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「明日は舞踏会だね。俺初めてだから楽しみなんだ」
パトリシアの隣の席で、ロードが楽しそうに言う。
結局今日までフェアリ様の口からアランと親しくしてるって話は出て来なかったな。
「パトリシアちゃんは当然アラン殿下とファーストダンス踊るんだろうけど、その後で良いから俺とも踊ってよ」
「え…?」
「あれ?婚約者以外と踊っちゃいけない決まり?」
「ううん。そんな決まりはない…けど」
「舞踏会が終わったら夏期休暇で、暫く会えないんだし、一曲くらい良いじゃん。ね!」
「…フェアリ様はエスコートするような方は居られないんですか?」
「居ないよ」
ニッコリと笑うロード。
ジュリアナ様がお兄様のエスコートを断ったと言うから、フェアリ様にエスコートしてもらうのかと思ったけど…
「話を逸らしたいみたいだけど、ダンスを申し込みに行けば無下に断ったりしないよね。パトリシアちゃん」
あ、何か笑顔の向こうに黒い影が見えた気がするわ。
「…強引ですね」
「それだけパトリシアちゃんと踊りたいんだってば」
「はあ…」
何で私とそんなに踊りたがるのか。さっぱりわからないわ。
パトリシアが曖昧に笑っている内に教師がやって来て授業が始まった。
-----
舞踏会や卒業パーティーでは、ドレスや装飾品は各々が用意をするが、全員が寮で支度をして、婚約者や恋人のいる者は男性が女子寮へ迎えに来る事となっており、令嬢は自分の家の侍女やメイドを寮に呼び支度をし、侍女やメイドのいない家で学園が用意した王宮のメイドが支度を手伝っている。
舞踏会や卒業パーティーは学生らしく昼間の開催なので、寮は当日は朝から支度で大騒ぎだ。
女子寮は舞踏会の会場の講堂に近いので、歩いて向かう事になる。
「このドレス、パトリシア様が刺された裾の刺繍がすごく映えて、とてもよくお似合いですわ。でも背中の編み上げが細かくて、着るのも脱ぐのも時間がかかりますねぇ」
侍女のマールが編み上げの一番上のリボン結びを整えながら言う。
「そうね。デザインは素敵だけど侍女泣かせね」
「パニエも何重にもなってますし、侍女が泣くなら良いですけど、殿方が泣くんじゃないですか?これは」
真剣な表情で言うマール。
「な、何言ってるの」
慌てて言うパトリシアにマールは
「一般論です」
と表情を変えずに言った。
「アラン、早く迎えに来るって言っていたのに、まだ来ないのかしら?」
身支度を整えてもらったパトリシアは、部屋の扉を開けて廊下を覗く。
「パトリシア様お行儀が悪いですよ」
「ちょっと覗いて見るだけよ」
廊下の向こうに視線を向けると、黒い夜会服の男性が姿を現した。
あ、アレン殿下。
「パトリシア…」
「アレン殿下」
アレンはそのまま廊下を歩いて来て、パトリシアの前で立ち止まった。
ああ、エリザベス様の部屋がこの奥だから…
「久しぶりだな」
「……」
紫の長い髪を後ろで結わえ、前髪を後ろに流しているアレン。
パトリシアはアレンの姿を無言で見ていた。
「どうした?」
アレンが心配そうにパトリシアの顔を覗き込む。
「あ、いえ」
「何かあったのか?」
「いいえ。何もないですよ」
パトリシアは少し笑ってかぶりを振る。
「パトリシア、もしかして、あの…」
「え?」
「あの男と…」
「パトリシア!待たせたか?」
アレンが姿を現した場所から、紺の夜会服のアランがやって来た。
「ううん。あ、アランとアレン殿下の服は色違いなのね」
同じデザインの黒と紺の服。髪の長さ。それ以外に違いはない二人。
なのに。
「ああ。でもパトリシアとエリザベスのドレスは全然似ていないから安心しろ。裾の刺繍はパトリシアが刺したのか?ドレスにとても合っているな」
アレンが笑いながら言う。
「ありがとうございます。あの、アレン殿下、さっき何か言い掛けて…」
「いや、いいんだ。じゃあな」
アレンはそう言うと、廊下の奥へと進んで行った。
エリザベス様のドレスはもちろんアレン殿下が贈られたんだから、エリザベス様がドレスを着ている所を見る前に私のドレスとはデザインが違う事に気付くのも当たり前ね。
刺繍も褒めて貰えたし…でも私が刺繍をしたって何でわかったのかしら?私が昔から刺繍が好きなのを知ってるから?
あ、そうか。アランの胸ポケットのチーフと、私のドレスの裾に同じ刺繍があるからだわ。
「行こうか」
アランがパトリシアに手を差し出した。
「うん。じゃあマール行って来るわね」
「はい。行ってらっしゃいませ」
部屋の中のマールへ手を振って、アランの手を取って歩き出す。
パトリシアは歩きながらアランの顔を見上げた。
「ん?」
「…アランとアレン殿下って、やっぱりそっくりね」
「何を今更?」
「そうね。今更ね」
そっくりな二人。なのに、何で私は…
いつも、アレン殿下にだけ、見惚れてしまうんだろう。
「明日は舞踏会だね。俺初めてだから楽しみなんだ」
パトリシアの隣の席で、ロードが楽しそうに言う。
結局今日までフェアリ様の口からアランと親しくしてるって話は出て来なかったな。
「パトリシアちゃんは当然アラン殿下とファーストダンス踊るんだろうけど、その後で良いから俺とも踊ってよ」
「え…?」
「あれ?婚約者以外と踊っちゃいけない決まり?」
「ううん。そんな決まりはない…けど」
「舞踏会が終わったら夏期休暇で、暫く会えないんだし、一曲くらい良いじゃん。ね!」
「…フェアリ様はエスコートするような方は居られないんですか?」
「居ないよ」
ニッコリと笑うロード。
ジュリアナ様がお兄様のエスコートを断ったと言うから、フェアリ様にエスコートしてもらうのかと思ったけど…
「話を逸らしたいみたいだけど、ダンスを申し込みに行けば無下に断ったりしないよね。パトリシアちゃん」
あ、何か笑顔の向こうに黒い影が見えた気がするわ。
「…強引ですね」
「それだけパトリシアちゃんと踊りたいんだってば」
「はあ…」
何で私とそんなに踊りたがるのか。さっぱりわからないわ。
パトリシアが曖昧に笑っている内に教師がやって来て授業が始まった。
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舞踏会や卒業パーティーでは、ドレスや装飾品は各々が用意をするが、全員が寮で支度をして、婚約者や恋人のいる者は男性が女子寮へ迎えに来る事となっており、令嬢は自分の家の侍女やメイドを寮に呼び支度をし、侍女やメイドのいない家で学園が用意した王宮のメイドが支度を手伝っている。
舞踏会や卒業パーティーは学生らしく昼間の開催なので、寮は当日は朝から支度で大騒ぎだ。
女子寮は舞踏会の会場の講堂に近いので、歩いて向かう事になる。
「このドレス、パトリシア様が刺された裾の刺繍がすごく映えて、とてもよくお似合いですわ。でも背中の編み上げが細かくて、着るのも脱ぐのも時間がかかりますねぇ」
侍女のマールが編み上げの一番上のリボン結びを整えながら言う。
「そうね。デザインは素敵だけど侍女泣かせね」
「パニエも何重にもなってますし、侍女が泣くなら良いですけど、殿方が泣くんじゃないですか?これは」
真剣な表情で言うマール。
「な、何言ってるの」
慌てて言うパトリシアにマールは
「一般論です」
と表情を変えずに言った。
「アラン、早く迎えに来るって言っていたのに、まだ来ないのかしら?」
身支度を整えてもらったパトリシアは、部屋の扉を開けて廊下を覗く。
「パトリシア様お行儀が悪いですよ」
「ちょっと覗いて見るだけよ」
廊下の向こうに視線を向けると、黒い夜会服の男性が姿を現した。
あ、アレン殿下。
「パトリシア…」
「アレン殿下」
アレンはそのまま廊下を歩いて来て、パトリシアの前で立ち止まった。
ああ、エリザベス様の部屋がこの奥だから…
「久しぶりだな」
「……」
紫の長い髪を後ろで結わえ、前髪を後ろに流しているアレン。
パトリシアはアレンの姿を無言で見ていた。
「どうした?」
アレンが心配そうにパトリシアの顔を覗き込む。
「あ、いえ」
「何かあったのか?」
「いいえ。何もないですよ」
パトリシアは少し笑ってかぶりを振る。
「パトリシア、もしかして、あの…」
「え?」
「あの男と…」
「パトリシア!待たせたか?」
アレンが姿を現した場所から、紺の夜会服のアランがやって来た。
「ううん。あ、アランとアレン殿下の服は色違いなのね」
同じデザインの黒と紺の服。髪の長さ。それ以外に違いはない二人。
なのに。
「ああ。でもパトリシアとエリザベスのドレスは全然似ていないから安心しろ。裾の刺繍はパトリシアが刺したのか?ドレスにとても合っているな」
アレンが笑いながら言う。
「ありがとうございます。あの、アレン殿下、さっき何か言い掛けて…」
「いや、いいんだ。じゃあな」
アレンはそう言うと、廊下の奥へと進んで行った。
エリザベス様のドレスはもちろんアレン殿下が贈られたんだから、エリザベス様がドレスを着ている所を見る前に私のドレスとはデザインが違う事に気付くのも当たり前ね。
刺繍も褒めて貰えたし…でも私が刺繍をしたって何でわかったのかしら?私が昔から刺繍が好きなのを知ってるから?
あ、そうか。アランの胸ポケットのチーフと、私のドレスの裾に同じ刺繍があるからだわ。
「行こうか」
アランがパトリシアに手を差し出した。
「うん。じゃあマール行って来るわね」
「はい。行ってらっしゃいませ」
部屋の中のマールへ手を振って、アランの手を取って歩き出す。
パトリシアは歩きながらアランの顔を見上げた。
「ん?」
「…アランとアレン殿下って、やっぱりそっくりね」
「何を今更?」
「そうね。今更ね」
そっくりな二人。なのに、何で私は…
いつも、アレン殿下にだけ、見惚れてしまうんだろう。
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