」
 首を傾げるパトリシアの様子にアレンは苦笑いを浮かべる。
「あまり覚えていないんだな?」
「…あの、正直、前世、転生、攻略対象者?後は悪役令嬢…?でしたか?この位の単語しか覚えてない…です」
 あの時は、私と婚約するのはアランだって聞いた時から、その後アレン殿下が何を言われたのか…全然記憶にないのよね。
「もっと色々と話したが…そうか覚えていないのか…」
 アレンは自分の顎に手を当てる。パトリシアは肩を竦めた。
「すみません」
「謝る事はない。荒唐無稽な話だったから無理もないさ」
 実は荒唐無稽な話だったのかどうかも記憶にないんだけどね…
 パトリシアは曖昧に微笑みながら頷いた。

「俺とアランが四年生、パティ…パトリシアが三年生の年にロード・フェアリという『ヒロイン』が三年生に編入して来る」
 うわ。久しぶりにアレン殿下から「パティ」って愛称でよばれたわ。エリザベス様がアレン殿下と私が親し気にするのを嫌がるから愛称では呼べなくなっちゃったのよね。
 エリザベス様としては呼び捨てじゃなくて他の令嬢と同じように「パトリシア嬢」って呼んで欲しかったらしいけど、そこはアレン殿下が「幼なじみなのは事実なんだから」って突っぱねたみたい。
 私も昔はレンちゃん、ランちゃんって呼んでたけど、二人が十歳になった頃に私のお父様から「幼い呼び方はやめなさい」って言われたのよ。あれからは普段はアレン、アランって呼びすてで呼んでて、三人以外の人が居る時には殿下って敬称を付けてたんだけど、アランと婚約してからはアレン殿下には三人の時でも、めったにないけど今みたいに二人きりの時でも敬称と敬語は外さなくなったんだよね。

「もう来月ですね。三年生に編入って…その方今まではどうなさってたんですか?」
「実はロード・フェアリは伯爵家の養子なんだ。フェアリ伯爵夫妻は結婚十年以上経つが子供を授からなかったため、三年前、親類の子供を養子にして、家庭教師を付けて勉学と貴族としての教育をしていたんだそうだ」
「では元は貴族ではない方?」
「フェアリ伯爵家の遠縁の男爵家の子だが、その男爵家は財政破綻していてロード・フェアリも伯爵家で使用人として働いていたらしい」
「そうなんですか」
 貴族の子供が他の貴族の家に仕える事はあるけど、所謂「没落」した貴族なら、生まれは男爵家でも貴族としての教育は受けてないんだろうな。だから学園へは入れず家で教育していたと言う事ね。
「伯爵家の跡取りとしては、残り二年でも学園へ入れて顔を広げておいた方が良いから編入する事にしたらしい」
「そうですよね。伯爵家の跡取りなら学園で貴族や国内の有力者の令嬢令息とお近付きになっておかなくちゃ……」
 ………ん?
 あれ?何か引っ掛かる気がする。
「パトリシア?」
 語尾が消えて、黙ってしまったパトリシアを、アレンが不思議そうに見ている。
「…アレン殿下」
「何だ?」
「私には殿下が言われた『攻略対象者』とか『悪役令嬢』とかの意味が良くわからないんですが…」
「ああ。まあそうだろうな」
「一般的に『ヒロイン』と言うのは、物事の中心人物を指したり、物語などの主人公や、主人公の相手役の事を指す言葉だと理解していますけど、合ってますか?」
「俺もそう理解している」
「じゃあ…ヒロインって女性の事…ですよね?」
「もちろん一般的にはヒロインとは女性を表すが、乙女ゲームに関しては、主人公は性別に関わらず『ヒロイン』だ」
 乙女ゲーム?また聞いた事ない単語が出て来たわ。

 この国では、長子の男子が家督や爵位などを継ぐと定められており、当主が死亡した場合など、妻や娘が一時的に爵位を持つ場合もあるが、それも親類の男性に家督を譲る許可が下りるまで、娘が結婚するまで、などの期間限定措置だ。
 そのロード・フェアリという人物が、伯爵家の跡取りとして養子になったと言う事は…

「つまり、ロード・フェアリは俺が前世でプレイしていた乙女ゲーム『溺愛生徒会』のヒロインで……男、だ」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。

芹澤©️
恋愛
王太子の元へ側室として嫁いだ伯爵令嬢は、初夜の晩に宣言した。 「申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。」

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

真実の愛を見つけた王太子殿下、婚約破棄の前に10年分の王家運営費1.5億枚を精算して頂けます?

ぱすた屋さん
恋愛
「エルゼ、婚約を破棄する! 私は真実の愛を見つけたのだ!」 建国記念祭の夜会、王太子アルフォンスに断罪された公爵令嬢エルゼ。 だが彼女は泣き崩れるどころか、事務的に一枚の書類を取り出した。 「承知いたしました。では、我が家が立て替えた10年分の王家運営費――金貨1億5800万枚の精算をお願いします」 宝石代、夜会費、そして城の維持費。 すべてを公爵家の「融資」で賄っていた王家に、返済能力などあるはずもない。 「支払えない? では担保として、王都の魔力供給と水道、食料搬入路の使用を差し止めます。あ、殿下が今履いている靴も我が家の備品ですので、今すぐ脱いでくださいね?」 暗闇に沈む王城で、靴下姿で這いつくばる元婚約者。 下着同然の姿で震える「自称・聖女」。 「ゴミの分別は、淑女の嗜みですわ」 沈みゆく泥舟(王国)を捨て、彼女を「財務卿」として熱望する隣国の帝国へと向かう、爽快な論理的ざまぁ短編!

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

処理中です...