双子の王子と悪役令嬢な私。そしてヒロインは男の子。

ねーさん

文字の大きさ
17 / 79

16

しおりを挟む
16

 ふわふわと、身体が浮かんでいるような感覚。
「さて、どうしようかな。確実にパトリシアちゃんを手に入れるなら、もっと大々的に、言い逃れも誤魔化しも出来ない位の状況が必要なんだけどな」
 …この声は…ロード様?
「それとも、エドワードが俺には価値がないみたいな事言うから、思わず薬飲ませちゃったけど…これからは警戒されるだろうから、このチャンスはモノにしといた方が良いのか?」
 エドワード…誰…?だっけ…
「でもなあ、何しろ身分も高いし、王子の嫁になるような女だから、今ここで犯っちゃったとして、例え妊娠したとしても、どうにでもしてなかった事にされちゃうだろうし、俺の存在も消されるかも知れないもんな」
 …何…を言ってるの?
「この薬が使えるのはわかったし、今回はこの辺で良いか。充分宣戦布告にはなったかな」
 宣戦布告?誰に? 
「あいつもさすがに婚約者に手を出されそうになれば少しは慌てるだろ」
 あいつ?アランの事?
「それにしても、背中の編み上げといい、分厚いパニエといい、このドレスからは『パトリシアに手を出すな』って意思がひしひしと伝わるね。指示したのはアランなのかな。やっぱり」
 ドレス?ドレスのデザインが…何…?
「やっぱり関心なさそうに見えてもパトリシアちゃんを大切にしてるんだなあ」
 大切…に…
「でも俺だって本当にパトリシアちゃんの事、好きだし。一番、特別に、好きだよ。パトリシアちゃん」
 顔に息がかかる感覚。それから唇に柔らかい物が触れた。
 …いや。
 顔を背けようとしても動かせない。声も出ない。目も開かない。
「あーここにスマホがあれば犯っちゃってる動画撮って証拠にできるのになあ。仕方ないから原始的にマーキングしとくか」
 いたっ。
 首筋にチリッとした痛みが走った。
「パトリシアちゃん、ピクンとしちゃってかーわいい。早く俺のモノにしたいなあ」
 何を…言って……私は……

 また、パトリシアの意識は白い世界に飲み込まれて行った。

-----

 アレンは静まり返った校舎の廊下を歩き、一つ一つの教室の扉を開けて人が居ない事を確かめる。
 校舎ではなかったのか?
 気持ちは焦るが、極力物音を立てないように行動する。
 そもそもパトリシアを連れ出したのが本当にロードなのか、確信がある訳ではない。それでもロードに気付かれてパトリシアに危害を加えられる訳にはいかない。

 一階の端にある教員準備室の扉を開くと、奥の長椅子に横たわるパトリシアが見えた。
「パティ!」
 アレンは飛び込む様に部屋に入ると、長椅子に駆け寄る。
 部屋にはパトリシア一人しか居なかった。

 パトリシアは意識がないようだ。アレンがパトリシアの背中に手を入れて抱き起すと、アレンにもたれるような姿勢になったパトリシアの首筋が露わになる。
 そこにある、小さな、赤い印。
「…!」
 一瞬、息が止まった。
「……まさか」
 アレンは頭を横に振り、大きく息を吸うと、パトリシアの全身を観察する。
 髪も服も乱れてはいない。ドレスの背中の細かい編み上げのリボンにも異常はない。恐らくこのキスマークはロードからの「パトリシアは俺のモノ」と言う宣戦布告だろう。

「駄目だ。パティは…」
 パティは、俺たち兄弟の幼なじみで、アランの婚約者。
 いや、パティは…
 「パティは、俺の…」
 アランはそう呟くと、パトリシアを強く抱きしめた。

 教員準備室の外、廊下の影からそっと扉に近付いたロードは、中の様子を静かに窺う。
 パトリシアを抱きしめる男の影。
 …あれは?
 机に隠れて髪が見えないが、夜会服の裾と足が見える。黒い服のあれは、アレンじゃないのか?
 アランとアレンが一緒にパトリシアちゃんを探していて、たまたま先に見つけたのがアレン、という事なのか?
 そりゃ、アレンにとってもパトリシアちゃんは幼なじみで、特別な存在には違いないだろうけど…弟の婚約者を抱きしめるか?普通。

「パティ、大丈夫か?」
 中から声が聞こえる。
 パトリシアちゃんの目が覚めたのかな?
「…アラン…?」
 小さなパトリシアの声が微かに聞こえた。
「ああ。もう大丈夫だからな」
 ん?紺の服が黒く見えただけで、あの男はアランなのか?
 どっちにしろ、もうこの部屋から出て来るだろうから、俺は隠れなくちゃ。

 ロードが廊下を曲がった壁の影に移動した所で、パトリシアを抱いた男が準備室から出て来る。
 アランとアレン、どっちなのか姿を見たいけど…覗いたら気付かれそうな気がする。特にアレンなら。
 ロードは影で息を潜めたまま、足音が遠ざかるのをじっと待った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。

芹澤©️
恋愛
王太子の元へ側室として嫁いだ伯爵令嬢は、初夜の晩に宣言した。 「申し訳ありませんが、貴方様との子供は欲しくありません。」

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

真実の愛を見つけた王太子殿下、婚約破棄の前に10年分の王家運営費1.5億枚を精算して頂けます?

ぱすた屋さん
恋愛
「エルゼ、婚約を破棄する! 私は真実の愛を見つけたのだ!」 建国記念祭の夜会、王太子アルフォンスに断罪された公爵令嬢エルゼ。 だが彼女は泣き崩れるどころか、事務的に一枚の書類を取り出した。 「承知いたしました。では、我が家が立て替えた10年分の王家運営費――金貨1億5800万枚の精算をお願いします」 宝石代、夜会費、そして城の維持費。 すべてを公爵家の「融資」で賄っていた王家に、返済能力などあるはずもない。 「支払えない? では担保として、王都の魔力供給と水道、食料搬入路の使用を差し止めます。あ、殿下が今履いている靴も我が家の備品ですので、今すぐ脱いでくださいね?」 暗闇に沈む王城で、靴下姿で這いつくばる元婚約者。 下着同然の姿で震える「自称・聖女」。 「ゴミの分別は、淑女の嗜みですわ」 沈みゆく泥舟(王国)を捨て、彼女を「財務卿」として熱望する隣国の帝国へと向かう、爽快な論理的ざまぁ短編!

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

処理中です...