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「…疲れた」
王子妃教育の五日目の授業を終えると、パトリシアは資料を広げた机に突っ伏した。
「あら、この程度で疲れたなんて、パトリシア様は軟弱ね」
パトリシアの向かい側の机で資料をトントンと整えながらエリザベスが言う。
「地理、苦手なんです」
「あらあ。王子の妃が地理が苦手じゃ外交の役には立たないわ。パトリシア様は第三王子の妃で良かったわね。アラン殿下は薬学研究所にお勤めになるんだから外交しなくて済むわ」
「そうですね…」
本当、私、趣味は刺繍で地理は苦手なんて、王子の妃に向いてないわ。私が第二王子の婚約者じゃなくて良かった。アレン殿下の足手纏いになる処だったもの。
パトリシアはそう心の中で呟く。
胸が痛い。…けど無視よ無視。そんなものは。
「この後、アレン殿下とお茶なの。パトリシア様は?」
エリザベスは資料を纏めて立ち上がる。
「私もアラン殿下と…」
パトリシアがエリザベスを見ると、エリザベスはニコリと笑う。
「今日も別々かしら?」
勝ち誇った?ちょっと違うか。得意気な笑顔って言うのかしら。
「そうだと思います」
パトリシアも笑顔を返す。
王子妃教育の授業終わりには王子とのお茶がセッティングされている。春まではいつもアレン、アラン、エリザベス、パトリシアの四人でのお茶会だったが、最近は婚約者同士それぞれ別々のお茶会ばかりだ。
きっと、私はアレン殿下に避けられてる。
私の告白を聞いて、これ以上近くに居てはいけないと思われたのね。私がこれ以上勘違いしないように。
エリザベスが先に部屋を出て行き、パトリシアも部屋を出ると、庭の隅にあるアランの薬草畑へと歩く。
あ、居た。
「アラン」
しゃがみ込んで薬草をスケッチしているアランに声を掛けると、アランは振り返ってパトリシアを見上げた。
「あ、パティ。もう授業終わる時間だった?」
「うん。アランの事だからここで時間を忘れてるんだろうと思って来てみたの」
「当たり」
笑顔のアラン。
何度見てもアレン殿下と瓜二つだわ。
アランは立ち上がって、パトリシアと並んで二人分のお茶が準備されている東屋へと移動する。
「最近は、エリザベス様たちと一緒のお茶会じゃないのね」
「ああ…アレンが別々の方が良いだろうって。いつも俺が待たせてエリザベス嬢の機嫌が悪くなるからかな」
やっぱりアレン殿下が別々にって希望されてるのね。
-----
「それで?レスター、ロードとヤッたのか?」
「フレデリック、到着した途端にそれか?直接的表現過ぎないか?」
「レスター王太子殿下、ロード・フェアリ伯爵令息と肉体的接触を企かられたのですか?」
「そう言うのを慇懃無礼と言うんだ」
ソファで足を組み苦笑いするレスター。向かい側にはフレデリックが座っている。
「ハッキリ言わないと言う事は、まだなんだな?」
「…鋭いね。フレデリックは」
「は?本当にまだなのか?え?何故?」
心底不思議そうな表情でフレデリックが聞くと、レスターは眉を顰めた。
「そんなに意外そうな顔をされるとは、心外だな」
「いやあ、だってレスター『経験できる事は何でも経験したい』と常々言ってるからさ」
「そうなんだが…フレデリックはアレンから『婚約者を攻略された悪役令嬢がどうするか』つまり、ジュリアナ嬢が万一ロードと…と、なった時に、フレデリックがどうやってロードとジュリアナ嬢を引き離そうとするのか、聞いたか?」
「ジュリはそんな事にはならん」
夏季休暇に入ってから、連絡しても会ってくれないが。
そう思いながらも、言い切るフレデリック。
「ゲームの話だ。例え話の様なものだろ?」
「まあ…え?じゃあレスターは聞いたのか?レスターが攻略された時、ミッチェル嬢が何をするのか」
レスターは眉を顰めたまま頷く。
「聞いた。が、口にはしたくない」
「…そんなに、その…アレなのか?」
「ああ。かなりアレだ。ミッチェルがそんな事をするとは思えんが…まあ、要するに、俺は自分が考えていたより、ミッチェルを大事に思っていたと言う事だ」
「上手く纏めたつもりかも知れんが、お前単にロードとの間の危うい雰囲気楽しんでるだけだろ?」
「わかるか?」
「レスターはそういう奴だ」
トントンとノックの音がして、レスターの侍従に続いてロードが応接室に入って来た。
「はじめまして。フレデリック・デンゼル殿。ロード・フェアリと申します」
「ああ。はじめまして。パット…パトリシアと同じクラスなんだってね。それにジュリアナとも仲良くしてくれているそうで」
ニッコリと笑顔を見せるフレデリック。
牽制されてるなあ。パトリシアちゃんのお兄さんだからあんまり仲悪くなりたくはないんだけど、俺の目標はコンプリートだから仕方ないんだよね。
「…疲れた」
王子妃教育の五日目の授業を終えると、パトリシアは資料を広げた机に突っ伏した。
「あら、この程度で疲れたなんて、パトリシア様は軟弱ね」
パトリシアの向かい側の机で資料をトントンと整えながらエリザベスが言う。
「地理、苦手なんです」
「あらあ。王子の妃が地理が苦手じゃ外交の役には立たないわ。パトリシア様は第三王子の妃で良かったわね。アラン殿下は薬学研究所にお勤めになるんだから外交しなくて済むわ」
「そうですね…」
本当、私、趣味は刺繍で地理は苦手なんて、王子の妃に向いてないわ。私が第二王子の婚約者じゃなくて良かった。アレン殿下の足手纏いになる処だったもの。
パトリシアはそう心の中で呟く。
胸が痛い。…けど無視よ無視。そんなものは。
「この後、アレン殿下とお茶なの。パトリシア様は?」
エリザベスは資料を纏めて立ち上がる。
「私もアラン殿下と…」
パトリシアがエリザベスを見ると、エリザベスはニコリと笑う。
「今日も別々かしら?」
勝ち誇った?ちょっと違うか。得意気な笑顔って言うのかしら。
「そうだと思います」
パトリシアも笑顔を返す。
王子妃教育の授業終わりには王子とのお茶がセッティングされている。春まではいつもアレン、アラン、エリザベス、パトリシアの四人でのお茶会だったが、最近は婚約者同士それぞれ別々のお茶会ばかりだ。
きっと、私はアレン殿下に避けられてる。
私の告白を聞いて、これ以上近くに居てはいけないと思われたのね。私がこれ以上勘違いしないように。
エリザベスが先に部屋を出て行き、パトリシアも部屋を出ると、庭の隅にあるアランの薬草畑へと歩く。
あ、居た。
「アラン」
しゃがみ込んで薬草をスケッチしているアランに声を掛けると、アランは振り返ってパトリシアを見上げた。
「あ、パティ。もう授業終わる時間だった?」
「うん。アランの事だからここで時間を忘れてるんだろうと思って来てみたの」
「当たり」
笑顔のアラン。
何度見てもアレン殿下と瓜二つだわ。
アランは立ち上がって、パトリシアと並んで二人分のお茶が準備されている東屋へと移動する。
「最近は、エリザベス様たちと一緒のお茶会じゃないのね」
「ああ…アレンが別々の方が良いだろうって。いつも俺が待たせてエリザベス嬢の機嫌が悪くなるからかな」
やっぱりアレン殿下が別々にって希望されてるのね。
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「それで?レスター、ロードとヤッたのか?」
「フレデリック、到着した途端にそれか?直接的表現過ぎないか?」
「レスター王太子殿下、ロード・フェアリ伯爵令息と肉体的接触を企かられたのですか?」
「そう言うのを慇懃無礼と言うんだ」
ソファで足を組み苦笑いするレスター。向かい側にはフレデリックが座っている。
「ハッキリ言わないと言う事は、まだなんだな?」
「…鋭いね。フレデリックは」
「は?本当にまだなのか?え?何故?」
心底不思議そうな表情でフレデリックが聞くと、レスターは眉を顰めた。
「そんなに意外そうな顔をされるとは、心外だな」
「いやあ、だってレスター『経験できる事は何でも経験したい』と常々言ってるからさ」
「そうなんだが…フレデリックはアレンから『婚約者を攻略された悪役令嬢がどうするか』つまり、ジュリアナ嬢が万一ロードと…と、なった時に、フレデリックがどうやってロードとジュリアナ嬢を引き離そうとするのか、聞いたか?」
「ジュリはそんな事にはならん」
夏季休暇に入ってから、連絡しても会ってくれないが。
そう思いながらも、言い切るフレデリック。
「ゲームの話だ。例え話の様なものだろ?」
「まあ…え?じゃあレスターは聞いたのか?レスターが攻略された時、ミッチェル嬢が何をするのか」
レスターは眉を顰めたまま頷く。
「聞いた。が、口にはしたくない」
「…そんなに、その…アレなのか?」
「ああ。かなりアレだ。ミッチェルがそんな事をするとは思えんが…まあ、要するに、俺は自分が考えていたより、ミッチェルを大事に思っていたと言う事だ」
「上手く纏めたつもりかも知れんが、お前単にロードとの間の危うい雰囲気楽しんでるだけだろ?」
「わかるか?」
「レスターはそういう奴だ」
トントンとノックの音がして、レスターの侍従に続いてロードが応接室に入って来た。
「はじめまして。フレデリック・デンゼル殿。ロード・フェアリと申します」
「ああ。はじめまして。パット…パトリシアと同じクラスなんだってね。それにジュリアナとも仲良くしてくれているそうで」
ニッコリと笑顔を見せるフレデリック。
牽制されてるなあ。パトリシアちゃんのお兄さんだからあんまり仲悪くなりたくはないんだけど、俺の目標はコンプリートだから仕方ないんだよね。
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