双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

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「パトリシアちゃん、俺と踊ってください」
 パトリシアの前で手を差し出すロード。
 パトリシアが周りを見回すと、かなりの数の生徒たちがこちらを見ていた。
 こんなに皆が居る所で申し込まれたら、余程の理由でないとお断りできないわね…
「じゃあ…一曲だけ」

「パトリシアちゃん、この曲の間だけでもロードって呼んで」
 …近い。アランと踊った時よりフェアリ様と密着してる気がするわ。
「ね。お願いだから」
 パトリシアの腰に添えたロードの手に力が入り、ますます密着度が上がった気がしてパトリシアは焦る。
 これじゃあまるで抱きしめられているみたいだわ。
「ね。お願いだよ。パトリシアちゃん」
 曲に合わせて腰の手が背中へと撫でるように動く。
「ひゃ。わっ、わかりました。ロード様」
「嬉しい」
 焦って言うパトリシアににっこりと笑うロード。
「背中弱いんだね。パトリシアちゃん、かわいいなあ」
「え?何ですか?フェ…ロード様」
「名前で呼んでもらえて嬉しいなって」
 少し頬を染めて嬉しそうに笑う。
 何でこんなに嬉しそうなの?

「親密そうだな。あの二人」
 踊るパトリシアとロードを眉を寄せながら見ていたアレンに、側に来ていたレスターが言う。
「……」
「アランは気にしてないみたいだが」
 レスターが視線で示す先を見ると、アランは会場の隅でライネルと話し込んでいた。
「アランは…薬学にしか興味がないですから」
 アレンはまたパトリシアとロードへと視線を戻した。

-----

「あーあ、もう一曲終わっちゃった。あっという間だったな」
 曲が終わって、ダンスフロアから出るパトリシアについて歩きながらロードが言う。
「飲み物取って来るからもう少しお喋りしてよ。いいでしょ?パトリシアちゃん」
「はあ。まあ…」
「じゃあベンチで待ってて」
 飲み物の置いてある場所へ歩いて行くロードを眺める。
 いつもとそんなに変わらない感じだけど、昨夜エドワード・ラングトン様に制服を切り裂かれたと言うのは本当の話なのかしら?

 葡萄ジュースの入ったグラスを両手に持ち、ロードが戻って来て、会場の壁際にあるベンチに座っていたパトリシアの隣に座る。
「はい。葡萄ジュース」
「ありがとうございます。フェアリ様」
「お喋りしてる間は名前で呼んでよ。ね。良いでしょ?」
 そう言いながらグイグイとパトリシアとの間を詰めて来る。
 このままじゃ肩が触れ合ってしまいそう。
「わかりましたから。ロード様」
「嬉しい」
 ロードはパトリシアの顔を覗き込んでニッコリと笑う。
 こんなに嬉しそうにされると、何だか調子が狂うわ。
「この葡萄ジュース、新品種の葡萄で作られたんだって。結構苦味もあって美味しいよ。パトリシアちゃんも飲んでみてよ」
「新品種ですか?」
 そう言いながらグラスの中の紫の液体を口に含む。
 確かに、少し苦味がある。けど美味しいわ。
「美味しい?」
「はい。美味しいです」
「良かった」

 少し経つとパトリシアの視界が靄がかかったように薄っすらと白くなる。
「…?」
 目を擦るパトリシア。
「どうしたの?」
 ロードがパトリシアの顔を覗き込む。
「なんらか、めがおかひく…」
 あれ?何だか上手く話せない。
「呂律が回ってないね。…効いて来たかな?」
 ロードが笑いながら言う。
「きく?」
 効くって、何が?
 もしかして…薬?
 …もしかして、葡萄ジュースに、何かが?
 これは…とても不味い事態のような…ああでも頭が上手く回らないわ…
「行こうか」
 ロードが立ち上がってパトリシアの手を引く。
 パトリシアは自分でも驚く程抵抗なく立ち上がった。
 身体は、動く。でも頭がぼんやりして、視界も白さが増したみたい。
 ロードはパトリシアをエスコートする様に手を取って歩き出す。パトリシアも促されるまま、足を踏み出した。
「周りから見ると普通にエスコートされてるよ。これなら誰も怪しまない」
 ロードが小声で言う。
 足を止めたいのに、止まらない。
 …私、どうなるの?
 嫌。怖い。
 怖い。嫌だ。助けて。
「…や」
「そんな小さな声じゃ誰にも聞こえないよ」
 楽しそうにロードが言う。
 嫌だ。助けて。誰か…
 ロードに手を引かれたまま、講堂を出る。人影はない。
「…けて……ン…」
 ロードに握られていない方の手を必死で動かして、ドレスのスカートの隠しポケットに入れる。
 何か、何かを…
「アラン殿下に助けを求めてるの?残念だね。この薬を調合してくれたのはそのアラン殿下だよ。もっとも俺がパトリシアちゃんに使うとは思ってもいないだろうけど」
 そう言って笑うロードが薄っすらと見えて、パトリシアの視界は白一色に染まった。

 …助けて。アレン。






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